おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
燃え殻(もえがら)
小説家・エッセイスト。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で鮮烈デビュー。最新のエッセイ集『明けないで夜』(マガジンハウス)も最高です。
- 燃え殻
- このたびは、3代目のVOW総本部長就任、
おめでとうございます。 - で、どういうことなんですか、ようするに。
- ──
- はい、長らくVOWを世に問い続けてきた
2代目総本部長・古矢徹さんが、
先日、残念ながら亡くなってしまったんです。
- 燃え殻
- えっ!? そうだったんですか。
- ──
- はい。ぼくは2代目総本部長のファンで、
勝手にリスペクトしてたんです。 - なので、自分の本を出したら献本したり、
なにかの折に
なんてことのないメールをやりとりする、
そういう間柄だったんです。
実際は2回しか会ったことないんですが。
- 燃え殻
- それで、3代目やってくれ‥‥って?
- ──
- 総本部長と最後のお別れをした帰り道、
宝島社VOW担当の藪下秀樹さんに
いきなりステーキ行かないって誘われて。 - そこで‥‥。
- 燃え殻
- 3代目やってくれって? 重くないですか。
いきなりステーキで総本部長就任依頼って。
- ──
- 重かったです。目の前のステーキ以上にね。
何せ40年も続いてきた
「読者投稿コンテンツの元祖」の
製作総指揮をやってくれという依頼なので。
- 燃え殻
- いや、そうでしょう。
ぼくだって何冊か持ってましたもん。 - VOW。
- ──
- 本当ですか。うれしいです‥‥っていうか、
ぼくもただのファンだったんですけど。 - つい最近まで。
- 燃え殻
- ですよね(笑)。
- ──
- ただぼく、VOW総本部に入りたくて、
宝島社に一回入社したことがあるんですよ。
- 燃え殻
- え?(笑) じゃあ夢が叶ってるじゃない。
- ──
- 当時は‥‥っていうかいまでもですが、
VOW総本部って
宝島社の社内には存在しないんですよ。
古矢さんがやっていた編プロの会社に
制作をお願いしていたんです。 - だから、叶いようもなくて、夢。
- 燃え殻
- VOW総本部って「外注」だったんだ(笑)。
秘密結社みたいな仰々しさなのに。
VOWらしい。
じゃあ、もともとVOW好きだったんですね。
- ──
- VOW総本部に入りたいと思ってました。
小学生とか中学生くらいのころには。
- 燃え殻
- そんな小中学生いる?
アウトサイダーすぎませんか、さすがに。
- ──
- 2代目総本部長にも、同じようなことを
言われた記憶があります。
- 燃え殻
- でも、いまは、SNS上に
VOWみたいなネタのアカウントって
無数にあるけど、
あのころは、
世の中にそんなものなかったじゃない。
- ──
- インターネット自体ありませんでした。
- 燃え殻
- つまり、この世にネットが敷かれる前から
すでにVOWはあったわけですよね。
- ──
- そうですね。ネットよりも早いんですよ。
人類の発明としては。
- 燃え殻
- 紙でネットみたいなことをやってた、と。
それも「40年」も前から。 - なくならなかったことがすごいですよね。
まずは単純に。
いろんなものが
うまれたらすぐに消えてくこの世の中で。
でも、どうして『sweet』なんですか。
そこですよ。
俺をはじめ、みんなが知りたいのは。
- ──
- 不思議ですよね。もう9年になるんです。
『sweet』に移籍してから。
もともとは
雑誌の『宝島』で連載してたんですけど。
- 燃え殻
- 知ってますよ。
- ──
- 知ってますよね。燃え殻さんなら。
で、その『宝島』は9年前に休刊していて。
- 燃え殻
- それも知ってます。最後のほうは
エッチな雑誌になってましたよね。 - 断末魔で。
- ──
- 断末魔って。
最後の最後は硬派なビジネス誌でした。
- 燃え殻
- 株の情報とかね。
- 俺たちさえ切るのかと思いましたもん。
いち愛読者として。
- ──
- 掲載誌を失い、露頭に迷いかけたVOWに、
当時の『sweet』編集長が
救いの手をさしのべてくださったんです。
宝島のお家芸、
伝統のおまぬけ企画をなくしてしまうのは、
ニッポンの恥であると‥‥。
- 燃え殻
- かっこいいなあ。
- でも、『sweet』の読者って
ファッションとか美容とかに興味のある
若い女性でしょ?
VOWファンと被ってないんじゃないの。
- ──
- はい、ふつうに考えたらそうなんですよ。
だから『sweet』読者のみなさんが
どう思ってるのか聞いてみたいんです。 - キラキラしたメイクの特集を読んだ
同じその眼(まなこ)で、
VOWを読んで爆笑しているのか‥‥。
- 燃え殻
- 9年間、打ち切りになってないんだから、
受け入れられてるってことなんですかね。 - 誌面的にはかなり違和感ありそうだけど。
- ──
- 漫画の『キン肉マン』の超人オリンピックで、
ウォーズマンなどの
有力選手が名を連ねたAブロックの会場は
超満員の後楽園球場だったけど、
キン肉マンが出場したBブロックの会場は、
阪神巨人戦をやってる最中の甲子園球場の
ラッキーゾーンだったじゃないですか。
- 燃え殻
- それもうぼくらしかわからないから!(笑)
- ──
- 試合中のリングに、
掛布のホームランボールが飛び込んできたりとか。 - まだ部外者だったころは、
あんな感じなのかなと想像してました。
つまり、
甲子園というすばらしい球場でやってるけど、
みんな阪神巨人戦を見に来てる。
同じように、『sweet』という
すてきな女性ファッション誌でやってるけど、
みんな洋服や美容の特集を見に来てる‥‥。
- 燃え殻
- そのついでに、VOWのページもチラッと見て
「何だろう、このページは」みたいな? - もしそうだったとしたら、
若い女性読者にももっと楽しんでほしいよね。
せっかく『sweet』に載ってるんだから。
カリスマ美容師に髪でも切られながら、
VOWで笑って
イヤなことを忘れたりしてほしいなあ。
(つづきます)
2025-01-10-FRI