ルディー |
糸井さんがおっしゃったように
性に関するいろんな欲望が薄れてるってことは、
ほんとに日本の消費社会、
消費にはものすごく影響があると思います。 |
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糸井 |
まったくそうだと思いますね。
なおかつ、いままで
生産が足りなかったときの、
性に対する見方っていうのが
過剰にケツを押すものだった。
つまり、ジンギスカンが羊を連れてって、
男の性欲を羊に代用させたとか、
日本軍が従軍慰安婦を連れて行ったとか、
ほんとに、そんなに「したい」ものなのか、
ほんとは、したいしたい言ってもなんとかなる。
つまり、死んじゃうわけじゃないのに、
したいって思わせて、
報酬系を刺激してたっていうふうに考えるのが
妥当だと思うんです。
つまり、権力が時間をつかさどってたり、
食料をつかさどってたのとおなじに、
性もつかさどって、与える材料にしてたんだと。 |
ルディー |
あ、それは絶対、それはもう、ほんとに、
男性は、
セックスに関係して
報酬系が活性化している状態だと、
戦争に出ても勇敢に戦うとか、
証券市場のトレーダーの人たちも、
セックスを思い出させる写真なんか見たあとだと、
リスクを取る率が高くなるという実験結果もあります。 |
糸井 |
はははは。 |
ルディー |
それはすごく単純だと思うんですよね。 |
糸井 |
単純ですね。 |
ルディー |
わたし、最近すごく思うのは
日本で草食系とかいろいろ言うんですけど、
男の人っていうのは基本的には、
いろんな意味で、危険(リスク)を冒すように脳が
プログラムされているのに
あまりにも小さいときから、型にはめて育てられて、
乱暴しちゃいけないとか、ケンカしちゃいけない
っていうふうになってる。 |
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糸井 |
昔から日本の男は、獰猛じゃないところで、
男の役割を果たしてきたんじゃないかな。 |
ルディー |
うーん? |
糸井 |
つまり、源氏物語なんかでも、
いちばん恵まれてる人たちのはずですけど、
でも、同時にあの時代っていうのは、
ほんとには恵まれてなかった。
つまり、GNPの低い時代の貴族ですよね。
泣いてばっかりいるわけですよ。 |
ルディー |
うん。 |
糸井 |
基本的には男っていうのも、
とっても女性的なんですね。
そのことが、悪いことじゃなく描かれてる。
古事記には須佐之男命(スサノオノミコト)が
出てくるけど、
あれ、たぶん、民族が混じっていくときの物語が
入ってるんだと思うんです。 |
ルディー |
うん。 |
糸井 |
だから、その歴史があって、
で、徐々に侍社会になって。 |
ルディー |
でも、文化が成熟するときって、
男性も女性化しますよね。
ヨーロッパなんかでも、
ルイ十何世とか、あのときって
やっぱり女性化してますね、すごく。 |
糸井 |
ああー、そうですね。
豊かになると女性化しますね。 |
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ルディー |
ええ、それは事実ですね。
というか、そうしてもらわないと、
困るんでしょうね。
豊かになると。 |
糸井 |
そこで奪い合いなんかしてると、
持ってる人の物が奪われますよね。
富める人が危うくなる。
そしたら、刀狩りですね。 |
ルディー |
そうですよね。 |
糸井 |
だから、性をなるべく女性化したり、
ホモジナイズさせたいっていうのは、
権力者の欲望でもありますね。
ああ、きょうはいっぺんに
前から考えてたこと言えて、うれしい。 |
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ルディー |
ああー、いや。わたしも同じです。 |
糸井 |
いま、性、性って言ってますけど、
金でおんなじ絵が描けるような気がしますね。
だって、セールスマンを元気づけるときにさ、
これだけ売上たら、
こんだけの報酬があるぞっていうのと、
きれいなネエちゃんが抱けるぞ
っていうのと、
まったくおなじ回路ですよね。 |
ルディー |
そうです。
おなじ回路です。 |
糸井 |
報酬の中に、女性って入ってた
大昔がありましたもんね。 |
ルディー |
ありました。 |
糸井 |
というか、ついこのあいだまでですよ。
まだ、そんな時間経ってないんですよ。 |
ルディー |
はい。これ日本のことだけじゃなくて、
世界的に思うんですけど、すごく無理してる。
やっぱり、もともと、まだまだ、
ほんとに脳の仕組みは昔のままなのに、
こうしちゃいけない、ああしちゃいけない、
っていうことがいま、
もう、いっぱい決まりがあって、
それがしていかなかったら社会生活送れないし、
市民としても、立派な市民にはなれないので、
ものすごく制約が多いですよね。 |
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糸井 |
うんうん。
その中に、清潔っていうのも入ってますよね。 |
ルディー |
入ってますね。 |
糸井 |
清潔じゃないと人に選ばれませんよ、という、
病気になって死にますよという。 |
ルディー |
たてまえがとっても多すぎて、
やっぱり、先進国に住んでる人間っていうのは、
毎日ストレス溜るのあたり前だと思いますよね。 |
糸井 |
そうですねぇ。
なにで解消してるんだろう。 |
ルディー |
してないんじゃないですか。
だから病気になっちゃう。 |
糸井 |
そうですね。
病みますよね。 |
ルディー |
精神的な病もありますし。 |
糸井 |
ああー。
第一次産業が中心の社会から
第二次産業に移行するときに、
公害って形で病気が現れて、
つまり、工業社会になるときの仕組みで、
で、第二次産業から第三次産業に移行するときに、
精神の病が現れたのかもしれないですね。
で、第三次産業がさらに
観念的な第三次産業になるときの病気っていうのは、
これは、さっきの
お金が観念になった話じゃないですけど、
わからないよ! っていうところで、
生かされてる病気になってるんでしょうね。
きっとね。
自分がそうだもん。 |
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ルディー |
うん。 |
糸井 |
そんだけの分量の情報、
どうしたって処理できないよ、
っていうことを思いますもん。
やっぱり。
だから、なんとかこう、
下げようよっていうか、
こういう本を薦めたくなるんですね、きっと。 |
ルディー |
ありがとうございます。
そう言っていただいて。 |
糸井 |
ルディーさん自身も根っこにあるのは、
「ルールを原始的にしない?」
ってことでしょ、もっと。 |
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ルディー |
そうですね。 |
糸井 |
「わかるようにしない?」
ってことかな。 |
ルディー |
少なくとも
自分たちはすごく理性的な生き物であるとは
思わないほうがいい、と思ってます。 |
糸井 |
うんうんうん。 |
ルディー |
実際には、無意識の世界がけっこうあって、
理性的に考えてるつもりだけど、
理性的じゃないってことをいつも知ってる、
自覚してるべきだと思いますよね。 |
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糸井 |
そうですね。
人もそうだし、自分もそうだ、
ってことですよね。
その中で、被害がお互いに及ばないように
っていうところに
ルールってものが生まれるだけで。
ルールが先にありきじゃなくてね。 |
ルディー |
はい。 |
糸井 |
いちばんここまで論証とか、
そんなに、要求されずに
いっぱいしゃべれて、すごくうれしいな。
(つづきます) |