おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
燃え殻(もえがら)
小説家・エッセイスト。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で鮮烈デビュー。最新のエッセイ集『明けないで夜』(マガジンハウス)も最高です。
- ──
- 何のネタだったか忘れちゃったんですが、
2代目総本部長が
「人類って一生バカだから」
みたいなコメントを書いていたんですね。 - つまりVOWって、人類目線で、
われわれ人類の失敗を愛でている感じが
あるなあと思うんです。
ちょっと大げさかもしれないんですけど。
- 燃え殻
- いや、でも、そういうところあるかも。
- ──
- 「しょうがねえなあ、われわれ人類」
みたいな感じというのか。
- 燃え殻
- 自分たちが子どものころって、
世の中もっとちゃんとしてるだろうなと
思ってませんでした?
親も先生も、ふつうに厳しかったし。 - でも、部室でVOWをコソコソ見てると、
何だかそうでもなさそうだぞって。
- ──
- たしかに世間のリアルな姿を知ったかも。
VOWを通して。
- 燃え殻
- 何だかやっぱり、ホッとしたんですよね。
VOWを見てたら。 - で、それはVOWだけじゃなくて、
いい感じにテキトーなオッサンだったり、
こんなんでもやってけるんだなみたいな
ゆるい大人を見かけたときも、
ホッとできたというか。
- ──
- うん、うん。
- 燃え殻
- でも、それくらいでいいですよ。
じゃないと、つらくないですか。 - いまって、生きていくのに。
- ──
- そうなんですよ。そうだと思います。
- 燃え殻さんのエッセイにも、
インドで何時間も寝過ごした知り合いが、
「ヤベッ!」つって起きたら、
まだ電車が来てなかったっていう話が
あるじゃないですか。
- 燃え殻
- あー。
- ──
- あれ、VOWだと思うんです。
- まじめな新聞とか、
載るとこに載ったのを見る人が見たら、
投稿してると思う。
- 燃え殻
- たしかに。
- おもしろがろうと思えばおもしろがれる。
スルーしようと思えばスルーできる。
ひどい話だと叫べば、そうにも聞こえる。
ものごとってそういうものなのかも。
だとしたら、
おもしろがったほうがいいですよね、だいたい。
- ──
- 本当ですよ。人生。
- 燃え殻
- いかがかと思うっていまみんな言うけど、
基本はおもしろがったほうが、
いろいろうまくいくと思うんですよ。 - 厳しめの大人みたいに、
眉間にしわを寄せるのは簡単だけど。
- ──
- 燃え殻さんが中学生のころに読んでいた
VOWが、
「まだあの部室にあるような気がする」って、
さっきおっしゃっていたじゃないですか。 - ぼく最近、
そういうようなことをよく考えるんです。
- 燃え殻
- というと?
- ──
- VOWって、
ここ何年か単行本を出してないんですよ。
残念なことに。 - まず出版不況ということがあるだろうし、
いまはネット上に
VOWみたいなサイトやアカウントが
無数にあることも理由かもしれないけど。
- 燃え殻
- ええ。
- ──
- でもやっぱり、本のかたちになってれば、
「部活の先輩から代々受け継いだVOW」
みたいな奇跡が起こったりするわけです。
で、その最たるものが、
東京国立博物館のガラスケースに
展示された、何百年も前の
『古今和歌集』だったりするんだろうなと。 - 逆に、ネット上に転がっているネタには、
「時間」の感覚が希薄な気がして。
- 燃え殻
- ないですね。「時代」の感覚もない。
- ──
- そうなんですよ。でも、本とか雑誌って
時代の空気を閉じ込めるじゃないですか。 - だからこそ「俺の青春の思い出」になる。
- 燃え殻
- それこそ「紙の時間」の話ですね。
「時間の手ざわり」がないと、
やっぱり自分の思い出にはしずらいかも。 - 俺たちの部室のVOWの、
あのザラザラした手ざわりといっしょに、
あの時代のザラザラした気持ちを
思い出したりするから。
- ──
- VOWって、武者小路実篤記念館にも
収蔵されてるらしいんですよ。
- 燃え殻
- な、何で?(笑)
- ──
- 歴史に残る初期のVOWの新聞誤植ネタに、
武者小路実篤を
大和田獏と書いてしまいました、
お詫びして訂正いたします‥‥という
メガトン級のやつがあって、
それも武者小路の1ページだってことで。
- 燃え殻
- さすが文豪、懐の深さがちがう(笑)。
- でも、そういう奇跡も起こるってことか。
本のかたちになっていさえすれば。
ただ、いまの若い人たちって、
「紙っぽい時間の流れの楽しみ方」とか、
あんまり知らないのかも。
こっちは、まあ、知ってるじゃないですか。
- ──
- はい。投稿して、
何週間か後の雑誌の誌面に載るかどうか、
深夜のコンビニへたしかめに行く
みたいな、
楽しみを寝かせるような楽しみ方ですね。
- 燃え殻
- ああいう感じって、いま必要だと思う。
SNSのスピードで走ってる時代にこそ。
そのためにも、
SNSの便利なところをうまく利用して、
紙感のするザラザラしたVOWを、
もっと盛り上げていけたらいいですよね。 - ちなみにいまって、
投稿の募集ってどこでやってるんですか。
- ──
- 毎月の『sweet』の連載に
「投稿の宛先はこちら」と書いてあります。 - あとは、VOWのサイトですかね。
- 燃え殻
- Xでも投稿できるんでしょ?
- ──
- いや‥‥Xではできないんじゃないかな。
- というより、
VOWの公式Xアカウントというものが
存在しないんじゃないかなあ。
- 燃え殻
- わっ、そうなんですか。
- Xは向いてますよ。
VOWにはVOWのスタイルがあるけど、
「こういう感じで投稿してね」
ってちゃんと説明すれば、
いまの人たち、みんな呑み込み早いし。
- ──
- たしかに‥‥。
- 燃え殻
- それでVOWが盛り上がったら、
『sweet』の売上アップにつながるか‥‥は
わかんないけど(笑)、
VOWの単行本は
つくれるかもしれないじゃないですか。
- ──
- たしかに‥‥! 単行本つくりたいです。
紙の時代のチャレンジャーとして、
SNS時代に挑戦していこうと思います。 - でも、なるほど‥‥そうか。
Xのアカウントをつくればいいのか‥‥!
- 燃え殻
- 遅っ!
- 10年は遅いっす。
いま全員ずっこけたと思う(笑)。
(終わります)
2025-01-14-TUE