2021年から2022年にかけて、
株式会社ほぼ日は「デザイナー」を6名採用しました。
当社比でみれば、過去に例のない極端な採用です。
ほぼ日デザインチームにとっても、
メンバーの数が倍近くになるおおきな変革です。
そんななか、デザインチーム最年長者の廣瀬正木が、
ある日、急に、こんなことを言いました。
「6人の新人デザイナーぜんいんに、
ほぼ日ハラマキのデザインを考えてもらいます」
廣瀬はどういうおもわくで
この企画を思いついたのでしょう?
新人たちのデザインはほんとうに商品になる?
などと気になることもありますが、
そういうあれこれを吹き飛ばして、
ワクワクする企画だと思いました。
新人たち6人のデザインを見てみたい。
6人が悩み、試行錯誤を繰り返し、
商品化される(かもしれない)までの流れを、
ここで追いかけます。
さあ、カモン、6人の新人たち。
自由にのびのびやっちゃってください。
発表会の5人めは、渡邉直子です。
最初に申し上げておきましょう。
彼女は30以上のデザインを展示しました。
ですので糸井重里への解説は、
ひとつひとつが手短で簡潔なものとなりました。
渡邉直子の発表を、どうぞ。
- 渡邉
- たくさんあるので、
パパっといきます。
- 糸井
- これは見るからに多いね(笑)。
- 渡邉
- まずは、
ふわふわしたものをつくりたかったので、
「もくもく雲」です。
- 渡邉
- これは、健康診断で測るような
メジャーのデザインです。
お腹に巻くと言えば、で思いつきました。
- 渡邉
- これは、学業御守や恋愛御守みたいな感じで、
お腹を守るというハラマキです。
- 渡邉
- こっちは、動物がぎゅっと
ハグをしてくれるシリーズで、
2種類あります。
- 渡邉
- それからこれは、
人体の骨のデザインです。
- 糸井
- 前に横尾忠則さんがつくったので、
これに近いのがあったよね。
- ──
-
はい、胃腸のデザイン。
それもやはり20年くらい前のハラマキです。
- 渡邉
- 「からだの仕組み-骨-」は、
ハンドウォーマーと、
レッグウォーマーもつくりました。
- 糸井
- 手足もセットで。
- 渡邉
- はい。
これは、新郎新婦の和装のデザインです。
- 糸井
- 新郎新婦ハラマキ。
- 渡邉
-
夫婦で着たら、いいなと思いました。
で、こっちは「ご祝儀」です。
贈りものにもなりますし、
もらう方もおなかをあたためられて
うれしいかなと。
- 糸井
- うん。
- 渡邉
- で、こちら、
足がついている海の生きものシリーズ。
クラゲ、イカ、メンダコです。
- 糸井
- はいはい、こうきたか(笑)。
- ──
- かたちも斬新ですねぇ。
- 渡邉
- 次行きます。
- ──
- あ、はい、どうぞ進めてください(笑)。
- 糸井
- いちいち止まらない。
スカッとしますね。
- 一同
- (笑)
- 渡邉
- 「心のなかのきもち」です。
いろんな感情の言葉を描きました。
- 渡邉
- 「世界のこんにちは」シリーズです。
窓からアメリカの景色や、
日本の景色が見えます。
- 渡邉
- これもシリーズで、「カツラおじさん」。
- ──
- カツラのところはどうなってるんですか?
- 渡邉
- ハラマキの端を折り曲げると、
おじさんの前髪がでてきます。
で、こうすると‥‥
- 糸井
- ハゲになる。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- なぜか、
全員メガネをかけていますね(笑)。
- 渡邉
- そして、
「腹からビーム!」で、ふたつ。
- 渡邉
- 次のこれは、「降参」の言葉を
そのままハラマキにしました。
- 渡邉
- 犬が降参するときには
お腹を見せる、
ということからこれを思いつきました。
- ──
- すごいな。
フリップ芸のようにどんどん進む。
- 渡邉
- 「ON/OFF」をテーマに、
前後で色をかえたデザインです。
- 渡邉
- 温泉のデザインです。
よりあたためてくれる感じに。
- 渡邉
- だるまのデザインです。
願いがかなったら
自分で目をつけられるようにしています。
- 渡邉
- おみくじのデザインです。
- 渡邉
- この展示では大吉を入れましたが、
実際は凶までつくって、
ほんもののおみくじのように
ハラマキを買ったら引けるようにしたら
おもしろいなと。
- ──
- 吉が出なかった人は、
出るまで何枚か買ったり?
