2021年から2022年にかけて、
株式会社ほぼ日は「デザイナー」を6名採用しました。
当社比でみれば、過去に例のない極端な採用です。
ほぼ日デザインチームにとっても、
メンバーの数が倍近くになるおおきな変革です。
そんななか、デザインチーム最年長者の廣瀬正木が、
ある日、急に、こんなことを言いました。
「6人の新人デザイナーぜんいんに、
ほぼ日ハラマキのデザインを考えてもらいます」
廣瀬はどういうおもわくで
この企画を思いついたのでしょう?
新人たちのデザインはほんとうに商品になる?
などと気になることもありますが、
そういうあれこれを吹き飛ばして、
ワクワクする企画だと思いました。
新人たち6人のデザインを見てみたい。
6人が悩み、試行錯誤を繰り返し、
商品化される(かもしれない)までの流れを、
ここで追いかけます。
さあ、カモン、6人の新人たち。
自由にのびのびやっちゃってください。
ほぼ日ハラマキのデザインに挑む、
6人の新人デザイナーを紹介します。
共通に質問したのは下記2点。
- 1)なぜ、デザインを職業にしたのか。
- 2)プロジェクトのスタート地点で、
イメージしているハラマキのデザインは?
ふたりずつ、聞いていきましょう。
ひとりめは、高澤季裕。
ふたりめは、加藤千恵子。
- ──
- 新人デザイナー紹介の
トップバッターは、高澤季裕さんです。
- 高澤
- よろしくお願いします。
- ──
- よろしくお願いします。
これはハラマキのプロジェクトなんですけど、
作品を出してもらう前に、
それぞれのプロフィールのようなお話を
うかがいたいと思います。
- 高澤
- はい。
- ──
- 高澤さんは、どういう経緯で
デザイナーになったのでしょう。
- 高澤
- もともと子どものころから
絵を描くことが好きで。
とくに工作がすごい好きでした。
- ──
- とくに工作。
- 高澤
- 物をいじっているのが好きだったんです。
好きだったんですけど、
高校のとき進路をきめる段階では、
美術系ではなく、生物系に興味があって。
- ──
- ん? 生物?
「静物画」の「せいぶつ」じゃなくて、
「生き物」の「生物」ですか。
- 高澤
- はい、生き物の方です。
生物学とか、行動学に興味がありました。
- ──
- へえー、意外な。
- 高澤
- 大学は生物系の学部に進学したくて、
そのための受験勉強をひたすらやりました。
でも現役のときはダメで、
浪人もしたんですけど、
けっきょく、自分が行きたかったところは
ことごとく落ちてしまいました。
- ──
- そうかぁ。
- 高澤
- わりと絶望しました(笑)。
- ──
- うん。
- 高澤
- そんな状態で、
3月くらいまで過ごして、
ふと、「今から受けられるところないかな」
と探してみて見つけたのが、
日大の芸術学部でした。
- ──
- 日大芸術学部。
もともと好きだった分野に、
自然と目が行ったのかもしれないですね。
- 高澤
- そうですね、
デザインの道は選ばなかったけれど、
いま、思い切ってそっちに行ったら
どうなるのかなと思って。
それが、
デザインの道に進んだきっかけでした。
- ──
- そうやって進んだ日大芸術学部には、
最初から芸術系を目指している、
上手な人がいるわけじゃないですか。
- 高澤
- はい。
- ──
- 「自分は絵がうまいと思って入学したら
周囲がそれ以上で自信を失った」
という話をよく耳にするけど、
高澤さんは、
心が折れたりしなかった?
- 高澤
- その前に希望の進路に進めなくて、
心が折れちゃってましたから。
- ──
- そうか(笑)。
- 高澤
- もう折れてたので、折れどころがなくて。
- ──
- 折れどころ(笑)。
じゃあ、単純に学校をたのしめた。
- 高澤
- はい。ぜんぶが新鮮で。
絵もデッサンも、
ひとつひとつがたのしくて、
「ちがう道だけど、おもしろい」
っていう感じになりました。
- ──
- 切り替えたんだね、あかるく。
- 高澤
- そういう感じでした。
- ──
- 大学では、
どういう勉強が好きでした?
- 高澤
- やっぱり工作が好きだったので、
紙物のデザインを学ぶことが多かったです。
ブックデザインとか。
卒業制作では、
粘土でミニチュアサイズの人や
物をたくさん作って、
コマ撮りをやりました。
- ──
- 立体作品が好きなんだね。
- 高澤
- はい。
そのほうが心がときめきます。
- ──
- その後、ほぼ日にやってきて‥‥
たしかインターンのとき
ハラマキチームに入ってましたよね。
- 高澤
- そうなんです。
- ──
- ということは、
このプロジェクトに関しては、
他の新人たちよりスタートが早い。
- 高澤
- たしかにインターンのとき
ハラマキのデザインを
考える機会はありました。
でも紆余曲折あって、
うまくいかなかったんです。
ハラマキにするときの条件というか、
制約を意識しすぎちゃったのかなと。
- ──
- そうか、
「ハラマキでこれはできない」を
知っているから、
その意味では逆に、
自由に発想することが
むずかしくなっているかもしれない?
