日比谷の映画館。
「ゴジラ-1.0」を見て大感動して
涙をぬぐっていたら
エンドロールに知っている名前が。
数年前に話をしたことがある
VFX少年・三宅智之くんでした。
中学3年のときにつくった
ショートムービー「2045」の作者として
制作秘話を聞いたことがあったのです。
大学4年生になった三宅くんにメール送ると
ウルトラマンや仮面ライダーなどの
映像作品に関わっていることがわかり‥‥。
そこで、大学卒業間際の三宅くんに
会いに行ってみました。
担当はほぼ日のかごしまです。
(取材は2024年2月に行いました)
- ──
- 小さい頃から何かをつくったりするのは好きでしたか?
- 三宅
- はい。工作はよくしていました。
工作でつくったものと人形をあわせて
カメラで撮影して特撮っぽいことをしたり。 - パソコンを使い始めたのは、小3の頃。
家族で使っていたMacBookにPhotoshop Elements
というPhotoshopの簡易版が入っていたのと、
iMovieっていうMacに最初から入っている
編集ソフトがあって、
簡単な合成ができたんですよ。 - 友だちが家に来たら、
写真を撮って合成写真をつくったりして。 - だから道具は変わっているんですけど、
やりたいことはあまり変わっていないかもしれません。
自分が見たい映像をつくりたいということ。 - 映像をつくることが楽しいので、
自分が楽しめる映像をつくるべく
いろんな表現方法で試しています。
- ──
- 建物が壊れるところが好きなんですよね。
- 三宅
- そうですね。
見慣れたものが崩れていくところの魅力は
すごく感じます。
- ──
- 見慣れた風景が変わるのは怖くありませんでしたか?
- 三宅
- あくまでフィクションの中の話ですが、
怖い感覚はなかったですね。
むしろテンションが上がっちゃう感じです。 - 戦争や災害が絶えないなか、破壊が好きなんて
不謹慎なんじゃないかと思われるかもしれません。 - でも私は現実で起こっている破壊ではなく、
あくまで非日常としての破壊そのものが
好きなんだと思います。
現実はむしろ、
平和であってほしいと願っています。 - 普段生活していて見えなくなっている日常が、
破壊によって変化して、非日常として見えてくる。
非日常を通して、いま暮らしている日常が見えてくる。
そういう意味で日常とつながっている
"非日常"が好きです。 - 『ALWAYS三丁目の夕日』の昭和が好きだったのも、
自分にとっては過ごしたことがない時代だし、
いまの時代とつながっている感じがするのが
好きだったんだなと思いますね。
- ──
- 古いものが好きなのかな?
- 三宅
- そうですね。汚れもすごく好きですね。
汚れや経年劣化に人の営みを感じます。
昔から錆びたものも好きです。 - そして、繰り返しになりますが、
日常とつながっている"非日常"が好きで、
現在の延長線上にあるものとして描いた未来の姿も好きです。
「簡単に宇宙に行けるようになっているけど、
民間の宇宙船はスポンサーありきで成り立っている」
とか。
これは磯光雄監督のアニメ作品「地球外少年少女」
の設定なのですが。
- ──
- 子どものときに好きなものがあっても、
年齢を重ねるうちに興味がほかのものに移っちゃうことが
ほとんどだと思うんです。
三宅くんの場合、
ずっと好きでいられるのはなぜですかね?
- 三宅
- 映画という世界が広すぎるからだと思います。
自分のことは飽きっぽいタイプだと思っていて、
これまでもいろいろと興味は移っているんですよ。 - だけど、映像の世界があまりにも広くて深すぎて、
興味が移っても移っても
ずっと映画の中にいるみたいな感覚なんです。
いまでも好きなものはどんどん変わっています。
- ──
- そうなんだ。
同じことをずっとやり続けている感覚はない?
- 三宅
- ないですね。
VFXをやっているのも、
CGや実写などを含んでいるからです。 - だからCGでビルのモデルをつくったり、照明を考えたり、
キャラクターのアニメーションをつくったり‥‥。
いろいろな技術があるので、
興味が移り続けても、ずっとVFXの中に
収まりつづけている感じですね。 - VFXをもう十何年やっていますけど、
わからないことだらけです。
技術の幅が広すぎるので、永遠に学んでいけるんです。
- ──
- VFXの技術でいうと
何%ぐらいまでわかっていると思いますか?
- 三宅
- 1%も行ってないですね。
学びきれることはできないと思っているんですけど、
ただ、学びきれないからこそ知りたいんです。
(つづきます)
2024-04-13-SAT