日々のできごとを記してみたり、
これからのことに思いをめぐらせてみたり。
手帳をひらくだけで、
じぶんとじっくり向き合う時間がうまれます。
そこに、おいしいお菓子と心地いい空間があれば、
さらに「いうことなし」だと思いませんか?
気まぐれに更新する「東京甘味手帳」は、
手帳タイムを過ごすのにぴったりな
東京のおいしいもの&お店案内です。
写真:川原崎 宣喜
- 誕生日でも、記念日でもない。
すごくいいことがあったわけでもないし、
気持ちの浮き沈みも、これといってない。 - きょうはわたしの「なんでもない日」だ。
- このまま、なんでもない一日が終われば、
手帳のきょうのページも、まっしろのままだ。
手帳がまっしろになるということは、
わたしの脳にも、記憶は残らない。
きょうは、もう思い出さない一日に
なるのかもしれない。 - それもぜんぜんわるくない。でも。
- なんでもない日を
ほんのちょこっとだけ
なんでもなくすることを、
やってみようか、と思い立った。
- いっそ、なんでもない日を、
お祝いしてみようかしら。 - お祝いといえば‥‥
- お祝いといえば‥‥やっぱり。
- ショートケーキ。
これしかないでしょう。
- このお店には、
2種類のショートケーキがある。
生クリームといちごのおいしさを
堪能できる「ブラン」と、
ほんのりリキュールが加わった、
大人の味の「ルージュ」。 - 迷いに迷って、
きょうは「ルージュ」に決めた。 - あ、窓際の席があいてる。
- そわそわしながら、
手帳を広げて、
ケーキが運ばれてくるのを待つ。
- なんてしあわせな時間だろう。
- そして、きた。
もっとしあわせな瞬間が。
- ショートケーキのいちごは、
ショートケーキにおいての
重要なクライマックスなのだと思う。
だからいつもは、「最初にいちごを食べない派」。 - でも、このケーキには
いちごが3つものってる。
クライマックスが3度もくるなんて。
- ひとくち目から、
ひとつまるごと、いっちゃおう。
- クリーム、スポンジ、いちごが奏でる
最高のハーモニー。
すっきりとしたダージリンティーが
それをさらに引き立てる。
- この時間が終わってしまうのが、
もったいないな。
- きょうはわたしの、なんでもない日。
だけどこの手帳には、
おいしかったショートケーキの記憶が
ずっとずっと、残るんだ。
なんてすばらしい、なんでもない日。
- なんでもない日、おめでとう。
FRENCH POUND HOUSE
(フレンチ パウンド ハウス)
1986年、パティシエの江口潤一郎さんが
豊島区・巣鴨に開店した洋菓子店。
本格的なフランス菓子店としてオープンしたため、
当初、メニューの中に
ショートケーキはなかったそうです。
けれども、店の近所に幼稚園があり、
お子さんのいる地元のお客さまも多く、
「ショートケーキを作ってほしい」という
声がかかることもしばしば。
そんなお客さまたちからのリクエストに応えて
特注というかたちで
お子さま用ショートケーキを作ってみたところ、
その味がみるみる評判に。
めでたく、通常のメニューの中に
仲間入りを果たしました。
オープンから35年近く経つ今も、
近所の人たちに愛されるだけでなく、
遠方からたくさんの人が訪れる
人気の洋菓子店であり続けています。
それは、あるお客さまが口にした
「日本一のショートケーキ」というワードが
インターネットで広まったことだけでなく、
そのウワサをうらぎらないおいしさや、
生菓子、焼き菓子、アイスクリームといった
ここでしか食べられない洋菓子の数々、
そして素敵な店内で時間を過ごせるうれしさが、
さらにファンを増やしているからなのでしょう。
◎苺のショートケーキ・ルージュ 650円
とちおとめなど、時期のいちごを
ふんだんに使ったショートケーキ。
いちごの果汁を加えたメレンゲを
生クリームと合わせているため、
ほんのわずかに、
クリームがピンクに色づいています。
また香りづけとして、いちごのお酒と
さくらんぼの蒸留酒で作ったシロップを
スポンジ生地にしみこませています。
◎ダージリン 550円
オーナーの江口さんが厳選した
甘くフルーティーな香りのダージリンティー。
ほかにも、洋菓子に合うおすすめの
紅茶やハーブティーなどがそろっていて、
「フレンチ・パウンド・ハウス」の
パッケージに入ったオリジナルの紅茶も
お土産に買って帰れます。
「ショートケーキのいちごを迷わず最初に食べる人」に、ずっと憧れがあったんです。今回初めてやってみて、ちょっと豪快で新鮮な気持ちになりました。
(次回の更新を、どうぞおたのしみに!)
2020-04-18-SAT