矢野顕子さんの新曲、
『愛を告げる小鳥』のジャケットを
漫画家の松本大洋さんが描きました。
矢野さんの曲に大洋さんが絵をつけるのは、
去年開催された「アッコちゃんとイトイ」で
『自転車でおいで』を漫画にして以来2度目。
(ちなみにどちらの曲も作詞は糸井重里)
まだ実際には会ったことのない
矢野顕子さんと松本大洋さんに、
メールを通じてやり取りしてもらいました。
お互いに質問して、お互いに答えます。

>矢野顕子さんのプロフィール

矢野顕子(やの・あきこ)

1976年、アルバム『JAPANESE GIRL』でソロデビュー。
以来YMOとの共演など 活動は多岐に渡る。
rei harakamiとの「yanokami」、
森山良子との 「やもり」をはじめ、
上原ひろみ、YUKIなど、様々なジャンルのアーティストとコラボレーション。
2016年、ソロデビュー40周年を迎えた。
2020年、三味線奏者の上妻宏光との新ユニット、
「やのとあがつま」を結成し、
民謡をモチーフに新たな音楽を提案したアルバム
『Asteroid and Butterfly』をリリース。
同年9月には、ニューヨークと日本でリモート録音した楽曲「愛を告げる小鳥」を配信限定リリース予定。
また、矢野顕子と、宇宙飛行士の野口聡一氏の対談による書籍「宇宙に行くことは地球を知ること」が光文社新書から9 月17 日発売。

>松本大洋さんのプロフィール

松本大洋(まつもと・たいよう)

1967年、東京都生まれ。漫画家。
1987年に月刊アフタヌーンの四季賞にて
『STRAIGHT』が入賞。同作にてデビュー。
『花男』『鉄コン筋クリート』
『ピンポン』『GOGOモンスター』
『ナンバーファイブ 吾』『Sunny』など
独創的な人気作を生みだす。
『竹光侍』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。
『ルーブルの猫』でアイズナー賞
最優秀アジア作品賞を受賞。
谷川俊太郎さんとつくった絵本、
『かないくん』がほぼ日から発売中。

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第3回 松本大洋さんから、矢野顕子さんへ。「小さい頃から海は大好きです」

矢野顕子様


こんにちは
お返事をありがとうございました。



僕の人生で、矢野顕子さんから質問をいただいたり
送ったりすることがあるとは思いませんでした。
夢の中のような不思議な感じです。



足の指のひみつの特技や、
集めていたものについてなど、
教えていただいてありがとうございました!



切手の収集、僕も子どもの頃に一時期やっていました。
僕が子どもの頃に暮らした施設では、
子どもだけでなく大人にも収集家が多く、
見返り美人図の切手とか、
大人の人たちが大切にしているのを見ながら
とても憧れた記憶があります。




漫画、もしもまだお読みになっていなかったら、
夢枕獏さん原作・谷口ジローさん作画の
『神々の山嶺』という漫画を、
矢野さんへお勧めしてみたいです。
僕の尊敬するお2人の最高に痺れる漫画です。



いただいた質問への答えをお送りしますね。



◯大洋という自分の名前について思うことはありますか?
名は体を表すと思うことはあるでしょうか?


大洋という名前は、子どもの頃は嫌だったです。
当時は、アキラとかタカシなどの名前の子が多くて、
そういう名前の子がとてもうらやましかったです。


タイヨウという名前は空の太陽とも同じ読みなので、
周りの子からいつもからかわれて、
オマケに僕の場合、父親の名前が東洋だったので
父子お揃いみたいで、すごく恥ずかしかったです。


そんな感じで、20歳くらいまでは
うまく受け入れられませんでしたが、
いまでは いつのまにか
自分の名前も父の名前も好きになりました。


名が体を表す‥‥かはわかりませんが、
小さい頃から海は大好きです。
今も海の近くで暮らしていて、
海岸沿いを歩くと、とても幸せな気持ちになります。



◯自分が誰かと入れ替わりたいって
思ったことはありますか?
あるならば、どんな人、どんな立場でしょうか?


誰かと入れ替わりたいという発想は、
正直持ったことがなかったです。
マイケル・ジャクソンや、アイルトン・セナのような
凄い人に憧れがありましたが、
入れ替わってみたら超人が持つ独自な不安に
さいなまれそうという思いもあります。


でもいま考えていたら、
デビューした当時「zero」という
ボクシング漫画を描いていた頃に、
ユーリ・アルバチャコフという、
とても美しくて強いボクサーの試合を見て、
もしも自分がユーリに生まれ変わって
あんな試合ができたらどんな気分だろう?
と思ったことを思い出しました。



◯このこと、人物、もの、など
描くのが好きな対象はなんですか?


絵で描く対象は子どもが多いです。
あと象とかロバとか、動物を描くことも楽しいですね。



それから、自分の生まれる前から
子ども時代の1965~80年くらいの
昭和の時代の雰囲気を、
漫画などで描くことが好きだということに、
最近気がつきました。


そのあたりの時代のモチーフや
雰囲気を(想像も含め)描いているととても楽しいです。


矢野さんの歌には食べものがたくさん登場しますね。



では、また質問させて頂きます。



◯僕はドキュメンタリーフィルム
『SUPER FOLK SONG』を繰り返し繰り返し観ています。
映像も音楽も美しくて純粋に好きですし、
自分のたるんだ創作姿勢を正される思いがします。
もちろんアルバムも大好きです。
その映画の中で、懸命に音を探す矢野さんは
とても苦しそうにも見えますが、
矢野さんのレコーディングは、
毎回これくらい過酷なのでしょうか?
また、やはりこのように張り詰めた中に
楽しみがあるのでしょうか?


◯矢野さんのニューヨーク暮らしは長くなりましたが、
暮らしはじめた当初から、
しっくりとご自分に合っていましたか?
僕は数年前に知人を訪ねて行きましたが、
スケジュールもタイトだったせいもあり、
ヘトヘトになって、
帰国してから1週間ほど寝込んでしまいましたよ。


◯いただいた質問のお返しになるのですが、
矢野さんには 誰か入れ替わってみたい人が
おられるのでしょうか?
あれば、どんな人、どんな立場ですか?

(矢野顕子さんのお返事に続きます)

2020-09-18-FRI

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