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5「ちょっと知ってる」くらいの相手

糸井
『Miitomo』は、いろんな面で
はじめてのことが多かったでしょうから、
リリースしたあとも想定外のことが
多かったんじゃないでしょうか?
坂本
想定外のことはもう、ものすごく多かったです。
糸井
たとえば?
坂本
大きなところでいうと、
リリースして世に出たら、
もっとまわりの友だちとつながって
遊んでくれるだろうなと思っていたんです。
でも、実際にみんなの手に渡ったら、
こちらが想定していたほどではなくて、
「まずはひとりでやってみる」という感じで
遊ぶ方が多かったんですね。
それは、リリース当初、
友だちとつながる仕組みをぼくらが
準備しきれていなかったというのもあるんですが。
糸井
ああ、なるほど。
「遊ばれ方」が想定外だったんですね。
坂本
そうなんです。
社内でテストしていたときは、
ある程度、つながりながら遊んでいた
というのもあって。
糸井
それはどのくらいの規模で遊んでいたんですか。
坂本
開発チームを中心に、
20人くらいでやってましたね。
チームには若いメンバーもいて、
現実では立場的にも年齢的にも
多少、ギャップがあるんですけど、
『Miitomo』の中では
その人の知らないところが見られたりして
すごくおもしろかったんですよ。
ですから、リリースしたあとも、
できるだけ自然につながれるように
いろんな仕組みを整えました。
糸井
つながりすぎても気を遣ったりするし、
そのあたりのさじ加減は難しいでしょうね。
「Wii U」の『Splatoon』の場合は、
「知らない人と一緒にやる」という点で
すぱっと割り切っていたりしますが。
坂本
『Miitomo』の場合は、
「ちょっと知ってる」くらいの相手と
つながるのがちょうどいいんです。
糸井
あーー、なるほど。
坂本
本当になかよしの人どうしだと、
だいたいその人のことは知ってる。
でも、「ちょっと知ってる」くらいの
ほわっとした知り合いの人とつながると、
「あ、この人、こんなことをするんだ」
っていう意外性の部分が
ちょうどいいおもしろさになるんです。
ですから、ぼくらとしては、
手の届く範囲の人とつながって遊ぶくらいが
いちばんいいんじゃないかと思ってました。
糸井
とってもグローバルな仕掛けではあるんだけども、
そのなかに、ローカルに楽しむかたまりが
いっぱいできてくるっていうことですね。
坂本
まさにそうです。
当初、ぼくらはつながる相手は
多ければ多いほどたのしいだろうと
当たり前に思っていたんです。
フレンドの数が、多ければ多いほどいいだろうと。
ところが、個人的な話ですけど、
実はうちの奥さんが、
ぼくとぼくのいとこ夫婦、
自分を含めてフレンドが4人しかいない状態で、
毎日すごくたのしそうに遊んでるんですよ。
糸井
ああ(笑)。
坂本
毎日、寝る前に、いとこの奥さんと二人して、
遅くまでコメントを送り合ったりしてる。
「キヨミちゃんに返事書いてんねん」とか言って。
一同
(笑)
坂本
ほかのSNSでは味わえない、
「本当に話してる感」があるらしいんですよ。
だから、ぼくらが想定してたよりも
すごく小さいローカルな関係の中で、
他の手段では味わえないような喜びを
感じてくれてる人はいるんだなと。
糸井
夫婦二組だけっていうのは、わかりやすいですね。
坂本
はい。輪は小さいけれど、すっごい楽しいらしい。
糸井
ダンナがそのうち、
つまはじきにされはじめたりして(笑)。
坂本
ちょっとこわいですね(笑)。
うちのディレクターの場合は、
自分のお母さんがフレンドになっていて、
彼がなにかの質問に答えると、
お母さんが、もう、すぐに、
コメントしてしまうんですよ。
誰よりも早くコメントすることに
お母さんが生き甲斐を感じているようで。
糸井
(笑)
坂本
で、不思議なもんで、
お母さんがコメントしていると、
ぼくらは正直、入りづらいんですよ。
なんか、家族の会話に入っていくみたいで。
一同
(笑)
坂本
いまはお母さんのお姉さんまで
フレンド申請してきて、
もう親戚の会話が繰り広げられてる(笑)。
ディレクターにとっては
想定していたような遊びには
なってないのかもしれませんけど、
お母さんやおばさんたちは
すごく楽しいんだろうなと。
糸井
そうだねぇ(笑)。
家族会議とか親戚の集まりが
そこでできちゃいますもんね。
それ、やっぱりローカルの話ですね。
ニュー・ローカリズムだね。
坂本
だから、ぼくらが想定してた規模と
ぜんぜん違うところに
実はポテンシャルがあるのかなあと、
思ったりします。
糸井
『Miitomo』はいまのインターネットに
いちばん合った形のような気がしていて、
リリースされたときには「こう来たか」って、
けっこう感心したんですね。
坂本
ありがとうございます。
糸井
で、つぎに思ったのは、
つくり手がたいへんだろうなってこと。
もう、未来永劫、つくり手として
生きていかなきゃならない、
というようなたいへんさ(笑)。
坂本
はい、いつ言おうかなと思ってました。
そうです、たいへんなんです(笑)。
こちらからもどんどんきっかけとなるものを
『Miitomo』の中に
提供していかないとはじまらないので。
糸井
いまはそのきっかけを
どんどん足していってる状態ですか?
坂本
はい。より楽しくなる方向に、
いろんなものを足してみている状態です。
糸井
関係を保ってやりとりしながら、
どんどん足していくっていうのは、
いや、これは恐ろしいなあ。
つくり手の気持ちを考えると、怖くなりますよ。
何人くらいのチームなんですか?
坂本
いま開発で30人くらいですかね。
あとはバックエンドや
プロモーションなどの人を含めると
50人くらいでしょうか。
糸井
ひっきりなしに忙しいでしょう。
坂本
そうですね。
みんな、まだまだ落ち着いていない状態で。
糸井
極端に言うと、
『Miitomo』をプラットフォームにして、
この中にゲームをどんどん作っていく
っていうことだって、
やればやれちゃうわけだから。
坂本
はい(笑)。

(つづきます)

2016-07-06-WED