おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
燃え殻(もえがら)
小説家・エッセイスト。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で鮮烈デビュー。最新のエッセイ集『明けないで夜』(マガジンハウス)も最高です。
- ──
- 燃え殻さんにとって、
VOWってどんな存在でしたか。
- 燃え殻
- 中学時代、
剣道部の薄暗い部室で読んでたんですよ。
だから知ってるのは初期ですね。
みんなで回し読みしてました。
「絶対に元が取れる本だな」と思ってた。
- ──
- わはは、素敵なキャッチコピーだなあ。
「絶対に元が取れる本」(笑)。
- 燃え殻
- この「たこぶえ」とか、よく覚えてます。
たぶん名作ですよね。VOW的にも。
- ──
- はい。殿堂入り級の名作です。
- 燃え殻
- これ‥‥俺、青春時代でしょ。
他にも覚えとかなきゃなんないこととか
たくさんあったはずなんです。
それなのにまったく人生の役に立たない
VOWネタを覚えてる。何でだろう。 - 悔しい。
- ──
- 覚えてること自体が悔しい(笑)。
- 燃え殻
- もっと甘酸っぱいできごととか
思い出したいですよ。 - まあでも、人生ってそんなもんなのかも。
あの部室にいたやつら全員、
俺の人生の役に立ってないもん(笑)。
- ──
- VOWも含めて。
- 燃え殻
- 含めて(笑)。
仕事を紹介してくれるわけでもないし。 - でも、役に立たないけどあってよかった。
あのときの人間関係も、VOWも。
青春のかなたへ消えていったはずなのに、
死んでなかったんですよ、まだ。
- ──
- 友だちってそういうものなのかもですね。
VOWは友だち。いいなあ。
- 燃え殻
- これとかだってハッキリ覚えてますもん。
「さつきみどり」。
- ──
- ‥‥という名の「きゅうりの種」ですね。
- 燃え殻
- 投稿人の
「えっちなきゅうりが生えてきそうです」
ってコメントも最高ですよね。
- ──
- 文学的な香りすらしますね。
「えっちなきゅうり」の部分に、
別の意味が込められていそうなほどです。
- 燃え殻
- そうそう。「さつきみどり」だから、ね。
往年のグラマラスと言えばの。 - これ、パッケージごと送ってきたんでしょ。
よく見つけるよなあ。
種売り場に「さつきみどり」ってあっても
見逃しますよ、ふつう。
- ──
- 本当に鋭いなあと思います。
VOW投稿人のみなさんの「嗅覚」たるや。
- 燃え殻
- でも、名作ってやっぱりあるんですね。
- ──
- そうですね、40年の歴史の中では。
- 先代が好きだった「まさる死ろす!!」とか、
「きけ、わだみつおの声」などは
いつまでも語り継いでいきたい名作です。
- 燃え殻
- わはは、「まさる死ろす!!」(笑)。
何かが先走っちゃってるね。
- ──
- どうして怒ってるのかはわからないけど、
まさるへの怒りが度を超しすぎて、
「殺」をすっ飛ばして
「死」って書いちゃったという名作です。
- 燃え殻
- この投稿人の「夜見たら怖かったです!」
というコメントもいいなあ。
- ──
- そうですね。
昼に見たら笑っちゃいそうだけど、
夜に見たらたしかに怖いかも。
- 燃え殻
- 対する総本部長のコメントの
「死ろさないで~」っていうのも好き。 - でもさ、俺たちが、こういうのを
剣道部の薄暗い部室で
ニヤニヤしながら回し読みしてたのって、
30年以上前なわけでしょ。
- ──
- そうですねえ。
- 燃え殻
- ずーっと好きで読み続けてきた人も
当然いると思うけど、
いったん離れちゃった人たちだって、
たくさんいると思うんです。 - 俺も含めて。
- ──
- 正直、ぼくも離れていた時期があります。
大学入試の直前とか、
仕事ができず、
鬼のように余裕のなかった20代とか。
- 燃え殻
- でしょ?
- むしろ離れなきゃいけないと思うんです。
1回くらい。
- ──
- 大人の階段を登るために。わかります。
- 燃え殻
- 思春期が終わっていちど離れたからこそ、
ちゃんとした距離感で
向き合えるようにもなると思うんです。 - 剣道部の薄暗い部室で読んでたころは、
本と目の距離2センチくらいだったけど。
- ──
- わはは、真剣に向き合いすぎ!(笑)
- 燃え殻
- そこまでまともに読んだらダメですよね。
- でも、いったんは離れて大人になって、
こうしてVOWに帰ってきたら、
この「たこぶえ」っておもしろいけど
著作権どうなってんの? とか(笑)。
- ──
- 気にしなきゃですね。社会人として。
- 燃え殻
- あくまで大人のたしなみとしてつきあう。
それくらいの距離感がいいと思う。 - 青春時代、いろいろと余裕のない状態で
食い入るように読んでたころとは、
またちがったおもしろさが味わえますよ。
- ──
- 人生で2度おいしい、それがVOW。
またしても素敵なキャッチコピーが。 - ただ‥‥ぼくが中学生くらいのころから
現在にいたるまで、
ずーっと投稿してくださっている
常連投稿人の方もいらっしゃるんですよ。
- 燃え殻
- そんなレジェンドいるんだ。
- ──
- はい。投稿ネームに「年齢」が
含まれている方で、
ぼくが中学生くらいのころは、
たしか20代か30代だったと思うんですよ。 - でもいま、その方の投稿ネームを見ると
「50代」になってるんです。
- 燃え殻
- すごい。それだけの時間が流れてるんだ。
- ──
- 本当にすごいし、ありがたいことです。
- ぼくは、2代目総本部長の古矢徹さんが
VOWというコンテンツを
いまのようなかたちにつくりあげたと
思っているんですが、
当然、その投稿人の方をはじめ、
投稿し続けてくださったみなさんのおかげで、
今日まで続けてこれたわけですから。
- 燃え殻
- その人‥‥もうそういう「仕事」として、
「VOW投稿人」って
名刺に書いたっていいくらいじゃないの。 - だって「30年」も投稿してるんでしょ?
完全にライフワークだし、
よくわかんないけど、「偉業」ですよ。
(つづきます)
2025-01-11-SAT