おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
燃え殻(もえがら)
小説家・エッセイスト。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で鮮烈デビュー。最新のエッセイ集『明けないで夜』(マガジンハウス)も最高です。
- ──
- そういえば燃え殻さんも、
かつてはラジオのハガキ職人でしたよね。
- 燃え殻
- まあ、はい。昔はラジオにも雑誌にも、
読者投稿のコーナーがたくさんあって。
- ──
- 「ジャンプ放送局」とか。
- 燃え殻
- そうそう、ぼくもハガキ出してましたよ。
さくまあきらさん、ですよね。
- ──
- あちらは「放送局長」でしたっけ。
- 燃え殻
- たしか1回、掲載されたことがあるかも。
『ファミ通』にもよく出してたし。
- ──
- ガバスほしさに? ぼくもですよ!
- 燃え殻
- そう。ガバス、集めてたなあ。せっせと。
毎号毎号ハサミで切ってね。 - でも、投稿したネタが掲載されない限り、
絶対ディスクシステムまで届かない。
- ──
- そうなんです。ぼくも、恥ずかしながら
投稿した経験があるんですけど、
一回も採用されませんでした。才能なし。
- 燃え殻
- 『ファミ通』には載らなかったんだけど、
『マル勝ファミコン』には載ったかも。 - あと『週刊プロレス』にも出してました。
2コマ漫画のコーナーに。
ポコ山チン太郎という人とか、
ウルトラセブン7号という名前で
やってる人がいた気がする。
『週刊ゴング』と『週刊プロレス』、
どっちにも載る常連とかもいて。
- ──
- プロの‥‥って言ったらヘンかもですが、
腕っこきのハガキ職人さんって、
何であんなにおもしろいんでしょうか。 - 感服します。
- 燃え殻
- ほんとに。先生と呼びたかったくらいですよ。
- ああ、『週刊朝日』の
「山藤章二の似顔絵塾」にも出してたな。
で、何本か掲載されました。
- ──
- えっ、そうなんですか! すごい!
- あの連載も、イラストによる「ボケ」
みたいなところがありますもんね。
似ているのは大前提だと思いますが、
どこをどうデフォルメするか‥‥という。
え、誰とか描いてたんですか?
- 燃え殻
- タモリさんとかイチロー選手で載りました。
- 夜中の12時、日付が発売日になると
いちはやく
コンビニで週刊誌の紐が解かれるんです。
中学生のときは、
夜、家を抜けて載ってるか見に行ってた。
- ──
- 真夜中の投稿ボーイ。
- 燃え殻
- 掲載されてたら買って帰るんです。
掲載されてなかったら、ひとりで反省会。 - そうやって楽しんでいた人、
当時は、たくさんいたと思うんですよね。
読者投稿コーナーって
いまどんどんなくなってる気がするけど、
絵を描いている人とかとも、
もっと
メディアが付き合ってくれたらいいのに。
- ──
- VOWには投稿しなかったんですか。
- 燃え殻
- しなかったです。VOWは読んでただけ。
- ──
- 壁新聞は書いてたけど。
- 燃え殻
- 書いてた(笑)。
- ──
- 教室の壁に貼り出していたんですよね。
誰にも頼まれてないのに、勝手に。 - いまから思えば、
そこで才能が磨かれてたんでしょうね。
- 燃え殻
- いやいや、ただ書いてたってだけです。
- でも、文化放送で放送作家やっている
ミラッキって男がいるんですが、
彼も壁新聞を書いていたらしいんです。
前日の落合博満の全打席について書いて
貼ってたらしいんだけど、
俺と同じで、
やっぱり「剥がされちゃう」んだって。
だから、剝がされないように、
最終的には
職員室に貼ってたらしいです(笑)。
- ──
- 先生方へ向けて
前日の落合選手の全打席情報を?
- 燃え殻
- 奇人ですよ。
- それがいまや、
売れっ子放送作家ですからね。
- ──
- 壁新聞が育てた部分もありますよね。
- 燃え殻
- 絶対あると思います。
- ──
- 同じように、燃え殻さんの成分の中に、
ほんの少しでも
剣道部の薄暗い部室で読んだVOWが
含まれているとしたら‥‥。 - そんなうれしいことって、ないですよ。
- 燃え殻
- まじめな話、VOWって
笑わせようとしてないところがいいと
俺は思ってるんです。 - 真剣にやったのにダメだった、
みたいなネタばっかりじゃないですか。
- ──
- まさしくですね。「まさる死ろす」も
「ウルトラヤブン」も、
きっと、みんな真剣の賜物ですもんね。 - 少なくとも、担当者レベルでは。
- 燃え殻
- いまって「半笑い」が多いと思う。
「こんな感じ、おもしろいでしょ?」
みたいな。 - クラスの人気者の陽キャとか、
徒競走とかでも、
ふざけて途中カニ歩きしたりとかして
「うえーい」とかやる感じ。
あんなのぜんぜんおもしろくないから。
そうじゃなくて、
クラスにも、絶対いたじゃないですか。
真剣に走ってるのにめっちゃ遅いやつ。
そういう、愛すべきやつ。
- ──
- いました。
- 燃え殻
- そっちのほうが、ぜんぜん乗れる。
- お詫びの文言か何かで
「お詫びいたしごんす」みたいなのを
どっかで見たことあるけど、
そこで間違えたら、
どこでお詫びするのって感じじゃない。
- ──
- たしかに。
- 燃え殻
- でも、本人としては「お詫び」だから、
「絶対に間違えちゃいけない!」
と思いながら書いて、
でも、間違っちゃってるわけですよね。 - 「こんな感じで、おもしろいでしょ?」
より、
そっちのほうがぜんぜんおもしろい。
- ──
- わかります。
- 先代も言ってました。
間違いや失敗をバカにするんじゃなく、
一緒に遊んでる感じなんだって。
それがVOWのアティテュードだって。
- 燃え殻
- 真剣なのにダメだったっていう瞬間。
そういう姿に、グッとくるんですよね。 - 人生、って感じで。
(つづきます)
2025-01-13-MON