日々のできごとを記してみたり、
これからのことに思いをめぐらせてみたり。
手帳をひらくだけで、
じぶんとじっくり向き合う時間がうまれます。
そこに、おいしいお菓子と心地いい空間があれば、
さらに「いうことなし」だと思いませんか?
気まぐれに更新する「東京甘味手帳」は、
手帳タイムを過ごすのにぴったりな
東京のおいしいもの&お店案内です。

写真:川原崎 宣喜

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page_07 50年変わらないプリン

 
プリンが食べたい。
いちどそう思ってしまったら、
その気持ちは
ほかのなにかでは埋められない。

 
そういうときは自分の気持ちに素直に従う。
このお店に行けば、
望んでいたプリンが食べられる。

 
ガラスの扉越しに見えるのは
この喫茶店のマスター。
50年変わらず、こうしてここで
コーヒーをたてて、
プリンをつくっているんだって。

 
お店に来るたび見惚れる、
手書きのメニュー表。
いつ見てもクスリとしてしまう、
「寝ないでください」「たばこは3本まで」の張り紙。
ミルクセーキやレモンスカッシュに惹かれながら、
やっぱり頼むのは、コーヒージャンボプリンセット。

 
「流れるような手つき」とは
このことをいうんだろう。
ガラスのデザート皿に
クリーム色のプリンをのせて、
透き通るカラメルをかけて、
できあがり。

 
マスターがプリンの型を見せてくれた。
右側がふつうの、左側がこのお店の型。
ジャンボプリン、ほんとうにジャンボだ。

 
プリンをすぐ食べたい気持ちと
あまりにもかわいいから
描いておきたい気持ちとがせめぎあって、
手帳を開いて、さっと描いて。

 
スプーンを入れるときのこの感触!
マスターが言う。
「白米って飽きないだろう。
素朴な味は飽きないんだよ」
だからこのお店のプリンも飽きないんだ。

 
「年に1回来てくれる人だって
だいじな常連さん。
だから店を休まないようにしてるんだ」
マスターに会いに来る人も多いっていうの、
わかる気がするな。

 
ずっと変わらないお店でも
変わっていることはあって、
それが今年はじめて出して
すぐに完売したという「お中元」。
手書きのカードを事前に買って、
好きなタイミングで
書いてあるメニューにひきかえられる。
とっておきたくなるようなカード!

 
プリンを食べ終えてからも、
このお店の居心地のよさに
ついゆっくりしてしまった。

 
そろそろ出ようかな、と思ったけど‥‥、
わ、タマゴサンド!

 
タマゴサンドがあまりにおいしそうで、
わたしも追加で注文してしまった。
今日はとくべつ、
もう少しだけこのお店で過ごそう。
変化がたくさんある今だから、
このお店に来たかったのかもしれないな。

ヘッケルン

半世紀前から、
この場所で営業を続けている喫茶店。
虎ノ門という土地柄、
サラリーマンの人たちも多く訪れますが、
このお店の雰囲気がそうさせるのか、
つねにゆったりとした空気が流れています。

名物は50年変わらないジャンボプリン。
この味を求めて、北海道から沖縄まで
遠くから来る人も多いのだとか。
3代常連はあたりまえ。
最近はおばあちゃんからひ孫まで、
4代つれだって来るお客さんもいるそうです。

ジャンボプリンと同じくらい
お客さんを楽しませているのは、
マスターのてきぱきとした手さばきと、
ときどき聞けるたのしいおしゃべりです。

◎ジャンボプリン  400円

「牛乳と卵の味がしなかったらプリンじゃない」
とマスターがいうとおり、
素材の味わいが楽しめる、シンプルなプリン。
おおきさはふつうのプリンの2.5倍!
過度なつくりおきはせず、
すこしずつ作っては出す、というスタイルも
おいしさを保つ秘訣。
カラメルは1時間ゆっくり煮詰めたのち、
20秒で色をつけ、
さいごの3秒で焦げを入れるのだそう。

◎タマゴサンド  430円

注文を受けてから切るパン。
常温のままの、新鮮な卵。
「とくべつなことは何もしていない」といいながら
一つひとつの工程を、手を抜かず丁寧に行うことで
まろやかな卵のうまみ、
パンのやわらかな口あたりが
他にはないおいしさを生み出すサンドウイッチです。

ヘッケルン
東京都港区西新橋1丁目20-11 安藤ビル1F
営業:平日8:00~19:00/土曜8:00〜17:00
電話:03-3580-5661
休み:日曜・祝日・第二土曜日

 

 

たまごの味がしっかりする、ちょっとかためのプリン。
「こんなにシンプルな材料で、どうしてこんなに美味しいの?」と、
びっくりしていたら食べ終わってしまったたまごサンド

なんどもなんども食べたい味でした。

(さて、次回のスイーツは‥‥? どうぞおたのしみに。)

2020-07-30-THU

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