岡田 |
今回の『おひさま』では、
ヒロインの井上真央ちゃんの力とか、
キャスティングのバランスに
助けられていることが大きいですね。
陽子が「受ける側」でいてくれることで、
まわりの人も素敵に見えるし、
そういう意味では、脚本家としては、
ラクをさせてもらっていますね。
|
糸井 |
ラクですか‥‥
いやー、でも、ラクどころか、
たいへんなことやってるなぁと思いますけど。
こう、「今日はこんな回ね」って
流す日がないんだもん。
なのに、圧迫感がない。
|
|
|
岡田 |
あー、そうですか。
|
糸井 |
うん。
つぎつぎにいろんなごちそうが
毎日のドラマのなかに登場するんだけど、
そうなるとふつう、圧迫感あるんですよね。
あんまりアイディア乗っけすぎたりすると。
|
岡田 |
はい。
|
糸井 |
だけど、毎日15分、圧迫感がなくって、
でも、必ずアイディアがあるっていうか。
|
あやや |
ああー。
|
岡田 |
うーん、なんていうんですかね、
ここのところ、戦争中を描いてるんですけど、
朝のドラマなので、いわゆる戦闘シーンとか、
爆撃シーンみたいなものは、ないじゃないですか。
だから、基本、会話劇になる。
|
糸井 |
そうですね。
|
岡田 |
それもやっぱり、
俳優さんへの信頼感があればこそですよね。
|
糸井 |
ああー。
|
あやや |
ああー。
|
|
|
岡田 |
たとえば、いまだったら
お蕎麦屋さんの丸庵がメインになってる。
そのとき、台本上で何ページ書いても、
お蕎麦屋さんにいるわけですから、
ふつうはちょっと呼吸的に退屈するんです。
だから、極論すれば、そこは、
ワンシーンでもいいや、ってなるかもしれない。
でも、『おひさま』の俳優さんたちは、
たとえ15分のなかのちょっとした場面でも、
そのなかで、なんかやってくれるだろう、
っていう信頼があるので。
|
あやや |
ああーーー。 |
岡田 |
朝ドラというのは、放映時間帯的に、
視聴者がテレビの前に正座していないことを
前提にしているんですね。
洗濯をしてたり、食事の後片付けをしてたりして、
ずーっと画面を凝視しているような時間帯ではない。
ですから、どのドラマにもナレーションが入って、
基本、セリフだけでも、ドラマの内容が
ちゃんと伝わるようになっているんです。
|
あやや |
ああー、なるほどー。
|
糸井 |
うーん。
|
岡田 |
だから、まぁ、じつは今回の『おひさま』では
そうではないシーンもあるんですけど、
基本、ほんとにセリフでちゃんと伝えなきゃいけない。
たとえば、二人が黙って見つめ合ってるシーンを、
何度もくり返してはやれない、っていう感じは、
朝ドラには、伝統としてあると思います。
|
糸井 |
そうか、それだけ
脚本家の「ことばの仕事」になるわけですね。
|
|
|
岡田 |
そうですね。
ただ、やっぱり、セリフでしゃべらせるにしても、
なるべく説明臭くならないようにしたい。
そこは、たぶん、脚本家として、
けっこう問われるところなのかなって。
|
糸井 |
いや、ほんとそのバランスも、
うまいなぁと。
それはプロに言ってもしょうがないんだけど。
|
岡田 |
ありがとうございます(笑)。
|
あやや |
あの、必ず一回、なんか、
ひとつセリフの掛け合いがあったあとに、
最後に、ちょっと笑わせてくれるっていうか。
|
|
|
岡田 |
ああ、はい。
|
あやや |
たとえば、わたしがいちばん好きだったのが、
樋口さんの演じるお母さんが、
お見合いの申し込みに行くときに、
さんざん会話をしてて、
「最後になんか忘れてる」って言って、
「お父さんを忘れてきた」みたいな。
|
岡田 |
はい。
|
あやや |
ああいうのとかも、ぜんぶ、なんか、
会話で笑わせてくれるのが、
ふっと力を抜いてくれるというか、
あそこが、すっごい毎回たのしいですよね。
|
岡田 |
ありがとうございます。 |