- 高澤
- そうですね。
でも、そのときは、
制約を考えすぎてうまくいかなかったので、
今回は一度、
すっかり忘れてやってみようと思います。
- ──
- 一回、ゼロにする。
- 高澤
- はい。
それこそ工作感覚で、
もっと自由に考えてみようと。
- ──
- ゼロにして、
新しいイメージはわいてきてますか?
- 高澤
- ハラマキって、
ぐるっと一周してるじゃないですか。
その一周してるっていうのが、
あらためてすごくおもしろいと思って。
ただの柄ではなくて、
「一巻き」っていうのに、
おもしろみを持たせたいなっていうのは、
いま、ちょっと考えています。
- ──
- わかりました。
たのしみにしています。
- ──
- デザイナーを志したきっかけを
聞かせてください。
ちいさなころにさかのぼってもいいです。
- 加藤
- ちいさいころ‥‥。
保育所に通っているときから
絵を描くのが好きでした。
おとなしい子で、
アトピー持ちだったので、
お薬をいっぱいもらっていて、
その薬の紙袋を集めて、
スケッチブックに貼って、
薬のキャラクターをつくるっていうのを
ずっとやってました。
- ──
- 薬の、キャラクター?
- 加藤
- お薬ごとに
ちがうキャラクターをつくるんです。
スケッチブックに、
薬たちの冒険物語を描いてました。
- ──
- それ、見たいです(笑)。
保育園のあともずっと、
絵を描くことが好きで?
- 加藤
- はい。
でも中学生くらいになったとき、
絵は好きだけど、
自分はそんなにうまくはないなと思って。
高校は美術系に行かず、
普通科に行くことにしたんです。
高校に入ってからも
イラストは描いていたんですけど、
やっぱり「うまくない」っていう
意識がずっとあって‥‥。
でも、高校2年生のときに
美大の見学に行って、
「あ、ぜったい、こっちだ」と。
それから受験のために、
画塾に行きはじめました。
- ──
- 美大では何科だったんですか?
- 加藤
- グラフィックデザインコースです。
- ──
- ほぅ、「絵」のコースではなく。
- 加藤
- そうですね。
正直に言いますと‥‥
- ──
- ぜひ正直にお願いします(笑)。
- 加藤
- 仕事の選択肢が多そうだなと思って
デザイン系を選びました。
- ──
- なるほど。いいと思います。
- 加藤
- でもぜんぜん、うまくいかなくて。
- ──
- それは、学ぶのがつらかったとか?
- 加藤
- 「デザインは難しい」
という意識が常にありました。
でも、たのしいことも、たまにあるんです。
その「たまにたのしい」っていうのが、
デザインの勉強を続けられた理由です。
- ──
- 思っていたよりうまくできたり、
誰かにほめられたり。
そういうときはたのしいですよね。
- 加藤
- そうですね。
あと、好きなイラストを描くことは
ずっと並行して続けているので。
- ──
- デザインという仕事のとなりに
絵を描くことがあるから、
行ったり来たりができる。
- 加藤
- はい。
どっちもがんばりたいです。
- ──
- そういう学生時代を経て、
ほぼ日に入って、
1年も経たないうちに
先輩デザイナーからミッションが来ました。
- 加藤
- はい(笑)、ハラマキ。
- ──
- いま、どんなデザインを考えてますか?
- 加藤
- 服とか、着るもののデザインを
大学でやったことがないので
「どうしよう」って、すごく焦りました。
- ──
- そうか、それは焦りますね。
- 加藤
- それでこの前、
シルクスクリーンでTシャツをつくる、
美術館のワークショップに行って、
これをつくったんです。
- ──
- ほぉー、これはどういうテーマで?
- 加藤
- 最近、部屋に花を飾るようになったので、
その花をモチーフにしました。
これ、内側にも違うプリントをして、
自分だけが見える部分をつくったんです。
そうしたら、
すごいテンションが上がりました。
- ──
- ハラマキもそうですよ、
巻いている自分だけが
デザインを知っているという。
- 加藤
- はい、同じだと思いました。
- ──
- 経験がなくて不安だから
ワークショップに行くっていう、
フットワークがナイスだと思います。
- 加藤
- ありがとうございます。
あと、先輩にも相談しました。
そしたら、
「自分がお金を出して買ったものを
あらためて研究してみるといいよ」
というアドバイスをいただいて。
- ──
- それは、いいアドバイスだなぁ。
見えてきた傾向はありました?
- 加藤
- 自分が最近、買ったものを
描いてみたんですけど‥‥。
- ──
- これ、
今回のハラマキのために描いたんだ。
- 加藤
- はい。
- ──
- 絵を描くのは好きだから
スッとこれができちゃうんだ。
客観的に分析もできそうですね。
- 加藤
- はい。
描いてみて、
「量産品っぽく見えないものが好き」
ということに気づきました。
タグに刺繍がついていたり、
時間をかけて配置したんだろうなぁ
と思えるような柄だったり。
- ──
- 丁寧にデザインを考えた跡を、
感じられるものが好きなのかな。
- 加藤
- そうかもしれないです。
- ──
- ‥‥うん。
ありがとうございます。
イメージを広げていってください。
たのしみにしています。