こんにちは、「ほぼ日」の奥野です。
去年の暮れのことですが、
曹洞宗の僧侶である藤田一照さんが
「ほぼ日」にいらして、
ぼくら乗組員に
「はじめての坐禅」のレクチャーを
施してくださいました。
これは、2月1日発売、
「みんなのZEN。」特集の『BRUTUS』のなかの
「ほぼ日乗組員が坐禅に挑戦!」
という企画でのことだったのですが
(記事にもなってます)、
社内で参加希望者を募ったところ、
「わたしも!」「ぼくも!」と、
あっという間にたくさんの手が上がり、
最終的には、このような大人数に。
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グーグルの社内で禅をやっているという
本を読んだのですが、
一度、体験してみたいと思っていました。
仕事の考え方にも影響しそうで、
興味があります。
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以前、あぐらで行う坐禅会に
参加したことがあるのですが
不思議と
すっきりしたような感じになったのを
覚えています。
とはいえ、ぜんぜん知識もないので、
初心者として参加したいです!
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先日、山口晃先生目当てで
禅展のトークイベントに行ったのですが、
冒頭で「椅子坐禅」を体験しました。
椅子に坐った状態でできる坐禅で、
とてもいい気持ちになりました。
坐禅、全員でやるのも、たのしそうです!
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え、みんな、そんなに興味があったんだ!
禅‥‥(密かに?)すごい社内人気。
そういう自分も、
スティーブ・ジョブスが実践してたとか、
表面的な知識だけですが、
ちょっとだけ気になっていたので、
参加させていただきました。
いろいろ発見のあった当日のもようを、
簡潔に、レポートしますね。
より詳しくは、いま販売中の
『BRUTUS』に掲載されていますので、
ここでは「坐禅の組み方」に焦点を当てて、
お伝えしていこうと思います。
まずは坐ってみよう。
藤田:
坐禅とか瞑想とか、
やったことある人どのくらいいますか?
藤田:
ほとんどの方が、はじめてですね。
では、先入観のない状態で坐ってみたら
何が起こるか、やってみましょう。
その場に身を置き、何を感じるか。
坐り方も、自分なりの姿勢で大丈夫です。
ポワ〜ン(という開始の鐘の合図)。
藤田:
ポワ〜ン(という終了の鐘の合図)。
‥‥ハイ、みなさん、目を開けてください。
さて、いかがでしたか?
足や肩や背中が痛くなってきたなあとか、
何かを思い出していたとか、
いろんなことが、起きたと思います。
「坐禅」というのは、
「人間稼業を一時的にやめる」
ということかなあと、ぼくは思っています。
人生に「休止符」を入れてみる。
藤田:
僕たちは、毎日毎日、
忙しく「人間稼業」をやってるわけですね。
悩みごとや難しい問題に直面しては、
それらを何とかクリアしながら生きてます。
それを「人生」と呼んでいるわけですが、
ときどき、その流れを、
いったん止めたいって気持ちが起こること、
ありませんか?
