こんにちは。「ほぼ日」の奥野です。
今日は、「ほぼ日」読者のみなさんでしたら
きっとよくご存知の人たちが
いろんなところで展覧会を開催しているので、
まとめて、ご紹介しますね。
アニメーション映画の監督、写真を学ぶ学生、
そして「謎の版画家」が、
銀座、港区海岸、大田区鵜の木で。
場所も表現もそれぞれですが、
それぞれ、どれも、すばらしい展示です。
銀座で、堤大介さんと
ロバート・コンドウさんの
トンコハウス展。
まず、ひとつめは
昨年のアカデミー賞に‥‥という説明を
何度もしている気がしますが、
短編アニメーション『ダム・キーパー』をつくった
堤大介さんとロバート・コンドウさんのスタジオ、
トンコハウスが、
銀座のリクルートのビルのギャラリーで
展覧会を開催しています。
会場は、『ダム・キーパー』の世界観を
映像や立体像も交えて展開したゾーンの他に、
新作映画の紹介など
トンコハウスの今後の活動をうかがい知れる
ちょっとワクワクするゾーンと‥‥。
▲トンコハウスの新作短編『ムーム』のブースも。
映画プロデューサー川村元気さんの原作を堤さんたちが映像化。
これまで、ずっと企画をあたためてきたという
『ダム・キーパー』の
フルCG長編バージョン(!)の現在がわかる、
かなーりワクワクするゾーン、という3部構成。
壁に大きく描かれているブタくんの絵が、
堤さんの「直描き」だったり、
堤さんやギャラリーのスタッフのかたが
設営のために
何日も篭もりきりだったという
トンコハウスの思いが伝わってくる展示です。
ところどころに「隠れキャラ」がいたりとか。
お買い物コーナーもあります。
額装されたイラスト(ジークレー版画)が、
すごくいいなーと思いました。
展示期間は、そろそろ後半戦に入っていますが
前半のハイライトとして、
NHK「どーもくん」をつくっている
コマ撮りの会社、
ドワーフさんとのコラボイベントがありました。
2Dアニメの堤さんと、
コマ撮り(3D)アニメのドワーフさんが
タッグを組むというのですから
これは、たいへん、ドキドキする企画です。
何をするんだろうと思っていると、
過去、ほぼ日の「21世紀の『仕事!』論」にも
ご出演いただいた
ストップモーション・アニメーターの第一人者で、
いつもは
「どーもくん」やこまねこ」を動かしている
峰岸裕和さんが、
たくさんのお客さんを前に、
3Dのブタくんをライブでコマ撮りしたのです!
くわしくは峰岸さんのインタビューにも
書かれていますが、通常「コマ撮り」って
「8時間作業してできるシーンの尺が
4秒半くらい」
という、おそるべき世界。
今回は1時間ほどのイベントだったので
峰岸さん的には
かなりの「急ぎ足」だったと思うのですが、
出来上がった動画が、こちらです。
あの『ダム・キーパー」のブタくんが、
「まばたき」してたりとか、
いかにもドワーフって感じで動いてる!
イベント終了後には
アニメやコマ撮りを志しているのでしょうか、
客席の若者が
目の前の堤さんと峰岸さんに
熱心に質問している姿がすごく印象的でした。
展覧会は、4月30日(土)まで。
今後も、川村元気さんのトークショーなど
イベントが予定されているみたいなので
公式ホームページを
ぜひ、チェックしてみてくださいね。
トンコハウス展『ダム・キーパー』の旅 会期:4月30日(土)まで開催中 会場:クリエイションギャラリーG8 住所:東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F 時間:11時〜19時(日曜・祝日休館) ※4月24日(日)は開館 料金:入場無料 公式ホームページは、こちら |
港区海岸にあるGallery916で
多摩美・写真ゼミの選抜展。
続きましては、港区海岸(竹芝駅)にある
写真家・上田義彦さんの「Gallery916」から。
多摩美術大学のゼミで
上田さんに写真を学んだ学生のなかから
6名の作品が選抜され、
あの、広くて真っ白なスペースに
贅沢に展示されています。
自分は写真の専門家ではありませんし、
写真のことばかり
考えているわけでもないので、
「写真の良さ、すばらしさ」については
ふだんは忘れていたりします。
でも、上田さんのGallery916へ来ると
「ああ、写真ってすごいなあ。
もっともっと
いろんな写真を見たいなあ」
という気持ちを思い出させてもらえます。
それは「この人の写真を見てほしい」
という上田さんの「目利き」のすばらしさが
いちばんの理由ですが、
あの「600平米(!)もの真っ白い空間」で
作品を見る特別感も、あると思います。
おもしろいなと思ったのは
今回の展示作品が
「グラフィックデザイン科」の学生さんたちの
写真であるということです。
ようするに、かならずしも、
