ルールを原始的に。 ルディー和子さんと、お金と性と消費の話。
 
第10回 老後は不安か、日本は不安か。
糸井 個人として、さっき、浪費というか
消費が好きだっておっしゃいましたけれど、
それは、小さいときからですか。
ルディー そうですね。
糸井 なんだろう、それ(笑)。
親?
ルディー 親は名古屋の人間ですから、
どっちかっていうと、
貯めることで報酬系が
活性化するほうです。
糸井 貯めて爆発させますよね。
嫁入り道具の見せびらかしっこ、
とかすごいんでしょ。
ルディー わたしは名古屋市内だったんで、
知ってる友人ではいなかったんですけど、
尾張とか三河は。
名古屋は基本的には貯める、ケチ。
その反動ですね、やっぱり(笑)。
糸井 いやだったんですかね。
ルディー ええ、いやだったんです、きっと。
糸井 消費のエピソードとかありますか。
ルディー 一応ですね、理性はけっこう、
少しは残ってるので、
やっぱりこれ以上使っちゃいけない、
っていうところはあるのと、
それからやっぱり、なんていうか、
そんな大きなお金使いませんから。
宝石買ったりとか、
そんなの絶対しませんから、
ですから、まぁ、なんとか。
糸井 ちょうどいいですね。
つまり「使わなくて何になるの?」
っていうぐらいのことですね。
ルディー そうですね。
あと、何年生きられるかわかんないのに、
使わなきゃ損ってぐらいの感じです。
でも、ときたま、なんか、
貯金通帳見て、ええ、大丈夫か?
って思ってますけど(笑)。
糸井 そんなふうなこと考えてる人に、
けっこう、まとまったお金で、
何かこう、
まるっきり悪いわけじゃない話だけどなぁ、
みたいなお金の誘惑が来たとき、
自分はどう振舞うと想像します?
ルディー 自分が遊んでいるうちに、
お金がお金を生むっていうことは
絶対におかしいと思ってるので。
もちろん、ある程度の利子、
金利が付くっていうのはいいんですけど、
そんなうまい話は絶対に乗りませんから。
それはやっぱり、いけないと思ってるので。
糸井 はぁー、なるほど。
それはモラルという以上のものですね。
なんか、理論に近いですね。
自分を生かすための。
ルディー そうですね。
糸井 他の対談でも、ぼくしゃべってるんだけど、
ぼくは自分に対してそういうのが、
何で確かめていいかわからないって気持ちがあって。
考えてきたことなかっただけに、
オレは何で転ぶんだろう、
ってことについて、いつも考える人間なんですね。
ルディー ああ、はぁはぁ。
糸井 女で転ぶかもしれないってことについては、
あ、このくらいで転ぶな、
っていうのが、わかってるんですよ。
だから、逆に言うと対処できるというか。
転んでもいいと思ったら、転べばいいんで、
でもお金については、考えようがないんですね。
それで、ちゃんと理性があって、
お金を持っちゃった人に訊いたら、
「それはもう若いときから決まってるんだよ」
って言われたんですよ。
ルディー うん。
糸井 「ぼくは大丈夫ですかね」って言ったら、
「糸井さん、全然大丈夫だよ」って。
「何で見分けるんですか」って訊いたの。
ルディー うーん。
糸井 そしたら「うーん、それは、わかるよ」って言われて、
おしまいにされちゃったんだけど、
その人は、それこそ、
イデオロギー的に左の人たちとかも
付き合いがあって、その人たちに
けっこう黙って寄付とかもしてきた人なんですよ。
ルディー ああー。
うんうん。
糸井 それが「ひどいもんだよ」って言うんです。
人は、普段言ってることと
まったくちがう動きをする、
っていうことを、いっぱい知ってるんですよ。
で、ぼくは欲しがらないつもりもないし、
欲しいし、いっぱいあれば
あったほうがいいと思うし。
「だけど、なんか、不安なんですよね」って言ったら
「転ばない、転ばない」って言われたんですよ。
何よそれは、っていうのは、
わかんないんですよね。
いまのルディーさんのは、だから、
自分を守る理論でもありますよね。
ルディー そうですね。
でも、不安って言えば、
いつも不安ですよ、やっぱり。
糸井 なくなっちゃう不安?
ルディー 100歳まで生きちゃったら
どうしようって思う(笑)。
糸井 100歳、無理ですよね。
ただ、例で言うと、
ぼくの産みの母っていうのは88とか、89とか、
このあいだ亡くなったんですけど、
仕事なんかとっくに辞めて、
寡婦として生きてきた。
でも年金だけで、
しょっちゅう海外旅行とかして、楽しそうに生きて、
しかも、ちゃんとそんなに大きくない財産を、
ぼくは、もらえる権利を
放棄するって書類を作ったくらいに、
ちゃんと残して、
葬式代もかけずに死にました。
ルディー うん。
すばらしいですね。
糸井 だから、年金ってすごいですね。
ルディー うん。
糸井 破綻する、破綻するって言われてますけど、
いちばんあれ、絶対、
なんとかすると思うんですよね。
だから、けっこうね、100歳、
心配ないかも。
ルディー うーん。
糸井 国がやることだから、
信用できないって言い方もあるんだけど、
でもね、ほんとに飢え死にするような人が
バタバタ現れるってことはないですよね。
ルディー そうですね。
糸井 そう考えるとね、
心配しなくていいんじゃないかって、
いちばんいま、なんかね、
理論的に言いたくてしょうがないんですよ。
ルディー 心配ない、老後のことはと。
糸井 心配されることで、
こう、せっかく楽しい時間を。
ルディー それを結局ね、なんて言いますか、
人間に、市民に説得するのは、
やっぱり、政治家の役目ですよ。
糸井 そうですね。
おばあちゃん心配なくね、
って言ってやったときに、
「そうか」って言わせないとダメなんですよね。
ルディー 不安な人間は消費なんかしないので。
やっぱり、それは、ちゃんと
政治家がきちんと、国の借金は、
これだけあるけども、
これで、こうだから、大丈夫だと。
糸井 だって、ものすごく単純に言ってさ、
農業人口がこれだけ減ってね、
兼業農家がもうほとんどになっちゃって、
専業農家なんかいるかいないか
わかんない数字になって、
で、食料自給率が40%だって、
あれも、数字の取り方ですから、
食えるだけ足りてるのに、
心配だって言わせるわけじゃないですか。
ルディー うん。
糸井 もうそこでウソですよね。
心配だって言わせたことでの
利権っていうので生きてる人の数が
無闇にいるってことだと思うんですよ。
だから、たぶん、
心配メディアっていうのが食ってる。
ルディー 心配メディア。
なるほど。
糸井 そいつらを食わせるために
みんなを心配させてるっていうふうに思うと、
その人たち用の仕事を作って、
消費のほうで、そこに人を割り当てたいって、
ぼくは思ってる。
‥‥なかなか、大反対されるでしょうね。
心配メディアのほうが強いですからね。
ルディー 心配メディアね。
ほんとですよね。
糸井 あんな心配ばっかりさせて。
ルディー うん、ほんとですよね。
日本なんて、いまのところ
他の国よりもいいはずなのに、
不安だっていう人がすごく数が多いので、
これは、やっぱり、ほんとにおかしいですよね。
糸井 おかしいよね。
ずっとここより低いところで、
平気で生きてるんですもんね。

(つづきます)
2010-07-23-FRI
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