藤田:
あくまで「いったん」ですよ。
もちろん人生はまた再開するんですけど、
毎日のなかにいったん、
いつもの自分とはちがう状態になる時間を、
設けてみる。
ぼくは「句読点」とか「ポーズ」と言ってます。
英語で「pause」ですね。
それは人生に「休止符」を入れるってこと。
藤田:
ぼくたち人間は、ヘタしたら、
ずっとポーズなしで、ダーッと生きてしまいがちです。
何とか「勝ち組」になるために、
日々、いろいろな努力をしてるわけですね。
いい大学に入ったり、能力を磨いたり、
人脈をつくったり、競争したり、ということなどです。
藤田:
ご存知かもしれませんが、
最近では、ビジネス界でも瞑想が流行っています。
ぼくも、いろんな会社で教えたことがありますが、
いつも言うのは、
みなさんのパフォーマンスを上げるために
ここへ来たのではなく、
みなさんの忙しい「人間稼業」に
ちょっとポーズを入れるために来たんです‥‥と。
つまり、もしビジネスに役立つとしたら、
ビジーなマインドに
いったんポーズを入れることを教える、
というところに、
坐禅やマインドフルネス、瞑想の意味が、
あるんじゃないかと思っています。
藤田:
坐禅をしているときは、
人間稼業をいったんポーズして、
身体が自然のままの状態ではたらいている、
そのことを深く味わう時間です。
そういう時間を
毎日の生活にときどき持つということが、
人生に深みや奥行きを与えてくれると思う。
そして、そのときに、
自然のままの状態の身体を感じるための
重要なファクターのひとつが「姿勢」です。
禅の基本姿勢。
藤田:
このような脚の組み方が基本です。
半跏趺坐(はんかふざ)というヨガの形で、
まず一方の脚を深く曲げて、
もう一方の脚を前に‥‥こういう形ですね。
両膝を床につけるのが理想ですが、
難しい場合は、
おしりの下にクッションを敷くといいです。
藤田:
大切なのは、地面・床と
「しっかりコンタクトしている」という意識。
左右の坐骨で上体をしっかり支えます。
そこに体重を「まっすぐ下に下ろす」感覚です。
前にかがみ過ぎず、
後ろに反り過ぎず、
丁度いいポイントでバランスを取ります。
よい姿勢というのは、余計な力みがなくて、
かといってダラっともしていない。
そのニュートラルなポジションを
感覚をひも解いて探していきます。
外から見た形としての姿勢ではありません。
内側から感覚される、内観される姿が大事です。
目は開ける? 閉じる?
藤田:
目をいったん閉じてリラックスさせてから、
ゆっくり瞼を上げていきます。
瞼の裏側が
眼球の表面に触れながら上がっていく、
それが感じられるくらいのスローなスピードで。
今の自分の心境に
ピッタリだなと思うところまで、
すだれを巻き上げるような感覚で上げていきます。
完全に開いてるのでもなく、
完全に閉じてるのでもない。
何か一点を見つめるのではなくて、
視野の中心と周辺‥‥つまり全体を均等に見る。
そんな感覚です。
届いてくる音を受け止める。
藤田:
坐禅のとき、耳はふさぎません。
今、いろんな音が聞こえていると思います。
坐禅は感覚遮断とは違います。
むしろ感覚の窓を開き、
届いてくる音を選ばないで、受信していきます。
音を積極的に取りに行こうとせず、
今の「カシャ」というカメラの音も、
そのままの「カシャ」という純粋な音として
受け取ります。
「あ、カメラのシャッター音だ」と、
言葉で把握しない、意味づけない。
そういうことも
練習したら、できるようになります。
呼吸を「見守っている」だけ。
あごを引こうと「思う」だけ。
藤田:
呼吸も、身体が自然にするままに任せましょう。
寝ているときに
呼吸のことを考えていないのと同じで、
自分の身体が、
呼吸したいように呼吸しているのを、
自分は、親密に温かく見守っているだけです。
藤田:
気持ち「あごを引く」と思ってください。
実際には引かないで、
「引く」と「思ってみる」だけ。
心のなかで思うだけで、
身体が「思い」に反応してくれます。
実際に引いたら、引きすぎちゃいます。
藤田:
あごを引こうと思うと、後頭部にスーッと、
「上へ向かうちから」が、自ずと生まれます。
頭頂部が天へ向かって伸びていく‥‥という
感じが生まれませんか。
それと反対に、坐骨は地面へ向かって‥‥
地球の中心へ向かって伸びていく。
その、身体の中の上下の方向に延びる
ラインに沿って、
鼻から入ってきた息が、
ゆっくり下りて、
坐骨まで届く感覚がないでしょうか。
心は‥‥どうしたら?
