2011年3月12日校了

「復刻記」はこの回をもって終了する。
当初の予定では、「さよならペンギン」の発売日
かっこ良く終了する予定であったが、
ずるずるとここまで来た。
筆者がのんびりしてしまったというのが遅延の大きな理由だが、
ネタが山ほどあった、というのも事実である。
お察しのとおり、まあ言い訳なのであるが‥‥。

表紙、中身ともに絵本はほぼできあがった。
「さよならペンギン」最後のパーツは「帯」である。

話は再び荒井良二さんにもどる。

絵本を復刻することが本決まりになったその当初から、
帯にはきっかけをつくってくださった
荒井さんにお願いすると永田は決めていた。
新しく言葉がいただけなくても、
対談「いろいろ似ていた。」のときに
お話くださったところから
抜粋させていただくのでもいいと思っていた。

そして、もうひとかた。
本をつくっている途中で、
帯の言葉を寄せていただけたら、という人物に出会った。
復刻のためにハードカバーの「さよならペンギン」を
ご提供いただいた本上まなみさんである。
お子さんに「よみきかせ」もされていたということから、
実感のこもった「さよならペンギン」への
言葉を書いてもらえるのではないかと思ったのだ。

お二人に、ダメもとで依頼させていただいたところ、
またもや、「快諾」をいただいた。

本上さんからとどいた言葉は、

というものである。
「デタラメで、ちゃんとしてない!」とは、
なんと、絵本の中身を的確に言い表した言葉だろう!

そして、荒井さんのほうは、
なんと手書きで3パターンもお送りくださったのだ。
荒井さんのご許可を得て、3つ共にご紹介しよう。


▲しかも、手書きなのである。

そして、この3つの言葉を前に、
永田、考えあぐねる。

「どれも良すぎて選べない‥‥。」

挙句に、糸井のところにもっていって、
選んでもらうことになる。

こうしてできあがったのが‥‥。

なんと、贅沢な帯ができたものか!
こうして、本のパーツはすべてできあがった。

オマケのように、もう一つ。
本の部品ではないが、書店での販促用のPOPも
今回は同時に製作をしていた。
ここでいうPOPとは、一般書店で販売されるときに、
「さよならペンギン」を紹介するためのカード状のものである。
こちらの製作も、
デザイナーの清水さんにお願いをしたところ、
帰ってきた返事は、

「型抜きはできませんか?」

つまり、快諾しつつ、
希望を述べる、という状況である。
型抜きか‥‥。
わからん‥‥。

わからないときは相談だ。
出版社でもある東京糸井重里事務所で、
POP製作といえば、デザイナーの山口である。
相談だ! なんにつけてもいつでも、相談だ!

「型抜き? もちろんできるよ。
 すごい値段が上がるわけではないんだけど、
 いつもよりはコストがちょっとあがっちゃうんですが、
 そこはクリア?」

クリア、クリア。
そこは、相談済み!

「あとは、けっこう時間がかかるんですよ。
 締切り大丈夫ですか? 入稿から約10日くらいです。」

大丈夫です! ギリだけど大丈夫! 
清水さん、大丈夫です! 型抜けます!

「わ~~~! 夢の型抜き!
 なかなか提案しても実現しないんですよ。
 型抜きって。」

弊社でも初の型抜きPOP。


▲妙に時代を感じさせるPOPができあがった。
 こちらの「さよならペンギン」取扱い書店に
 もしかしたら置いてあるかも!

さて、いよいよである。
いよいよ最後の行程だ。

帯、カバー、表紙、本文の
その全てに「印刷してもオッケーですよ。」という
ゴーサインを出して、印刷にとりかかることを
「校了」という。
予定では、この「校了」を、
3月11日の夕刻に行うことになっていたのだが、
その直前に「東日本大震災」が起こった。
電車が不通になったことで、
凸版の藤井さんが青山に来られなくなった。
さらに、清水さん、永田もそれぞれに事情を抱え
青山の糸井事務所に全員で集まることが不可能となった。
その先がどうなるかはまったく予想がつかなかったが、
とりあえず、翌12日の12時に
メールか電話で連絡をとりあうことを約束して、
その日の校了を延期した。

翌日、約束どおりに、メールと電話とで連絡をし、
ともかく清水さんの事務所に集合することを決めた。
16時をちょっとすぎたところで全員が揃い、
作業を開始した。


▲原本、初稿、再校を見比べる。

▲当然、まだ赤をいれる。
 「赤はいれればいれるほどよくなる。」と。

▲カバーももちろん確認する。

こうして、無事に「さよならペンギン」は校了を迎えた。
3月12日の校了作業をしている時間が、
尋常でなかったのは、いわずもがなである。
その時の空気や考えていたこと、感じたことは、
その時に書かれた文章が一番の説得力を持つと思うので、
永田が「ただいま製作中」に投稿をしたこちらを。
復刻記は、ただ校了した事実を記しておくのみである。

それから約2週間後の3月28日に
復刻版の「さよならペンギン」は青山の事務所に届き、
予定通り4月1日に「ほぼ日ストア」で販売を開始した。

以上が、2010年の3月31日に始まった、
「さよならペンギン」の復刻の一部始終である。
当時の印刷の版も原画も失われているという困難はあったにせよ、
それよりも、はるかに多くの幸運にめぐまれて、
「さよならペンギン」は、
はじまりから1年と2日後に無事に復刻・再出版されたのだ。

最後にあらためて
復刻のために「さよならペンギン」を
送ってくれたみなさん、
製作にあたりご協力をいただいたみなさん、
そしてこの「復刻記」を
読んでいただいたみなさんに感謝をして、
記録を終了させていただく。

ありがとうございました。

(おわり。といいつつ、もちろん「後日談」がある。
 それは、しばらくたってからの更新となるだろう。)

2011-04-28-THU

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