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第4回『Miitomo』のポテンシャル
- 糸井
-
いま、『Miitomo』のダウンロード数は
どれくらいですか?
- 坂本
- 全世界で1000万ダウンロードを超えました。
- 糸井
-
1000万って、まぁ、
ものすごく多い数字だと思うんですが、
その人数がいるという実感は感じられますか?
- 坂本
- 実感は、あまりないですね。
- 糸井
-
これが、たとえば『マリオ』だったら
「あいつも、あいつも遊んでる」
というかたちで、実感できましたよね。
それは、クラスの友だちとか、
うちに来る子どもたちとか、
そういうかたちで目に見えていたからかもしれない。
- 坂本
-
そうですね。
あとやっぱり、ソフト自体を、
お金を出して買ってくださることと、
無料のダウンロードとでは、
実感が違ってくるかもしれません。
- 糸井
-
ああ、なるほど。
それは、儲けが出ているというようなこととは
また違うレベルでの実感ですよね。
- 坂本
- はい。
- 糸井
-
まあ、『Miitomo』も、
ダウンロード自体は無料ですが、
課金のシステムもありますけどね。
ぼくは、わりとたのしく
お金をつかっちゃってるんですよ。
服とか、あの落下させるゲームとか。
- 坂本
-
「おとしてMii」ですね(笑)。
ありがとうございます。
- 糸井
-
でも、ぼくのまわりの人たち‥‥
いまここにいるような人たちですが(笑)、
この人たちはそんなにお金を
つかっているようには見えない。
- 一同
- (笑)
- 坂本
-
それはもちろん、
それでまったくかまいませんし、
お金をつかわなくても
十分たのしめるようになっています。
- 糸井
-
それはそうですね。
『Miitomo』は無料でたっぷり遊べて、
ふつうに遊んでいるぶんには
課金されないというあたりが
任天堂らしいと思います。
逆にいうと、そういう、
課金に対する判断みたいなことって、
任天堂のものをつくっているかぎりは、
あんまりしてこなかったわけですよね。
- 坂本
-
はい。
『Miitomo』はDeNAさんといっしょに
仕事をさせていただいているので、
「課金についてはどう設定すればいいか」
「この要素に対しては
どれくらいのお金が妥当か」など、
豊富な経験をお持ちの方たちと相談して、
自分たちでも身につけていきました。
- 糸井
-
じゃあ課金の部分も、
任天堂側できちんとジャッジを。
- 坂本
-
そうですね。
具体的にはディレクターが担当しました。
ぼくは一歩離れたところから、
いろいろリクエストを言ったり。
- 糸井
-
仕事の内容も変わってきますね。
いままでは、ゲームのディレクターっていうと、
基本的には、いいものをつくって、
それを売り切るまでが
仕事だったと思うんですけど、
いまは課金のことも考えなくちゃいけないし、
売ったあとのサービスも考えなくちゃいけない。
- 坂本
-
そうなんです。
岩田と話したことがあるんですが、
これまでの任天堂では、
ゲームをつくるときに
「お客さんの顔色を
うかがいすぎないようにしよう」
「モニター調査をして、
お客さんが欲しがっているものを
そのまま出すなんてことをしてどうするんだ」
という考え方だったんです。
でもスマホアプリの世界というのは、
極端にいうと、お客さんの顔色をすごく見て、
どんどん変化を加えていく。
それは、いままで経験したことのない
つくり方でした。
- 糸井
- 逆なんですね。
- 坂本
-
真逆だったんですよ。
そういうこともあって、
『Miitomo』は、いまこうして完成して
世に出ている状態ですけど、
ぼくのなかではまだぜんぜん終わっていない。
これからやっていくことが
いま、まさに、たくさんあるという状態ですね。
たくさんダウンロードいただけたという
光栄な気持ちといっしょに
そこからの大変さも味わっているところです。
- 糸井
-
はーー、そうですかー。
つくり手側でやらなきゃいけないことが
どんどん生まれいくような状況なんでしょうね。
「もうここはいいか」というようなことも
簡単にはジャッジできなかったり。
- 坂本
-
そうなんです。
ただ、幸いなことにいっしょに組んでいる
DeNAさんのチームが
ノリの合う人たちなので、
ほんとうにひとつのチームとして、
いろんなことを相談しながら
進めているところです。
- 糸井
-
あぁ、それはよかったですね。
『Miitomo』の動きは
1本のゲームであるという以上に
経営課題に関わるような面もあるし、
ほんとうに「大冒険」ですけど、
しょうがないですね。
やれることをやるしかないですね。
- 坂本
-
そうですね。
本当に『Miitomo』って、
まだまだポテンシャルを秘めていて、
それを引き出す方法も
たくさんあると思っているんです。
だから、いろいろ課題はあるけれど、
困っているわけでもなくて。
- 糸井
- うん。
- 坂本
-
「『Miitomo』って、
こんな楽しいことができるんだ」
ってことをまずわかっていただきながら、
それを変化させていって、
考えるべきことはたくさんあるんですが、
それを乗り越えて、
お客さんにいろんな意味で
預けられるようなものになるといいなと。
ツールとしての使い方にも
可能性があると、ぼくは思っています。
(つづきます)
2016-07-05-TUE