はじめから写真を志していたわけではなく、
グラフィックを学ぶために大学に入り、
そこで上田さんの授業に出会って、
「写真の喜び」を学んだ学生たちなのです。
何人かは、
卒業後、実際に写真家になる道を志して、
歩み出しているそう。
ふだん、この一級の場に展示されている
著名な写真家の作品や、
いま、注目されている若手作家ではなく、
カメラを手にしてまだ数年の、
いわば「写真家のたまご」が撮った作品。
一流の方から見たら、
まだまだこれからに期待したいという点も、
あるのだろうと思います。
写真について、
良し悪しを語れる知識などない自分ですが、
でも、ところどころに
「あ、いいな」と思う作品がありました。
写真の展示の方法はじめ、
学生さんたちが、自分たちのやりたいように
全体の構成を考えたという点も、
貴重な経験になっただろうなあと思います。
それをゆるしたというか、
そうしようと決めた上田さんも、すごいです。
そんなことを思いながら作品を眺めていると、
学生さんに対する
上田さんの「やさしい目線」を感じます。
とくに写真の道を選んだ人にたいする
「はなむけ」としては、
これ以上ない、というものだからです。
何しろ、プロになってから
この会場で写真展を開くということは、
簡単なことではないはずですし。
そのことを考えると
とても、あたたかい気持ちになりました。
何というか、そういう写真展でした。
5月8日(日)まで、開催中です。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科 写真クラス選抜展『Shining in your eyes』 会期:5月8日(日)まで開催中 会場:Gallery916 住所:港区海岸1-14-24 鈴江第3ビル6階 時間:平日11時〜20時、土日・祝日11時〜18時30分 休廊:月曜日(祝日を除く) 料金:入場無料 HPはこちら。 |
鵜の木で「謎の爺」の回顧展。
最後は、東京多摩川線沿いの「鵜の木」から、
待望の回顧展の情報です。
望月計男さん、という名前を
覚えている読者も、いらっしゃると思います。
ふしぎで魅惑的な「どうぶつたち」の作品を
たくさん残しながら、
ほとんど「無名」のまま急逝した版画家です。
昨年の今ごろ、「ほぼ日」で
はじめてのインタビューを連載したのですが、
その掲載予定日の数日前、
不慮の事故で亡くなってしまったのです。
享年79歳。
(望月計男さんインタビューは、以下からどうぞ。
謎の爺とふしぎな「どうぶつたち」)
創作への思いは衰えず、
これからどんどん作品をつくっていこうと
意欲に燃えていた矢先、
本当に、最後の最後まで「謎の爺」のまま
亡くなってしまった、望月さん。
(ちょうど、
この文章がアップされる前日の4月18日が
望月さんの一周忌でした)
でも、望月さんの人柄がズバリ出たような
魅力的などうぶつたちの作品は、
その後、多くの人々を引きつけていきました。
死後に刊行された望月さん初の作品集は、
鵜の木のちいさなギャラリー
Hasu no hanaだけでしか買えないのに、
現在、1000冊以上売れているそうです。
原画を見ることのできるチャンスは、
生前も2回しかなく、
そのため、今回の回顧展は
死後に存在を知った人にとってはとくに、
待望の、待望の‥‥なのです。
Hasu no hanaオーナーのフクマカズエさんに
聞いたところによると、
福岡県や秋田県など遠い地域からも
作品集を買った人たちが
「ぜったい、生で作品を見たかったから!」と
足を運んでいるそうです。
望月さーん、スゴイことになってますよ!
▲中央の建物の1階が、会場のHasu no hanaです。
そして‥‥正直にもうしあげますと、
自分はまだ、
この展覧会に足を運べていないのです。
でも、行ってないけど、
「この展覧会は、いいですよー!」と
おすすめすることができます。
なぜなら、生前の展覧会に足を運んだときに、
「うわあ!」と見入ってしまった
代表的な作品が勢ぞろいしているらしいのと、
明らかに、そのとき以上に、
展示されている作品の数が多いのです。
下の会場写真を見ると、作品集にもない、
「ガオー!」と叫んでる
サルだかゴリラ(?)みたいなのもいる‥‥。
まだまだ、こんな作品があったんだー。
さすがは「謎の爺」です。
ということで、
ぼくも近いうちに、必ず、行ってきます。
5月1日(日)までの開催です。
開廊時間が曜日によってまちまちなので、
お気をつけください。お休みは、木曜日。
回顧展『望月計男とどうぶつたち』 会期:5月1日(日)まで開催中 会場:Hasu no hana 住所:大田区鵜の木1-11-7 時間:月・火・土・日 12時〜18時 水・金 15時〜22時 休廊:木曜日 料金:入場400円 HPはこちら。 |