
- NHK_PRさん
- チェアスキーは
最新技術が詰まった、まさにスーパーマシンっ!
西本さんみたいに
スポーツが好きでギアも好きな、マニアのひとは、
きっと佇まいだけでも楽しめますよ。
こちらの映像をごらんください。
- 西本
- うーむ、このかっこよさ!
バイクなどにつかわれるサスペンションが
ついていることにまず驚きです。
これはぼくも乗ってみたいマシンですね‥‥。
- 大日方さん
- いまではどのチェアスキーにも
サスペンションがついてますが
最初にサスペンションを使いはじめたのは
わたしたちの長野モデルからです。
日本選手が活躍するようになってから、
注目をあびて、
今やどの国のチェアスキーでも
採用されるようになりました。
- 西本
- すごい!
- 大日方さん
- 昔は「日本のチェアスキーなんて」と
アルペン大国オーストリアの選手からは
鼻で笑われていたんです。
わたしたちもオーストリアのチェアを4台、
個人輸入して分解し、
他の選手と共同研究をしました。
そして、
「やっぱりわたしたちのチェアスキーのほうが
優れてるぞ!」
と、自信をもって本番に望みました。
- 西本
- 4台も? あの‥‥そういうのって、
全部自腹なんですか?
- 大日方さん
- 選手の活動費の大半は自腹です。
現物提供や技術提供をしてもらう部分もありますが、
たとえば新しいチェアスキーのフレームを
メーカーのNISSIN(日進医療器株式会社)から
毎年1台いただいたとしても、
そこからパーツを足していったり、
カーボン製のシートを自分の形にあわせて
成形していったりする必要があるので、
そこにも大変なお金がかかります。
チェアスキーも転倒すると
フレームに歪みやクラックが入るので、
一台だけというわけにはいかないですしね‥‥。
- NHK_PRさん
- 当時はそれをNHKのお給料だけで…?
- 大日方さん
- ええ、もちろんです。
どれくらい大変かは
NHK_PRさんもだいたい察しがつくでしょう(笑)?
これまでの選手生活の中で、
わたしはチェアスキーに
どれくらいお金をかけたんだろう?
と思って、計算してみたんですが、
怖くなって途中で辞めました。
- NHK_PRさん
- もしかして外車が買えちゃったりして(笑)。
- 西本
- チェアスキーの開発において
「ここだけは守ってください」
というレギュレーションのようなものはあるんですか?
- 大日方さん
- 実質的にはほとんどありません。
だれもがそりゃそうだと
思うようなことだけが決め事ですね。
例えば「発射装置はつけない」とか(笑)。
- NHK_PRさん
- もちろんジェットエンジンも不可!
- 大日方さん
- それはダメ(笑)。
「転んだときにブレーキングになるようなものを
チェアスキーにつけてください」
というのは、あります。
- 西本
- 転倒しても、
滑り落ちていかないように?
- 大日方さん
- そうです。
そもそも素材が滑りやすいカーボンでしょう、
けっこう難しいんですよ。
ですので、突起のあるビスなどをつけたりします。
そうすると、コースネットに
ビスがひっかかってくれる。
空力抵抗のことを考えると、
本当はツルツルにしたいんですけどね。
- NHK_PRさん
- 私、チェアスキーの技術開発って、
なんとなくF1やMotoGPに
似ているのかなあって思うんです。
F1も運転する人と技術の人が一緒になって
より速い車を生み出していくんだって
聞いたことがありますから。
- 大日方さん
- サスペンションのバネひとつとっても
何十種類も作ってもらい、
そのバネの挙動を全て選手が現場でチェックして、
そのフィードバックをうけて、
チェアスキーメーカーである
NISSINが組み上げていくんです。
選手のわがままなオーダーはハンパないですからね。
選手の感覚を技術にフィードバックしていくやりとりは
たしかにF1などと似ているかもしれません。
今の選手たちは雪上でサスペンションから
全て自分で素手でバラして組み上げるんです。
通常の技術者が根をあげるような作業も、
選手自らがやります。
- 西本
- 雪上だとネジがとんでもなく
冷たくなっているんじゃないですか?
- 大日方さん
- ええ。でも手袋をしてるとネジは回せませんし、
自分の感覚が知りたいし、追求していきたいから、
どんなに寒くても
雪の上で素手でチェアスキーをバラして
いろいろ試してます。
わたしにはあそこまでできないな。
- NHK_PRさん
- もともとチェアスキーって
椅子にスキー板を2本つけたものだったんです。
さきほどの映像にはありませんでしたけど、
今でも板が2本の選手がいるんですよね。
- 大日方さん
- それはフランスですね。
