なぜ、そうまでして歌うのか。



── 奥野さんの本やブログを読んで思うのは
「仲間って、すごいな」ということなんです。
奥野 みんなには、ほんと感謝してるよ。
── 勝村政信さん、松尾貴史さん、金山一彦さん、
BUCK-TICKのユータさん、
原田喧太さん、
亡くなった川村カオリさんに原田芳雄さん‥‥。
奥野 バンドつながりで高校時代から仲が良かった
地元の友だちも、すごく助けてくれてる。
── すごく結束力が強いなと思います。
奥野 しょっちゅう遊びに来てくれるしね。
── 勝村さんや松尾さん、ユータさん、
原田喧太さん、川村カオリさんなんかとは
「ポークソテーズ」という‥‥。
奥野 あったねぇ(笑)。
── 幻のバンドも結成されていて。
奥野 ははは、いい大人の悪ふざけだよね。
── それにしちゃあ、ものすごい豪華メンバーです。
奥野 他にもヒロミチ・ナカノの中野裕通さんが入ったり、
金山(一彦さん)と
ミッチョン(芳本美代子さん)夫妻が入ったり。
── それだけ豪華なメンバーをそろえて
赤坂の草月ホールで単独ライブもやっていて
1996年には
「ハンバーグの作り方」という曲が
NHK「みんなのうた」でオンエアまでされたのに
どこにも音源が残っていないという
まさに幻のバンド‥‥。
奥野 そんなナゾめいた言いかたしなくても(笑)。
── あとから知った者にとっては、すごいナゾです。

NHK「みんなのうた」のサイトに
再放送希望のリクエストページがあるんですが
「ハンバーグの作り方」が
そこに、きちんと載っているんですよね‥‥。
奥野 ほんと? こんどリクエストしてみようかな。
── ボーカリストみずから(笑)。
奥野 でも、おもしろかったよ。みんなバカでさ。
── そもそも、どういう集まりなんですか?
奥野 もともとは、芳雄さんちで遊んでた仲間。
── 原田芳雄さんの、おうちで。
奥野 基本的には飲み友だちだからさ、
数が多くなって、どこにも入れなくなると
芳雄さんところへ押しかけるの。

ほんと、いい迷惑なんだろうけど
ホラ、芳雄さんって「太っ腹」だから、人間が。
── そうなんですか。
奥野 友だちは家族と同じだって考えの人なんだ。
── 映画で観る原田芳雄さんって
ちょっと、怖そうなイメージなんですけど‥‥。
奥野 怖くない、怖くない。ぜんぜん怖くない。

強面の役が多いから
そういうふうに見えちゃうのかもしれないけど
本当はめっちゃくちゃ、やさしい人。
── そうなんですか。
奥野 勝村んとこの子どもとか、
キッチュ(松尾貴史さん)んとこの子どもとか、
みーんな、面倒を見てもらってるしね。
── へぇー‥‥。
奥野 夏になると、庭にさ子ども用のプールを
つくってくれるんだ。
── 原田さんが。
奥野 それも、空気を入れて膨らますやつじゃなくて、
大人も遊べるくらいの
ほんとにデカイ、
外国から輸入したみたいなシロモノで。
── すごそうですね‥‥。
奥野 8畳くらいあるんだよ。
── 学生時代のアパートは「5畳」でした。
奥野 じゃあ、芳雄さんちの
プールのほうが、ぜんぜん広いね(笑)。
── なにしろ「輸入モノ」ですもんね。
奥野 そうだね(笑)。
── あの「この素晴らしき世界」の動画を観た
原田さんが
「オッキーは、今のほうが、いい声が出る。
 だから、
 これからのほうが、絶対いい歌が歌える」
とおっしゃっていたって、聞きました。
奥野 本当にやさしい人だったから、あの人は。
── お見舞いにも?
奥野 来てくれたよ。自分だってガンなのに。
── 残念ながら昨年、お亡くなりになりました。
奥野 うん、最近は悲しいことが続いたんだよね。
カオリもガンで、数年前に。
── はい。
奥野 レコード会社がいっしょだったんだ、カオリとは。
── それで、仲良しになったんですか。
奥野 当時のあいつは、ほんとにつっぱっててさ
「前座のカオリと言います」とかっつって。
── 似たような話を
勝村さんからもお聞きしたことあります(笑)。
奥野 家が近所だったりもしたから
あいつの子どもを、うちで預かったりして。
── へぇー‥‥。
奥野 で、あいつの子どもの
運動会のムービーを編集してやってるときに
さらっと「私、余命半年なんだ」って。
── ‥‥そうなんですか。
奥野 それなのに、俺が怪我をしたときは
すぐに駆けつけてくれて
「オッキー、だいじょうぶだよ」って
元気づけてくれたんだ。

