ルールを原始的に。 ルディー和子さんと、お金と性と消費の話。
 
第9回 ルールを原始的にしない?
ルディー 糸井さんがおっしゃったように
性に関するいろんな欲望が薄れてるってことは、
ほんとに日本の消費社会、
消費にはものすごく影響があると思います。
糸井 まったくそうだと思いますね。
なおかつ、いままで
生産が足りなかったときの、
性に対する見方っていうのが
過剰にケツを押すものだった。
つまり、ジンギスカンが羊を連れてって、
男の性欲を羊に代用させたとか、
日本軍が従軍慰安婦を連れて行ったとか、
ほんとに、そんなに「したい」ものなのか、
ほんとは、したいしたい言ってもなんとかなる。
つまり、死んじゃうわけじゃないのに、
したいって思わせて、
報酬系を刺激してたっていうふうに考えるのが
妥当だと思うんです。
つまり、権力が時間をつかさどってたり、
食料をつかさどってたのとおなじに、
性もつかさどって、与える材料にしてたんだと。
ルディー あ、それは絶対、それはもう、ほんとに、
男性は、
セックスに関係して
報酬系が活性化している状態だと、
戦争に出ても勇敢に戦うとか、
証券市場のトレーダーの人たちも、
セックスを思い出させる写真なんか見たあとだと、
リスクを取る率が高くなるという実験結果もあります。
糸井 はははは。
ルディー それはすごく単純だと思うんですよね。
糸井 単純ですね。
ルディー わたし、最近すごく思うのは
日本で草食系とかいろいろ言うんですけど、
男の人っていうのは基本的には、
いろんな意味で、危険(リスク)を冒すように脳が
プログラムされているのに
あまりにも小さいときから、型にはめて育てられて、
乱暴しちゃいけないとか、ケンカしちゃいけない
っていうふうになってる。
糸井 昔から日本の男は、獰猛じゃないところで、
男の役割を果たしてきたんじゃないかな。
ルディー うーん?
糸井 つまり、源氏物語なんかでも、
いちばん恵まれてる人たちのはずですけど、
でも、同時にあの時代っていうのは、
ほんとには恵まれてなかった。
つまり、GNPの低い時代の貴族ですよね。
泣いてばっかりいるわけですよ。
ルディー うん。
糸井 基本的には男っていうのも、
とっても女性的なんですね。
そのことが、悪いことじゃなく描かれてる。
古事記には須佐之男命(スサノオノミコト)が
出てくるけど、
あれ、たぶん、民族が混じっていくときの物語が
入ってるんだと思うんです。
ルディー うん。
糸井 だから、その歴史があって、
で、徐々に侍社会になって。
ルディー でも、文化が成熟するときって、
男性も女性化しますよね。
ヨーロッパなんかでも、
ルイ十何世とか、あのときって
やっぱり女性化してますね、すごく。
糸井 ああー、そうですね。
豊かになると女性化しますね。
ルディー ええ、それは事実ですね。
というか、そうしてもらわないと、
困るんでしょうね。
豊かになると。
糸井 そこで奪い合いなんかしてると、
持ってる人の物が奪われますよね。
富める人が危うくなる。
そしたら、刀狩りですね。
ルディー そうですよね。
糸井 だから、性をなるべく女性化したり、
ホモジナイズさせたいっていうのは、
権力者の欲望でもありますね。
ああ、きょうはいっぺんに
前から考えてたこと言えて、うれしい。
ルディー ああー、いや。わたしも同じです。
糸井 いま、性、性って言ってますけど、
金でおんなじ絵が描けるような気がしますね。
だって、セールスマンを元気づけるときにさ、
これだけ売上たら、
こんだけの報酬があるぞっていうのと、
きれいなネエちゃんが抱けるぞ
っていうのと、
まったくおなじ回路ですよね。
ルディー そうです。
おなじ回路です。
糸井 報酬の中に、女性って入ってた
大昔がありましたもんね。
ルディー ありました。
糸井 というか、ついこのあいだまでですよ。
まだ、そんな時間経ってないんですよ。
ルディー はい。これ日本のことだけじゃなくて、
世界的に思うんですけど、すごく無理してる。
やっぱり、もともと、まだまだ、
ほんとに脳の仕組みは昔のままなのに、
こうしちゃいけない、ああしちゃいけない、
っていうことがいま、
もう、いっぱい決まりがあって、
それがしていかなかったら社会生活送れないし、
市民としても、立派な市民にはなれないので、
ものすごく制約が多いですよね。
糸井 うんうん。
その中に、清潔っていうのも入ってますよね。
ルディー 入ってますね。
糸井 清潔じゃないと人に選ばれませんよ、という、
病気になって死にますよという。
ルディー たてまえがとっても多すぎて、
やっぱり、先進国に住んでる人間っていうのは、
毎日ストレス溜るのあたり前だと思いますよね。
糸井 そうですねぇ。
なにで解消してるんだろう。
ルディー してないんじゃないですか。
だから病気になっちゃう。
糸井 そうですね。
病みますよね。
ルディー 精神的な病もありますし。
糸井 ああー。
第一次産業が中心の社会から
第二次産業に移行するときに、
公害って形で病気が現れて、
つまり、工業社会になるときの仕組みで、
で、第二次産業から第三次産業に移行するときに、
精神の病が現れたのかもしれないですね。
で、第三次産業がさらに
観念的な第三次産業になるときの病気っていうのは、
これは、さっきの
お金が観念になった話じゃないですけど、
わからないよ! っていうところで、
生かされてる病気になってるんでしょうね。
きっとね。
自分がそうだもん。
ルディー うん。
糸井 そんだけの分量の情報、
どうしたって処理できないよ、
っていうことを思いますもん。
やっぱり。
だから、なんとかこう、
下げようよっていうか、
こういう本を薦めたくなるんですね、きっと。
ルディー ありがとうございます。
そう言っていただいて。
糸井 ルディーさん自身も根っこにあるのは、
「ルールを原始的にしない?」
ってことでしょ、もっと。
ルディー そうですね。
糸井 「わかるようにしない?」
ってことかな。
ルディー 少なくとも
自分たちはすごく理性的な生き物であるとは
思わないほうがいい、と思ってます。
糸井 うんうんうん。
ルディー 実際には、無意識の世界がけっこうあって、
理性的に考えてるつもりだけど、
理性的じゃないってことをいつも知ってる、
自覚してるべきだと思いますよね。
糸井 そうですね。
人もそうだし、自分もそうだ、
ってことですよね。
その中で、被害がお互いに及ばないように
っていうところに
ルールってものが生まれるだけで。
ルールが先にありきじゃなくてね。
ルディー はい。
糸井 いちばんここまで論証とか、
そんなに、要求されずに
いっぱいしゃべれて、すごくうれしいな。

(つづきます)
2010-07-22-THU
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