──

宇宙も逆戻りするんですか？

高水

時間は前にしか進まないと思われているけど、
宇宙が何度も繰り返されていて、
その痕跡や記憶がないだけだとすると、
逆向きに戻っていく世界が、
いまの宇宙の前にあってもおかしくない。

──

ちょ、ちょっとまってください！

高水

はい。

──

宇宙は繰り返しているんですか？

高水

そう考えるのが自然です。

サイクリック宇宙論という分野があって、
いまの宇宙は計算上、
50回目という説もあります。

──

もう、よくわかりません（笑）。

高水

うーん、どこから説明しましょうか。
まず、いま宇宙が膨張しているとします。

──

膨張、はい。

高水

そうすると宇宙の形は、
いまのところ３タイプしかありません。
平坦か、開いてるか、閉じてるか。
計算的にはこの３タイプになる。

──

３つのうち、どれかだと。

▲スライドを見ながら話を聞いています。

高水

宇宙のある時点から、
２本の光線を平行に発射したとします。
もし現在の宇宙が「平坦」なら、
発射した光はずっと並行に進みます。

──

はい。

高水

しかし、宇宙が「開いている」場合、
平行に出した２本の光は、
徐々に距離が開いていくんです。
さらに「閉じている」場合、
光は背中のほうから戻ってくる。

かなりざっくりした説明ですが、
こんな感じで調べると、
いまの宇宙の形がわかります。

──

なるほど。
そうやって調べた結果は‥‥。

高水

いまは「平坦」の可能性が高いですが、
まだハッキリと決まったわけではありません。

──

わかっていないんですね。

高水

ただ、もし「閉じた宇宙」だった場合、
この宇宙は途中から小さくなるんです。

──

小さくなる？

高水

あるところをピークに、
宇宙が膨張から収縮に転じる。
つまり、これまでの宇宙の歴史が
すべて逆転する可能性があります。
グラフでいう山のてっぺんから。

──

カーブの頂点をピークに、
宇宙が「逆転」する？

高水

もし宇宙が閉じていたら、
ある程度まで行ったあたりから
収縮に転じるはずです。

──

「収縮」がはじまると、
宇宙はどうなっちゃうんですか。

高水

そこから時間が逆に流れます。
人類も退化する歴史に切り替わる。
この取材の流れも
「ありがとうございました」ではじまり、
「きょうはよろしくお願いします」で終わる。

──

コントじゃないんですから（笑）。

高水

いやいや、ほんとですよ。
どんどん歴史が戻って、
人類はどんどん退化しながら
アフリカに戻っていき‥‥。
この宇宙がもし閉じていたら、
そういう可能性がなくはない。

──

それは、確率的にはどのくらい‥‥。

高水

10％くらいはある。

──

けっこう高い！

高水

うん。

──

想像したら、
めちゃくちゃ怖いですね。
ある時点から宇宙が逆戻りって‥‥。

高水

怖がる必要はないです。
その前にみんな死んでますから。

──

仮に宇宙が閉じていた場合、
収縮までの残り時間というのは‥‥。

高水

いまが138億年くらいだから、
ざっくりピークを300億年とすると、
あと160億年先くらい？

──

160億年後に宇宙が逆転！

高水

ま、逆転というとらえ方じゃないけどね。
新しい宇宙がそこからスタート。

──

宇宙がふりだしになる、みたいな？

高水

そんな感じかな。
次の宇宙の人たちにとっては、
そこがビッグバンになる。

──

おぉ‥‥。

高水

もしすべてが逆戻りになっても、
そこにいる人たちは逆とは思わない。
その宇宙の住人からしたら
それがふつうになります。

──

ちょっとクラクラしてきました（笑）。

高水

ま、宇宙は繰り返してるわけですよ。

──

でもその発想でいくと、
いまの宇宙の前にも、
別の宇宙があったってことですよね？

高水

だからあるんですよ、前が。

──

前がある！

高水

宇宙のビッグバンの前というのは、
すでに研究されています。

──

その宇宙は時間が反対なんですか？

高水

そういう「収縮宇宙」説もあります。
そこは観測で白黒つけられていないけど、
鍵になるのは「重力波」ですね。

──

重力波？