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大変ご無沙汰をしてしまった。
どうも、人間というものは、
ついついのんびりするように出来ていると思われる。
さ、巻いていくぞ。
と、その前に、「さよならペンギン」は
もちろんすでに販売中であることは
お伝えしておこうと思う。
絶賛発売中である。
店頭で手にとってということなら、
こちらの書店で取り扱いがある。
また、「ほぼ日ストア」で通信販売もしているので、
ぜひ、ページをご覧いただければとおもう。
ページデザインは、大の湯村ファンの廣瀬がした。
微妙にこう、なんというか、インターネット的に
古めかしいような仕組みで作ってあるが、
今の若者には珍しいんじゃないかな、というような
おっさんのようなコメントをつらつらしている場合じゃないぞ。
先に進む。
最初の出版から、30年あまりという年月は、
絵本の紙を経年変化させていた。
つまり、いま当時の絵本をみても、
色は当時のままではないということだ。
もちろん、スキャンは一番状態のいい絵本でしているが、
それでも、色は劣化しているのだ。
色にかんしてちゃんと話ができるのは、
この劣化した色味を除去してからなのだ。
さて、それは誰が?
といえば、経験がある凸版印刷の藤井さんしか居ない、
ということで、びよよよよんっと白羽の矢がささり、
炎の赤字をいれたのであった。
これが、前回までのおさらいである。
まず、その炎っぷりをご覧いただこうか。 |
▲指示しまくりである。 |
▲ゴミとりまくりである。 |
そうそう、色味の調整とともに、もうひとつ、
当時の印刷のノイズもこの機会に除去する必要がある。
スキャンして出てきた校正紙にある、キズは、
原画にあったものなのか? 印刷のときにできたものなのか?
はたまた、絵本になってからついたものなのか?
スキャンのときについたものなのか?
それも、細かく検証していった。 |
▲例えば、このページである。
Qのような記号は、ゴミをトルという指示である。 |
さらに拡大してみよう。
上から順に、校正紙、絵本1、絵本2である。
(絵本のほうは、スキャンにつかったものでは無いが、
説明のためのサンプルとして用意した。)
赤い◯が三つあるのにご注目を。 |
▲校正紙
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▲絵本 1
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▲絵本 2
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まず1の丸。これは校正紙にゴミが見受けられるが、
絵本の1にも絵本の2にもないので、
スキャンしたときか、
もしくは校正紙にプリントしたときにできたゴミである。
だから、トル。
2の丸、3の丸は一つの例である。
絵本1にあって、絵本2にないキズだとしたら、
それは、原画にそのキズはなかった、と判断ができる。
もしも、印刷にこのキズがあれば、それはトルという指示になる。
原画にある色の滲みやゴミにみえるものまでを
主観的な判断で取り払ってしまわないように、
つねに、元の絵本を2冊手元において、検証していったのである。
(解体されたものと、もう一冊である)
このようにして赤字をいれて
ノイズを除去した校正紙が再度でてきて、
ようやくデザイナーの清水さんと色の話ができるのだ。
たとえば、このページ。 |
▲左が絵本。右が藤井さんの炎の赤字をいれた初校。
そして、真ん中がその赤字を反映した再校である。 |
この3枚を見比べて、原本の色味により近くするために
こんどはデザイナーの清水さん、編集の永田と一緒に
赤字をいれていく。 |
▲じゃっかん全員の顔が「ダメ」な状態なのは、
この日、この時点でかなり夜が老けていたからだ。 |
そして、さらに同時にもう一つ復刻にあたってやったことがある。
またまた印刷の話になってしまって恐縮だが、
続けよう。
じつは、本をつくるときの印刷というのは、
出来上がりの寸法よりも、
まわりを3ミリづつ長くしたものをプリントする。
つまり、入稿されるデータは、実際の本の大きさより、
3ミリばかりおおきいものなのだ。
何故かといえば、本にするときには
ページごとに印刷された紙を本のサイズに
断裁していかなければならない。
このとき、ジャストの本のサイズでプリントしてしまうと、
断裁のときに、ほんの少しの誤差がでただけでも、
印刷されていない白い部分がページに入ってしまう。
だから、最低でも3ミリのばして、
断裁したときの誤差があった場合の
帳尻をあわせるのである。
つまり‥‥。 |
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この野球場のページをご覧いただこう。
こちらの右側が、
本の大きさにカットしたときの絵の具合である。
原稿の段階では、この右側よりも3ミリばかり
余計になくてはならないのだ。
ここで思い出していただきたいのである。
われわれは、データをどうやってつくったかというと、
絵本をスキャンした、ということを。
それはつまり、印刷されていた外側の3ミリの絵の部分は
とうの昔に断裁されてしまっているということなのだ。
理屈から行けば、復刻版は周囲が3ミリばかり短いという
絵本にならなくてはいけない。
が、今回は「完全復刻」を目指しているのだ。
だから、周囲が3ミリばかり短い絵本をつくるわけにはいかない。
どうしたのか?
凸版さんが3ミリ伸ばしたのである。 |
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それがこれだ。
上の絵と比べるとわかるが、スコアボードが伸びているはずだ。 |
▲左が絵本のサイズにカットされているもの。
右がカットされていないもの。 |
じゃっかん、この3ミリ分を作る、というのは、
すっきりしない気持ちが生じなくもないのだが、
なにせ、その3ミリは万が一の誤差のためであり、
ほぼ間違いなく切り落とされてしまう部分なのである。
凸版印刷には、この作業の
プロフェッショナルがおられるとのことである。
この作業を全てのページにわたっておこなった。
(もちろんベタで一色のページも多いのだが、
数ページは、このように絵を塗りたしてある。)
最初のほうは、「解体ショー」などといって、
たいへん派手な復刻の道筋でしたが、
終盤にかけてのコツコツっぷりはどうよ。
と、胸をはりたいくらいのコツコツぷりである。
そして、いよいよ次回は、校了を迎える。
つまり、長かった連載も、次回が最終回である。 |
(もちろん、つづく) |
2011-04-20-WED |