第6回自分自身がコンテンツ
- 糸井
-
『Miitomo』の継続性、
つまり「ずっとやっていくこと」については
どう考えていますか?
どんなおもしろいゲームでも、
ある時期集中して遊んだあとに、
「最近、ほったらかしだなぁ」
ということってあると思うんですけど。
- 坂本
-
個人的には、
たとえしばらく遊ばなくなっても、
思い出した時にのぞいてくれて
そのときにたのしめたら
いいんじゃないかと思ってます。
でも、いまは、
「日々どれだけ起動されているか」
ということが数字にも現れてきますので、
まずは毎日開いてもらうことを
目標にしないといけない、
というのはありますね。
そのためには、毎日、どれだけの
「楽しい」や「かわいい」を提案できるか。
それはシビアな部分だと思います。
- 糸井
-
ぼく、『Miitomo』がはじまったとき、
すごく積極的にやっていたんです。
で、これはぼく個人の問題かもしれないけれど、
毎日、遊んでいるうちに
「つくり手の気遣い」みたいなものが
ちょっと重くなってきたんですよ。
- 坂本
- ああ。
- 糸井
-
で、そのときに思ったことは、
「そんなに親切にしてくれなくていいのに」。
- 坂本
- うーん。
- 糸井
-
たとえば、行きつけのバーがあったとしますよね。
そこに行ったときに、
「今日、どうしてたの?」
とかママから絶えず聞かれたら
「ちょっと放っておいてくれよ」
と思うじゃないですか。
そのモードに入ってしまったんですね。
それで、少し距離ができちゃったんです。
これは、ゲームでは初めての体験でした。
つくりすぎていて重いのかな、っていう。
- 坂本
-
糸井さんのおっしゃることは理解できます。
同じような意見を耳にすることも
なくはないですね。
- 糸井
- まあ、人それぞれだと思いますが。
- 坂本
-
そこに共感する一方で、ぼくは、開発中に、
誰かのアンサーに対して
どんどんコメントで突っ込んでいく、
ということも趣味のようにやってたんです。
もう、仕事抜きで、そのために毎日さわっていた。
誰かが面白いこと言ってたら
ネタにしてやろう、という感じで。
- 糸井
-
うん、そういうモードでたのしむことは、
ぼくもあります。
- 坂本
-
だから、遊び方はひとつではないんですよね。
そして、感じ方にも個人差があると思います。
- 糸井
- そうですね。
- 坂本
-
それは、人それぞれだからしょうがない、
ということで割り切るのではなくて、
「どうしたらもっとみんなが、
気持ちよく『Miitomo』
本来の楽しさを味わえるようになるか」
ということを考えないといけないと思います。
- 糸井
-
ほんとうに、人それぞれだと思うんですよ。
たとえば「最近、失恋しましたか?」
と訊かれるのって、人によっては
「それ、訊かれたかったんだよね」
ってことかもしれないし、
「そんなこと訊くなよ」
という人もいるかもしれない。
みんな違うことを
同じプラットフォームでやっていくのは、
そうとう難しいことだと思う。
- 坂本
- そうですね。
- 糸井
-
『Miitomo』と同じ時期に
ぼくらがつくっていた『ドコノコ』というアプリは、
世界中の犬や猫の写真を出すものなんです。
で、『Miitomo』が出たときに、
つくりこむ量と質がはんぱじゃないと感じたんですよ。
一方、ぼくらがやっていることは
犬と猫の写真を出すだけで、
比較するとずいぶんらくにやってる気がする。
どうしてそういうらくができるかというと、
犬や猫の場合、写真自体がコンテンツなんですよ。
だから変な顔の猫は、明日見てもおもしろくて、
コンテンツの威力が落ちないんです。
ところが『Miitomo』は
絶えずお客さんと手を握り合っていないといけない。
そのカロリーはたいへんなものですよね。
逆に、カロリーがないことが
ぼくらの特徴だったのかもしれないと考えると、
なんというか、『ドコノコ』の今後を考えるときに
「もっとよくしよう」と考えすぎないほうが
いいのかもしれないなってことを思ったんです。
で、それと同じような視点から考えると、
『Miitomo』には『Miitomo』の
カロリー調整があるんじゃないかと。
- 坂本
-
カロリー調整。
それはけっこう、おもしろいところですね。
『ドコノコ』はぼくもちょっと
さわってみたんですけど、
根本に「感情」があるといいますか、
犬や猫を見ることで生まれる気持ちよさ、
みたいなものがあると思ったんです。
で、『Miitomo』では、
それを「Mii」に求めるべきなのかなと。
- 糸井
-
ああ、そういうことなのかもしれませんね。
それぞれの「Mii」が
もっとコンテンツになるというか‥‥。
そう言いながら、いま気づきましたけど、
ぼくは「自分がコンテンツでありたい」
という気持ちから、自分の「Mii」を
仮装させているのかもしれないです。
「そこにいるだけでおかしくなる」
っていうのが、やっぱり理想なんです。
- 坂本
- ぼくもそうですね。
- 糸井
-
そうですよね。
だって、かつて髪を
ドレッドにしてた人ですもんね。
- 坂本
- はい(笑)。
- 糸井
-
『どうぶつの森』で
ぼくが赤ん坊のかっこうをして
斧を振り回していたように、
『Miitomo』もひとりひとりのクリエイティブが
それぞれの「Mii」に加算されていったら、
もっと楽しくなるんじゃないでしょうか。
- 坂本
- そうなりたいですね。
- 糸井
- なったらいいですねぇ。
- 坂本
-
自分自身がコンテンツとして、
もっと魅力的になる方向に。
- 糸井
-
それは、人生に似てきますね。
やっぱり、
「お前が面白ければ、相手は会いたがるよ」
ということですもんね。
- 坂本
- そうですね。
- 糸井
-
ああ、おもしろいなあ。
それにつけても、岩田さんといまの状況を
語り合えたら楽しいでしょうねぇ。
- 坂本
- そうですね。
- 糸井
-
岩田さんが思い描いていたことが、
この中にはいっぱい込められているんでしょうから。
それができないのは‥‥癪ですねぇ。
- 坂本
-
はい、かなり(笑)。
『トモコレ』をつくるときには
かなりまめに岩田と話し合っていたんですが、
『Miitomo』については
体調もあったのかもしれませんが、
そこまで深い話ができなくて‥‥。
もっとお話を伺いたかったなぁと思います。
- 糸井
- うん。
- 坂本
-
あと、これからのこととしては、
ほぼ日さんと、なにか『Miitomo』を使った
おもしろいことができないか、
ぜひ相談したいと思っていました。
- 糸井
-
ああー、なにかできそうですね。
なんというか、
『Miitomo』というものを中心にして、
どうなるかわからないコミュニケーションを
たのしむ、みたいな遊びがいっしょにできたら、
おもしろいかもしれないですね。
- 坂本
-
はい。
ぼくらも「Mii」そのものの魅力を磨くと同時に、
ツールとしての『Miitomo』の可能性を
もっともっと追求していきたいと思ってるので。
- 糸井
- 可能性、ありますよね。
- 坂本
- はい。そのポテンシャルを探っていきたいです。
(坂本賀勇さんと糸井重里の対談は
これで終わりです。
最後までお読みいただき、
どうもありがとうございました。)
2016-07-07-THU