藤田:
何か、特定のものに集中しようとしないこと。
それは余計なエゴの持ち出しです。
みなさんはいま、
「坐るために坐っている」のです。
つまり、ただの「物」になる。
生きた物質になる、ということです。
藤田:
ただ、坐禅していても、生きている以上、
脳がいろいろな思いを分泌させますね。
それは、オッケーです。
でも、追わず、払わず、手放していきます。
気づくだけで、相手にしない。
思いやイメージが、浮かんできたことは
わかっているけれど、
浮かぶまま、消えるままにしておく。
そのことが、とても重要です。
坐禅を終えるときは。
藤田:
さて、15分ほど経ちました。
両手をゆっくり顔の前へ持ってきて、
合掌して、軽く一礼をしましょう。
おなかとか首を曲げるのではなくて、
息を吐きながら、
股関節から骨盤を前に少し倒していきます。
そして息を吸いながら上体を起こし、
ゆっくり脚をほどき、伸ばします。
身体を、
くれぐれもていねいに扱ってください。
藤田:
脚をほどいて伸ばしてから、
膝を立て、股関節をゆっくり閉じます。
そのあと、
これは、ぼくなりの方法なんですが、
背中をゆっくり丸めます。
おヘソの裏あたりが伸ばされるので、
下腹の中の風船を膨ませるように、
ゆっくりと深呼吸をしてあげましょう。
乗組員たちの感想。
‥‥と、このように、
1時間半ほどで体験させていただいた、
坐禅の入門レクチャー。
坐禅の仕方を
駆け足で紹介してしまいましたが、
いかがでしたでしょうか。
藤田さんの言葉や表現が、
ひとつひとつ、
もの言わぬ身体を代弁しているというか、
身体に寄り添っているので、
「どんなイメージで坐ればいいか」が
とてもよく理解できました。
もちろん初めてですから、
瞑想中にあれこれ考えてしまったり、
「これで、大丈夫なのかなあ?」
と手探り状態でしたが、
ふっと「こころが落ち着く」瞬間も、
何度かありました。
かならずしも「無心」じゃなくていい。
なるほどーと思いました。
これを続けていくことで、少しづつでも、
自分の瞑想を、
自分のものにしていけたらいいなと思いました。
藤田さんは
「毎朝・毎晩やってもらえたら」と
おっしゃっていましたが、
自分のことで言うと、
たまに、気づいたときにやっています。
(毎朝・毎晩ではありません)
いま発売中の『BRUTUS』では、
坐禅を組むための身体ストレッチ方法や、
乗組員からの質疑応答など、
より詳しいレポートが載っていますので、
ご興味あったら、
ぜひ、読んでみてくださいね。
それでは、参加した乗組員たちの感想を、
以下に、並べてみます。
みんな、
こんなことを思って坐禅していたのか〜。
ほんと、人それぞれです。
ーーー
藤田さんに
「意識があるのになにもしていない」
「人間じゃない時間」
と教えていただいて、
たいへんおもしろみを感じました。
私は夜、
寝る前に楽器を弾くことがあるのですが、
無心に弾いているので、
もしかしたらそういう時間を
自分が求めていたのかもしれないと思いました。
禅は楽器よりさらに、自分の内なるもの、
「からだそのもの」と向き合う、
たいへん深い体験と感じました。
ーーー
肩を「バッシィィィン!」と
叩かれるんじゃないかと
ドキドキしていたのですが、
そういうのではなかった!
まっすぐに坐っているつもりなのに、
ユラユラゆれたりして、
しまいには、寝てしまいました‥‥(得意技)。
寝てしまってはダメらしいので、
意識を失わないようなギリギリのところを
習得したいです。
つかめる気が‥‥する! またやりたいです。
ーーー
禅への興味はあったけれど、
お寺が遠かったり、
体験の日時が指定されていたりして、
「禅って、ちょっと難しいものだよね」
と思ってました。
でも、実際に禅について教えていただくと、
家でも、一人でも、できるじゃないか‥‥!
