![SUPER FOLK SONGとSUPER FOLK SONG RETURNED 前編 誰に向かって、書いたのか?](images_2017/20170925/title.jpg)
![](images_2017/20170925/top.jpg)
矢野顕子さん作曲+歌/糸井重里作詞の
「SUPER FOLK SONG」の続編となる
「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
このたび発表されました。
そこで、37年という時間を経て2作目を作詞した
糸井重里に話を訊くことにしました。
(聞き手はほぼ日スガノがつとめます。後編はこちら)
「SUPER FOLK SONG」をご存知ないみなさんも、
まずは2曲の歌詞をお読みください。
![](images_2017/20170925/superfolksongretarned.jpg)
![](images_2017/20170925/147281104956860.jpg)
(後編につづきます)
「SUPER FOLK SONG」の続編となる
「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
このたび発表されました。
そこで、37年という時間を経て2作目を作詞した
糸井重里に話を訊くことにしました。
(聞き手はほぼ日スガノがつとめます。後編はこちら)
「SUPER FOLK SONG」をご存知ないみなさんも、
まずは2曲の歌詞をお読みください。
![](images_2017/20170925/superfolksong.jpg)
![](images_2017/20170925/superfolksongretarned.jpg)
![](images_2017/20170925/147281104956860.jpg)
── | (聞き手 ほぼ日スガノ) 最初の「SUPER FOLK SONG」が発表されたのが 1980年のアルバム、 糸井さんの「Penguinism」です。 そこからじつに37年経ってるんですが。 |
|
糸井 | そうなんですか! |
|
── | はい。 そこから37年を経て書かれたのが このたび発表された 「SUPER FOLK SONG RETURNED」です。 |
|
糸井 | はぁぁ、そんなに経ちますか。
|
|
── | 1980年の「SUPER FOLK SONG」は ミドリとマサルが駆け落ちする話でした。 ロミオとジュリエットになぞった、 恋愛のはじめの、 いわゆる「ほれたはれた」のドラマが 描かれていました。 |
|
糸井 | はい、そうですね。 |
|
── | 勢いあまって駆け出したふたりを、 どうかみなさんでハッピーエンドにしてください、 という歌だったと思います。 |
|
糸井 | はい、はい。 |
|
── | でも、今回の 「SUPER FOLK SONG RETURNED」は、 おなじ「ハッピーエンドにしてください」でも、 ちょっとようすがちがいます。
|
|
糸井 | そうですね、そりゃあ、37年も経っていますし。 けれども単純に、1作目のこの子たちが 「その後どうなったかな?」と考えたら、 自然とこう書くことになるとぼくは思ってます。 まずは「あんがい別れてなかったんだ」ということが ありますよね。 |
|
── | 別れてないですね。 |
|
糸井 | ま、別れてないことを前提にしてしか、 続きは書けないですからね。 だとしたら何があったんだろう? それを書いたら、自然とこうなります。 |
|
── | 矢野さんと糸井さんの作った「春咲小紅」の歌詞が、 2作めの「SUPER FOLK SONG RETURNED」に 顔を出します。 散りばめられた懐かしい言葉を聴いて、 糸井さんと矢野さんの長年の友情を 勝手に感じてしまいました。 |
|
糸井 | うん、この歌はみんなが知ってるし、 なにしろ作家がいっしょだから、 「長年つきあってきたね」という気持ちが 入ってしまいますね。 |
|
── | じんとしました。 |
|
糸井 | こういう仕事は楽しいですよ、ほんとうに。 1作めの「SUPER FOLK SONG」を作ったときから おもしろかったけれども、 2作めの歌の構造を1作めに似せたところから、 遊びとしておもしろかった。 1曲めの「SUPER FOLK SONG」は I READ THE NEWS TODAY OH BOYという歌詞から はじまるけど、それはビートルズです。 |