自分だって、たいへんなのにね。
── 奥野さんにとって
仲間や友だちって、どういうものですか?
奥野 やっぱり「いちばん大事なもの」だよ。
── そうですか。
奥野 勝村、ユータ、喧太、金山、キッチュ、
芳雄さんやカオリ、
ROGUEのメンバーや
バンドやってたころの友だち、地元の友だち‥‥
みんなに支えられてる。
── はい。
奥野 だから、音楽もやっぱりバンドが好きなんだ。

仲間と一緒に音を出すっていうのは
ものすごく楽しいし、
何というか‥‥とても「特別」なことだから。
── あそこに飾ってあるお写真は‥‥。
奥野 あれはね、仏壇。
── そうでしたか。
奥野 芳雄さんにカオリ、
あとは、俺の飼い犬の「さゆり」の子で
ロクスケって犬。

死んじゃったんだ、こないだ。
── 帽子の男性が‥‥。
奥野 親父。
── みんな、奥野さんを見てるんですね。
奥野 だから、俺ももっとがんばらないと。
歌をつくりたいなと思ってるから、今年は。
── わ、ほんとですか。
奥野 詞はちょこちょこ書いてるんだけど
曲はまだ、頭のなかで鳴らしているだけで
かたちにしてないからさ。
── じゃあ、歌うんですね、その歌を。
奥野 歌うよ、かならず。で、ライブをやりたい。
── おお、行きたい。
奥野 こんな身体だけど、絶対やれると思ってる。

なぜかって言うと、
ライブでは「かならず限界を超えられる」から。
── へぇー‥‥かならず、ですか。
奥野 うん、かならず。

歌って、お客さんもふくめた「仲間たち」が
俺に「歌わせてくれるもの」だから。
── なるほど、だから‥‥。
奥野 限界を超えられる。かならず。



<終わります>




 




とあるチャリティ・コンサートに
出演したときのことを、今でも思い出します。
会場が天王洲の銀河劇場だったんですが、
楽屋に入ると、テーブルのワインクーラーに
ドンペリが突っ込んであったんです。
で、「楽屋見舞」と書かれているんですね。
誰からだか知らないけどすごい、
俺たちの悪ふざけもここまできたのかと、
盛り上がっちゃって
「シュポーーーーーーン!」って栓をあけて
みんな飲んじゃったんです。
で、空っぽにしたあとによく見てみたら
「鳩山由紀夫さん江」って書いてあるんですよ。
「えっ!」「なんで!」って大騒ぎして調べたら、
なぜか楽屋が
鳩山由紀夫さんや羽田孜さんと相部屋だった。
もちろん、何事もなかったように、やり過ごしました。
肝心のステージでは
髪の毛をソフトクリームみたいにした
林真理子さんが
「アベマリア」を歌い上げた直後、
ぼくらは、ポークソテーズの代表曲である
「ハンバーグの作り方」を
「ヘーイ! イェーイ! ウォー!」とか
大声を張り上げて、ドタバタやってね。
終わったあとに
「ちょっとふざけ過ぎたかな。
 なんか、お客さんついて来てなかったよね」
と反省してたら
ぼくの隣にいたおじさんが
「いやー、なかなか愉快でしたよ。
 楽しかったです」って言ってくれたんです。
それがうれしくてね、
「またぁ、調子いいなあ!」と肩をバーンと叩いたり。
そのとき、ステージ上で司会の三枝成彰さんが
「それでは、ご登場いただきましょう。
 高円宮殿下です」って言ったんです。
そしたら、ぼくのとなりのおじさんが
ステージに出て行かれたんです。
「うわ、いまの殿下だったよ!」
いや、とても、いい方でした。
あのころが
ポークソテーズ栄光の時代だったと思います。



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2013-03-15-FRI

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