フランスチームの人たちは
「スキーは2本の方が速い!」って
かたくなに言い切ってて(笑)。
チェアスキーって
「モノスキー」言うんですよ。
「モノ=1本」でしょ。
だから、レギュレーションを決めるときに
「スキーは1本で」となりそうになったんですが、
フランスチームから
「うちはどうなるんだ!」と強いクレームが(笑)。
- NHK_PRさん
- 我がフランスは2刀流でござる!と(笑)。
- 大日方さん
- 彼らは板2本のチェアスキー開発を続けています。
そんなふうに各国の──国というよりは、
その集団が、と言ったほうがいいかもしれませんが、
技術者たちの熱い闘いがあります。
カナダの開発チームは大学なんですが、
「スキーといえば、ダウンヒルだろ?」
というお国柄だから、
彼らのチェアはとにかくスピード命(笑)。
- 西本
- カナダは技術系というよりは
高速系に強い国なんですね。
ダウンヒルでの最高速を競ってるのかな。
- 大日方さん
- でも速いだけではダメ。
そもそも曲がれないと
ゴールできないですからねー(笑)。
- 西本
- なるほど。
それぞれの国のモノづくりの技術者魂も
見どころのひとつなんですね。
F1の、ルノーとホンダの闘いのようだなあ。
- 大日方さん
- 2本スキー対1本スキーの対決よね(笑)。
今やNISSINのチェアスキーが
世界を席巻しつつあります。
世界の標準になりつつあるとも言える。
今回、ソチのトップ15に入ってくる選手の
10~12人くらいはNISSINのチェアスキーでしょうね。
「わが母国のチェアスキーじゃないと!」
と、頑固に言い続けてきた
オーストリアの選手もついに乗り始めたし。
- 西本
- うわーっ。ホントにF1でホンダが
出てきたときのようだ。
- 大日方さん
- きっかけは森井大輝選手がオーストリアの選手を
日本のチェアスキーに乗せたことからはじまったんです。
わたしたち選手としては
NISSINのモデルを普及させたい。
いいモデルだし、
世界に広めることによって技術革新がおこるわけです。
自分たちで技術を抱え込みたいんじゃなくて、
これを世界に広めて世界標準にしたかった。
だから、まずは海外で仲良くなった選手から
「NISSINに乗せちゃえ!」って。
まずオーストリアの若い
「ロマン」って選手を誘ったんですね。
実際、乗ってみると
「NISSINすごいじゃないか!」って。
しかも成績も良くなるわけですよ。
その若手のロマンの活躍を見た
オーストリアのベテラン選手たちも、
「あのNISSINのチェアいいな‥‥」
ってことになって(笑)。
ワールドカップでNISSINのチェアスキーに乗り、大活躍するロマン選手
- NHK_PRさん
- オーストリアの選手が
NISSINのお店に駆け込んだらしいですよ。
- 大日方さん
- 面白いのはオーストリア、オランダ、アメリカ。
さまざまな国の選手が乗り始めると
「ここ、改良すればもっとよくなるよ」
と、日本の選手が考えつかなかったような
アイデアや設定のフィードバックが
つぎつぎと生まれてくるんです。
同じNISSINのチェアスキーなのに、
全然違う動きをしてる。聞きに行くと、
ちゃんと教えてくれるんですよ。
向こうにしても「借り」がありますから(笑)。
去年、ソチパラリンピックと同じコースを
プレ大会で滑った選手たちは
「このセッティングだと勝てないぞ」
と思ったらしく、
海外の選手のアイデアを取り入れながら
1年かけてトリノモデルをさらに熟成させた
ソチ仕様のセッティングをつめてきましたよ。
- 西本
- それはすごく面白い話じゃないですか!
NHKさん、今の話をドキュメンタリーにしてくださいよ。
- NHK_PRさん
- もちろん検討します!
(つづきます!)
2014-03-12-WED


開会式
3月8日 総合午前1時10分~4時まで
冬のパラリンピックで初めて開会式を生中継。
30分のダイジェスト番組
その日の競技ダイジェストを毎日放送。総合テレビでは15時台から16時台の中で
(放送開始時間が日によってかわります。)Eテレでは午後8時から。日本人選手の活躍はここでチェック。
それぞれの番組詳細はNHKソチパラリンピック特設サイトをごらんください。

3月8日からスカパー!では24時間パラリンピック専門チャンネルを開設。
生中継60時間を含む、200時間以上の放送を予定。
スカパー!に加入すると無料放送でお楽しみいただけます。
詳しい視聴方法やなどはスカパー!ソチパラリンピック特設サイトをごらんください。

速報や競技動画はソチパラリンピック公式サイトに次々とアップされる予定。
各競技動画は【videos】もしくはYoutube Paralympic チャンネルをチェック!