矢野顕子さん作曲+歌/糸井重里作詞の
「SUPER FOLK SONG」の続編となる
「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
発表されました。
前編につづき、
作詞した糸井重里にインタビューしています。
(聞き手はほぼ日スガノがつとめます)
2作の歌詞は前編をごらんください。
(おわります)
「SUPER FOLK SONG」の続編となる
「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
発表されました。
前編につづき、
作詞した糸井重里にインタビューしています。
(聞き手はほぼ日スガノがつとめます)
2作の歌詞は前編をごらんください。
糸井 | 1980年に、1作めの 「SUPER FOLK SONG」を書いたときは ただ産んだだけだったのですが、 2作めは、 「あの歌はこんなに長いこと愛されたんだ」 ということがわかったうえで作れるという 利点があります。 |
── | そうですね、矢野さんのアルバムの タイトルにもなりましたし。 |
糸井 | その愛され方を知ってるから、思いっきりやれました。 この続きを作ったんだ、と知ったら、 みなさんは「えーっ!」と言ってくれるわけですよ。 その「えーっ!」が聞きたいし、 歌う本人のアッコちゃんにもそう思ってほしい。 アッコちゃんは、このアイデアを聞いて、 「それはあるね!」ってうれしがってくれました。 |
── | 「ふたりでジャンボリー」のステージで 第2作の存在が発表されたとき、みんなが驚いて、 そして矢野さんが演奏して、すごくいい歌で、 会場が一体となりました。 |
糸井 | ぼくは自分の前の作品を超えたいと思って 作ることがときどきあります。 それらはいわゆる「兄弟作品」、 「対の作品」となります。 この「対の発想」というのは、もちろん、 おなじ作者だからできるんですよ。 矢野糸井作品はいろいろあるけど、 「SUPER FOLK SONG」は、以前から ぜひ対でやりたいなぁと思っていました。 ちなみに「CHILDREN IN THE SUMMER」は 「自転車でおいで」の対作品です。 |
── | この「SUPER FOLK SONG」は、 登場人物に名前がついていることもあって、 フィクション作家としての糸井さんの力を 感じるのですが。 |
糸井 | いや、それはちょっと違います。 なにせこれは歌詞だし、少ない行数だから、 物語を作るのとは違うんです。 どちらかというと、 編集力のようなものによって、できるんですよ。 |
── | ちなみにこれは、いつもの糸井さんの書き方で、 つまり「パッと」書くんですよね? |
糸井 | パッと書きます。 こっち(1980年)もこっち(2017年)も すごく短い時間で、パッと書きました。 |
── | たぶん15分とかですよね。 2作めの歌い出しは、1作めと同じ、 「恋に遠慮はいらないけれど」 これだと決めてたんですか? |
糸井 | はい、頭と最後は同じにすると決めていました。 ブルースが I wake up in the morningと 歌い出したりするのといっしょです。 |
── | でも、最後の「ハッピーエンド」という 言葉じたいは同じであっても、 「SUPER FOLK SONG」と 「SUPER FOLK SONG RETURNED」の 示すハッピーエンドの意味は、 同じではないですよね? |
糸井 | そうですね。 |
── | 最後にはどうなったら ハッピーエンドなんでしょう? |
糸井 | きっと、みんなのぜんぶが ハッピーエンドなんじゃないでしょうか。 |
── | ああ、そう思っていいんですか。 |
糸井 | そう思います。 そして、 「ハッピーエンドになりたいな」と歌うよりも、 「ハッピーエンドにしてください」というほうが、 歌としてはいいのです。 これは、物語の登場人物が、 自分のハッピーを望む歌ではありません。 聴いている人、そして歌っている人が、 他人のしあわせを望む歌なんです。 |
── | ハッピーエンドを願う心が、 歌って聴いている人のものになるんですね。 |
糸井 | そう。人のハッピーを歌う歌になるから、 気持ちよく歌えるし、聴けるんですよ。 人の幸せをのぞむのは、うれしいことだから。 1作めは、ふたりのアホな子どもたちが、 駆け落ちするんだけど、 それをみんなは好意で見ています。 |
── | 応援する気持ちで聴きました。 |
糸井 | そして、2作めは、 いろんなことがあって、汚れて、しわができても、 みんなは変わらず応援してくれる。 歌う人は、その応援に向かって、 ふたりのハッピーエンドを託せるわけです。 ほら、ロミオは浮気もしているし。 |
── | ほんとですね。 「スミレ タンポポ カボチャに キュウリ」 「浮気 借金 世の情け」 一家団欒があって、友達が死んで‥‥。 これはただのニコニコ笑っていられる ドラマじゃないですよね。 |
糸井 | そうですね。 第1作は谷岡ヤスジさんの「村」の 桃源郷のイメージがあったのですが、 2作めはダイニングが出てくるし、 やけに現実感があります。 |
── | 物語からリアルになっているというところに、 「恋」と「生活」の境を感じてしまいます。 恋のはじまりは劇場型で、 ロマンチックであっても‥‥。 |
糸井 | そうですねぇ、行き着く先は ダイニングなんですねぇ。 |
── | はぁぁ、リアルです。 糸井さんは、なぜこういう言葉が 「書いているうち」に出てくるのでしょうか。 |
糸井 | こういう類の仕事は、ほんとうに自分でも 楽しんでやっているから、 迷うことなくパッとできるんですよ。 得意で楽しんでやってることには、 自然と運もついてくるんです。 |
── | 得意で楽しいこと‥‥。 |
糸井 | 俺はさぁ、つまり、 相思相愛が好きなんじゃないのかな? |
── | 相思相愛が! |
糸井 | 若い子たちの「いまだけだからね」という 恋愛のよさ、これがまず好き。 だけど、いっしょに月日を重ねていくふたりは、 もう「愛」じゃないんだよ。 愛じゃなくて‥‥言ってみれば 「with your life」なんだよね。 |
── | withですか。 |
糸井 | Life with your life is my lifeとでも 言うのかなぁ? 親子では、それは言えないんですよ。 |
── | あなたの人生がくっついていて、私の人生です、 ということですね。 |
糸井 | そう。 「Your life is my life」なんて イコールで言わないで、 まず「Your life」を認めるのがいいと思う。 |
── | これからそこに向かって走る身としては 勉強になります。 この2曲、並べて聴いて、 ダイナミズムを味わいたいと思います。 ありがとうございました。 |
(おわります)
この「SUPER FOLK SONG RETURNED」を含む、 7年ぶり5作目の矢野さんの弾き語りアルバム 『Soft Landing』は11月29日に発売されます。 Amazonでのお買い求め(ご予約)はこちらからどうぞ。 |
2017-09-26-TUE