記憶の新しいうちに、
習慣にできたらなと思います。
ーーー
自分の呼吸が浅いなあとか、
坐禅中の自分の身体のどこが痛いとか、
意識を向ける先が「自分」なので、
そのこと自体、ふだんは
やっていないことだと気づいたことが
おもしろかったです。
ふだんは、音や目から入る情報や、
においなどの感覚器を通じて、
外の情報を意識していることがよくわかって、
坐禅でそれ以外の感覚に気づくのが
とても新鮮でした。
じつは、目や耳や鼻など以外の感覚が、
自分のふだんの「気持ち」を
作っていそうな気がしました。
まだまだ気づくことがありそうなので
時間を設けて、続けてみようと思います。
ーーー
気持ちがスッキリして
リフレッシュできた感じがしました。
気持ち肩が軽くなったような‥‥。
ーーー
ちょっと難しく考えすぎてたんだなーと
先生の話をきいて思いました。
でも、まだあれから一回も、
心を落ち着けたことがありません‥‥。
ところで、
坐禅って極めるとどうなるんだろう?
ーーー
初めての坐禅体験、
呼吸と身体のお話がとても新鮮でした。
少しうまく坐れるようになったかな、
というあたりで、
息を吐きながら
身体が周囲に溶けていくような感じがして、
なんだか気持ちが良かったです。
ーーー
一回目は坐りかたがぎこちなかったからか、
脚の痛みなどで
意識が集中できませんでしたが、
身体のストレッチをしてから臨んだ回では、
一瞬、ふわ〜んと、
ずっとこのまま坐っていたいな‥‥
という気持ちになりました。
(結局、長くは続かなかったのですが)
「ただ坐る」ということにも、
コツがあるのだなあと思いました。
ーーー
ふだんは無意識で動かしている自分の身体。
でも、すみずみまで意識を集中させてみると、
なかなかままならない
不安定な身体の感覚のなかに、
ほんのときたま、
すがすがしい瞬間がありました。
あと、目をうすく開けたまま集中することが、
けっこうむずかしかったです。
でも、坐禅を習得できたら、
自分の毎日が少し変わりそうだと思いました。
ーーー
坐禅を組んで「人間でない時間」を作る。
坐禅体験で、静かに目を閉じて坐っていると、
しばらくして、小学生のころ毎日通っていた
剣道の稽古のあとに
「黙想」をしていたときの感覚が、
道場の景色とともに、急によみがえってきました。
ちょっとタイムスリップしたような
ふわふわした気分は、人間のままではあったけど、
日常のことをフッと忘れて、
いろんなことがオフになった、少し不思議な体験でした。
こういう時間が大事なんですね。
ーーー
坐禅は、日常の人間生活の中で
「人間をやめてみる時間」をつくること、
また「無心になろうとしなくてよい」など、
今まで思い込んでいた坐禅とは
違う視点をいただけて、
禅というもののおもしろさ、深さを
肌で感じることができて、
とてもいい経験となりました。
ーーー
日常生活でも、気がつくと、
ついつい猫背になっているわたしは、
予想通り「まっすぐ坐る」のが
難しかった(ちょっとつらかった)です。
でも、今回の坐禅をやってみて、
「背骨をまっすぐにする」でも
「背筋をのばす」でもなく、
「カラダの中心軸を探す」という感覚を
はじめて知りました。
「ココだ!」と思えたときは
一瞬でしたが、気持ちがよかったです!
極めていきたいです。
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藤田一照さん、ありがとうございました!
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藤田一照さんの活動については
公式ホームページをご覧ください。
http://fujitaissho.info/
2017年2月1日発売
『BRUTUS』みんなのZEN。
藤田一照さんのご指導のもと、
「ほぼ日」乗組員約30名が
禅を体験している様子が
6ページにわたってレポートされています。
http://magazineworld.jp/brutus/