|
── | A Day In The Lifeですね。 そして2作目には、おなじくビートルズの When I'm sixty fourが出てきます。 |
|
糸井 | これで、おんなじ舞台、劇場でやりますよ、 ということを示してるんです。 これを入れようと思っただけで ぼくはもう、にやにやしはじめていました。 「さて、どうしようかなぁ」なんて思いながら、 頭の一行をそのまま書いたので、 あとはどんどん作れたというわけです。 |
|
── | 頭の一行というのは、まったく同じ、 「恋に遠慮はいらないけれど」ですよね? |
|
糸井 | それを書けば、あとは書けると思った。 |
|
── | おんなじ一行で。 |
|
糸井 | 出てきちゃうんですよ。 |
|
── | はぁぁ〜。 次の「愛だフナだも 顔をだす」のところで、 ああ、このふたりにはいろんなことがあったんだ、 ということがわかります。 |
|
糸井 | ええ、わかりますね。 フナっていうのが ワナじゃないかな、とかね。 |
|
── | 怖いですね。 女性の年齢と、過ぎた歳月をあらわすのに 「ふくよかマダムのジュリエット」という 表現をなさいましたが、これは すごくリアルに感じてしまいました。 このふくよか像は、なぜ想像できたんですか? ミドリちゃんは、ふくよかになる要素があった、と? |
|
糸井 | あるでしょう。 村会議員の娘さんだったし、 もともと裕福だったんじゃないでしょうか。 青春時代の脂肪細胞があるタイプ だったのかもしれない。 お金持ってる自覚もあって、 ブタの貯金箱もあてにしてたよね。 |
|
── | こわしていいわ、と自信満々でしたが。 |
|
糸井 | おとなになると、 ブタの貯金箱なんかじゃ、 焼け石に水だということがわかります。 「いざとなったら」といいながら、 それじゃ稼ぐための屋台のひとつも 作れやしないんです。 |
|
── | 夢物語だったものが、 どんどんリアルになっていきますね。 そういう意味で、もうひとついいと思った歌詞が、 「ふたりたたずむ ダイニング」です。 |
|
糸井 | ああ、これはもう、 1980年の自分には書けないですね。 長いつきあいのふたりがどこで「いる」のかは、 けっこうポイントで、 やっぱりダイニングです。 しかも「ふたり」ですから、 子どもたちは巣立っているわけですよ。 |
|
── | 歌詞の少し前に 「一姫二太郎」が出てきますので、 お子さんはいるわけです。 |
|
糸井 | 三は猫。 |
|
── | 三は猫。犬もいる。 こういうものを書くときは、 登場人物が動くシーンが見えるものですか? |
|
糸井 | 画が浮かんで、それを追いかけていきます。 あるいは、字が字を呼んできます。 それが両方まざっている感じでしょうか。 |
|
── | 言葉が言葉を呼ぶ‥‥。 |
|
糸井 | そして、やっぱり助かるのは、 「春咲小紅」の歌詞を散りばめたこと。 |
|
── | 「春先小紅」の歌詞を、 なぜポイントポイントに入れたんですか? |
|
糸井 | 「春咲小紅」を入れたほうが みんなが喜ぶからです。 |
|
── | みんな? |
|
糸井 | この、時間が経ったというテーマの歌に、 「春咲小紅」の歌詞を見つけたら、 うれしくないですか? |
|
── | 私は、とてもうれしいです。 感動が倍になります。 |
|
糸井 | そうでしょ? そこが土台で保証されているから、 作ってて手応えがあるのです。 そのうれしさがあります。 |
|
── | ええっと、そのうれしさというのは──、 つまり、糸井さんは、 聴く人のことを考えて書くんですか? |
|
糸井 | そりゃあそうですよ。 聴く人のことを考えて書いていますよ。 あたりまえでしょう。 |
|
── | !!!! | |
糸井 | 自分たちのことなんて考えてないですよ。 聴く人が「うわぁ」と言ってくれる姿、 それだけを考えて書いています。 |
(後編につづきます)
この「SUPER FOLK SONG RETURNED」を含む、 7年ぶり5作目の矢野さんの弾き語りアルバム 『Soft Landing』は11月29日に発売されます。 Amazonでのお買い求め(ご予約)はこちらからどうぞ。 |
2017-09-25-MON