おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。

>燃え殻さん プロフィール

燃え殻(もえがら)

小説家・エッセイスト。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で鮮烈デビュー。最新のエッセイ集『明けないで夜』(マガジンハウス)も最高です。

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第2回 中学時代、剣道部の部室で。

──
燃え殻さんにとって、
VOWってどんな存在でしたか。
燃え殻
中学時代、
剣道部の薄暗い部室で読んでたんですよ。
だから知ってるのは初期ですね。
みんなで回し読みしてました。
「絶対に元が取れる本だな」と思ってた。
──
わはは、素敵なキャッチコピーだなあ。
「絶対に元が取れる本」(笑)。
燃え殻
この「たこぶえ」とか、よく覚えてます。
たぶん名作ですよね。VOW的にも。

『VOW 30周年スペシャル』より 『VOW 30周年スペシャル』より

──
はい。殿堂入り級の名作です。
燃え殻
これ‥‥俺、青春時代でしょ。
他にも覚えとかなきゃなんないこととか
たくさんあったはずなんです。
それなのにまったく人生の役に立たない
VOWネタを覚えてる。何でだろう。
悔しい。
──
覚えてること自体が悔しい(笑)。
燃え殻
もっと甘酸っぱいできごととか
思い出したいですよ。
まあでも、人生ってそんなもんなのかも。
あの部室にいたやつら全員、
俺の人生の役に立ってないもん(笑)。
──
VOWも含めて。
燃え殻
含めて(笑)。
仕事を紹介してくれるわけでもないし。
でも、役に立たないけどあってよかった。
あのときの人間関係も、VOWも。
青春のかなたへ消えていったはずなのに、
死んでなかったんですよ、まだ。
──
友だちってそういうものなのかもですね。
VOWは友だち。いいなあ。
燃え殻
これとかだってハッキリ覚えてますもん。
「さつきみどり」。
──
‥‥という名の「きゅうりの種」ですね。

『VOW 30周年スペシャル』より 『VOW 30周年スペシャル』より

燃え殻
投稿人の
「えっちなきゅうりが生えてきそうです」
ってコメントも最高ですよね。
──
文学的な香りすらしますね。
「えっちなきゅうり」の部分に、
別の意味が込められていそうなほどです。
燃え殻
そうそう。「さつきみどり」だから、ね。
往年のグラマラスと言えばの。
これ、パッケージごと送ってきたんでしょ。
よく見つけるよなあ。
種売り場に「さつきみどり」ってあっても
見逃しますよ、ふつう。
──
本当に鋭いなあと思います。
VOW投稿人のみなさんの「嗅覚」たるや。
燃え殻
でも、名作ってやっぱりあるんですね。
──
そうですね、40年の歴史の中では。
先代が好きだった「まさる死ろす!!」とか、
「きけ、わだみつおの声」などは
いつまでも語り継いでいきたい名作です。

『ベスト オブ VOW』より
『ベスト オブ VOW』より

燃え殻
わはは、「まさる死ろす!!」(笑)。
何かが先走っちゃってるね。
──
どうして怒ってるのかはわからないけど、
まさるへの怒りが度を超しすぎて、
「殺」をすっ飛ばして
「死」って書いちゃったという名作です。
燃え殻
この投稿人の「夜見たら怖かったです!」
というコメントもいいなあ。
──
そうですね。
昼に見たら笑っちゃいそうだけど、
夜に見たらたしかに怖いかも。
燃え殻
対する総本部長のコメントの
「死ろさないで~」っていうのも好き。
でもさ、俺たちが、こういうのを
剣道部の薄暗い部室で
ニヤニヤしながら回し読みしてたのって、
30年以上前なわけでしょ。
──
そうですねえ。
燃え殻
ずーっと好きで読み続けてきた人も
当然いると思うけど、
いったん離れちゃった人たちだって、
たくさんいると思うんです。
俺も含めて。
──
正直、ぼくも離れていた時期があります。
大学入試の直前とか、
仕事ができず、
鬼のように余裕のなかった20代とか。
燃え殻
でしょ? 
むしろ離れなきゃいけないと思うんです。
1回くらい。
──
大人の階段を登るために。わかります。
燃え殻
思春期が終わっていちど離れたからこそ、
ちゃんとした距離感で
向き合えるようにもなると思うんです。
剣道部の薄暗い部室で読んでたころは、
本と目の距離2センチくらいだったけど。
──
わはは、真剣に向き合いすぎ!(笑)
燃え殻
そこまでまともに読んだらダメですよね。
でも、いったんは離れて大人になって、
こうしてVOWに帰ってきたら、
この「たこぶえ」っておもしろいけど
著作権どうなってんの? とか(笑)。
──
気にしなきゃですね。社会人として。
燃え殻
あくまで大人のたしなみとしてつきあう。
それくらいの距離感がいいと思う。
青春時代、いろいろと余裕のない状態で
食い入るように読んでたころとは、
またちがったおもしろさが味わえますよ。
──
人生で2度おいしい、それがVOW。
またしても素敵なキャッチコピーが。
ただ‥‥ぼくが中学生くらいのころから
現在にいたるまで、
ずーっと投稿してくださっている
常連投稿人の方もいらっしゃるんですよ。
燃え殻
そんなレジェンドいるんだ。
──
はい。投稿ネームに「年齢」が
含まれている方で、
ぼくが中学生くらいのころは、
たしか20代か30代だったと思うんですよ。
でもいま、その方の投稿ネームを見ると
「50代」になってるんです。
燃え殻
すごい。それだけの時間が流れてるんだ。
──
本当にすごいし、ありがたいことです。
ぼくは、2代目総本部長の古矢徹さんが
VOWというコンテンツを
いまのようなかたちにつくりあげたと
思っているんですが、
当然、その投稿人の方をはじめ、
投稿し続けてくださったみなさんのおかげで、
今日まで続けてこれたわけですから。
燃え殻
その人‥‥もうそういう「仕事」として、
「VOW投稿人」って
名刺に書いたっていいくらいじゃないの。
だって「30年」も投稿してるんでしょ?
完全にライフワークだし、
よくわかんないけど、「偉業」ですよ。

『VOW 30周年スペシャル』より 『VOW 30周年スペシャル』より

(つづきます)

2025-01-11-SAT

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