日比谷の映画館。
「ゴジラ-1.0」を見て大感動して
涙をぬぐっていたら
エンドロールに知っている名前が。
数年前に話をしたことがある
VFX少年・三宅智之くんでした。
中学3年のときにつくった
ショートムービー「2045」の作者として
制作秘話を聞いたことがあったのです。
大学4年生になった三宅くんにメール送ると
ウルトラマンや仮面ライダーなどの
映像作品に関わっていることがわかり‥‥。
そこで、大学卒業間際の三宅くんに
会いに行ってみました。
担当はほぼ日のかごしまです。
(取材は2024年2月に行いました)

>三宅智之さんプロフィール

三宅智之(みやけ・ともゆき)

2000年東京都出身。
早稲田大学教育学部複合文化学科4年生。
小学校のときから独学で映像製作を始める。
「38912 DIGITAL」という屋号で
XやYouTubeで映像を公開している。
2024年春から
映像制作プロダクション「白組」で働く予定。
X
YouTube

前へ目次ページへ次へ

第3回 映画は劇場で3回は見る

6099

──
これって何の手帳なんですか。
三宅
これ、野帳(測量士のためのミニノート)なんですけど、
自分はいつもこれを使っています。
外で使いたいので、表紙が硬いものがよくて。
思いついたことはなんでも書いています。
これは映画館でも使いやすいんですよ。
暗闇でシャーペンを持って、
映画を見ながら気になったことをメモしています。
──
えっ、映画館でも書いているんだ。
三宅
そうですね。映画を見ながら、
絵としていいシーンがあったら、
暗闇のなか手元を見ずに真似て描いたり、
レイアウトだけ描いたりして、
勉強をしています。
──
映画を分析的に見ていますね。
三宅
そうですね、
映画は大好きなので、1作品につき3回は行きます。
1回目は何も持たずに見て、2回目でメモしながら見て、
3回目以降は友だちと見るということが多いですね。
好きな映画は7回とか10回とか行ったりするんで。
──
多いですね! それは映画館で?
三宅
映画館ですね。
インターネットでの配信は充実していますし、
すごく便利だと思うんですけど、
作品を見る環境としては不足していると思っています。
スマホの機種によって色が違ったりするので。
製作している人たちがくみ取ってほしいものを
もっともくみ取れるのが映画館だと思うんですね。
音も映像も段違いでいい。
映画は映画館で見るのが最適なんです。

──
さきほど「特撮を好きな人は、
僕たちの世代では少ない」って言っていましたね。
三宅くんは珍しい存在なんですね。
三宅
自分たちの世代では
「特撮? CGのほうがきれいじゃん」
みたいな人が多いですね。
でも自分としては特撮も好きなんですよ。
──
ちなみに特撮とCG、VFXのちがいってなんですか?
三宅
特撮は「特殊撮影」の略です。
ミニチュアや着ぐるみを
ハイスピードカメラなどを使って
撮影する方法です。
人形にモーターを入れて、
動かして撮影するというのも特撮ですし、
特殊な撮影をするっていうのが特撮なんです。
──
そうなんですね。
三宅
CGは「コンピュータグラフィックス」の略で、
コンピュータでつくった映像や画像のことです。
フルCGとVFXの違うところは、
フルCGの特徴は
あくまでCGとしての表現を目指していることだと思います。
代表的なのはピクサー作品。
モノがデフォルメされていますよね。
建物にしてもカメラで撮ったような感じじゃなくて、
デフォルメされていて
「現実以上の現実」を探っています。
VFXは「ビジュアルエフェクト」の略なので、
CGや実写、たまにミニチュアの特撮などを組み合わせて、
現実では撮影が難しい映像をつくるものです。
実際に存在するように映像をつくっていきます。
代表的なのはハリーポッターやアベンジャーズ。
ゴジラもそうです。
あくまで実写という「正解」があり、
そのうえでCGなどを使ってつくるというものです。
──
三宅くんはリアルを追求するVFXが好きなんですね。
三宅
そうです。VFXがやりたいです。
VFXにとってはCGや特撮は手段なんです。
だからCGや特撮もうまく使いたいですね。
たとえばワイヤーがちぎれるシーンをつくりたいとします。
CGでつくるとしたら、
ワイヤーの動きを物理シミュレーションする必要が
あるなど、試行錯誤が必要なんです。
特撮ならグリーンバックを背景にして
ワイヤーがちぎれる撮影をする方法があります。
CGより特撮のほうが簡単にできる場合もあるわけです。
──
表現したいことがあって、どの技術を使うか、
最適な方法を選ぶことが大事ですよね。
三宅
そうですね。CGだけをやっていると、
特撮を使う発想を忘れがちなので、
自分はどちらもできるといいなと思っています。
──
いまも特撮をすることはあるんですか?
三宅
うーん。あんまりないですね。
ただミニチュアは好きなので、
ガチャガチャで建物や人工物のミニチュアを手に入れて、
そのミニチュアに色を塗り足して、
リアリティを出して遊んでいます。
電柱、室外機、火災報知器とか。
手で触れるものが好きなのかもしれません。

写真 6175

(つづきます)

2024-04-12-FRI

前へ目次ページへ次へ