- 渡邉
- あ、そうですね。
- 糸井
- それをさせるのは、
ちょっとわがまま(笑)。
- 渡邉
- すみません(笑)。
- 糸井
- ずばっと言いいます。
ぼくは先輩ですから。
- 一同
- (笑)
- 渡邉
- 続いて、
お守りなどを肌見離さず持っておける
ポケットつきのハラマキです。
- 渡邉
- これは、漢字がいっぱい書かれた
湯呑みから考えました。
- 糸井
- お寿司屋さんで魚の名前が並んでるやつの
肉体バージョンね。
- 渡邉
-
はい、肉体にまつわる漢字を
並べています。
これはタテに10cm長い、
「+10」サイズのハラマキ用で、
臓器のデザインです。
- 渡邉
- 次が、「腹踊り」です。
お腹を冷やさずに腹踊りができます。
- 糸井
- よく、この古典的なのを知ってたね。
たしかに腹踊りの絵はこうだよ。
- 渡邉
- 最後は、胃袋のイラストで、
食べたものが透けて見えます。
これをつくっているときに
自分の胃袋に入れたかったもの、
つまり食べたかったのものを描きました。
- 渡邉
-
‥‥以上です。
(一同拍手)
- 糸井
- いやー、思い切りがいいよね。
「どう表現しようかな」の、
「どう」の部分をほとんど考えてない。
思いついたらパンっとかたちにして、
「もう次やりたい!」みたいな。
- 渡邉
- はい(笑)。
- 糸井
- デザイナーによっては、
「このキャンドルをどう表現しよう」って、
ずっと考えて仕上げていくじゃない?
渡邉さんがキャンドルを思いついたら、
「そうだロウソク! はい次!」ですよ。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- もちろん、考えて仕上げるのは、
間違っていないわけで。
‥‥なんていうんだろう、
渡邊さんの、この、ばらまき加減というか。
- 渡邉
- はい(笑)。
- 糸井
- 「これやりたいんだよ!」っていう思いの、
「これ」がはっきりしてるのが、すごいですね。
だから、企画とかが好きですよね、たぶん。
- 渡邉
- あ、はい!
- 糸井
- デザイナーというよりは、
プランナーの発想に近いような気がする。
彼女と誰かが組むというのも、
すごくありなんです。
たとえば、ヤンさんと組んで、
渡邉さんがやりたいことを
ヤンさんがビジュアルに落とし込むとか。
- 渡邉
- あー、たのしそうです。
- 糸井
- とにかく、
やりたいと思うことと、
その結果までの速度がすごい。
スキーで言うと、直滑降みたいな。
- 渡邉
- ありがとうございます。
- 糸井
- ちいさくいっぱい出てくるっていうのは、
うん‥‥そのままでいたほうがいい。
それは個性だから、
大事にしたほうがいいです。
- 渡邉
- はい。
- ──
- 渡邉さんのメンターさんは‥‥
- 田口
- ぼくです。
- 糸井
- タグちゃんか(笑)!
- 田口
- はい(笑)。
- ──
- 思い切りのよさが似てる気がする(笑)。
- 糸井
- そうだね。
でもタグちゃんはちょっとね、
やっぱりテクを使いますからね。
- 田口
- (苦笑)
- 糸井
- どうアドバイスしたの?
- 田口
- 最初、見せてもらったときに、
すでにかなりあったんです。
なので、
「そのままもっとつくれ」と(笑)。
- 糸井
- おお(笑)、いいねー。
だって、そのとおりじゃないですか。
あの「腹踊り」なんてさ、
渡邊さん、
ほんとに踊ってるのを見たんじゃないよね?
- 渡邉
- あ、画像で見ました。
で、こういう感じかなって。
- 糸井
-
いいなぁ(笑)。
それができたら、もう、
「できた!」ってことになるからね。
今の子って感じがしますねぇ。
ほんと、それぞれおもしろい。
みんな自分の心があるよね。
「したい!」とか、「こうだ!」とかね。
それぞれにあるよね。
- ──
-
はい、ありますね。それを感じます。
渡邉さん、
たくさんの作品、お疲れさまでした。