Phoenix-5 花火師さんに訊く、打ち上げの基礎。
── はじめまして、
今日はよろしくお願いいたします。
小泉 こちらこそ。
── まずはその、
思っていたよりもお若い方だったんで、
びっくりしました。
小泉 そうですか。
若くないんですよ、そんなに。
39です、意外と年食ってるんで(笑)。
── もっとこう、いわゆる職人さんを
イメージしていたものですから。
小泉 まあ、こんな感じで(笑)。
── 小泉さんは、ずっと職人さんを?
小泉 そうですね、私はもう21からです。
── 「新潟煙火工業」さんは、代々なんですか。
小泉 今うちの社長が5代目になるので。
── 小泉さんが6代目。
小泉 はい。
── ずっと長岡の花火を?
小泉 長岡の花火大会の始まりから
うちが関わってたというわけではないわけです。
6年前になりますかね、
うちがお手伝いするようになったのは。
── ここで花火を作って、卸しているわけですね。
小泉 いや、われわれの仕事は、
ほかの物を売ってる商売と違って、
レジに行って「これください」
「はい、どうぞ」っていうわけにいかないんです。
どうしても火薬を取り扱ってるので、
販売したあとも打ち上げまで
こちらが請け負ってやらなくちゃいけない。
── そうか、製造と打ち上げはセットなんですね。
小泉 そういうことになります。
── 小学生のような質問かもしれないですけど‥‥。
さっき長岡の駅前で、
こんな写真を撮ってきまして(見せる)。
小泉 ああ、筒ですね。
── はい。
どうやるんだろう? と。
花火はどうやって、上にあがるんだろう、と。
駅の中には花火玉の模型があったんです。
(見せる)
小泉 はい、はい。
── 火薬がギュウギュウ詰めで。
打ち上げるには下でボンとやるはずなのに、
なんでそこで爆発しないんだろう? と。
小泉 打ち上がる前にね(笑)。
── あと「この筒は1回で終わるの?」とか。
だって1回ドーンとやったら、
それはもう熱くて次を入れられないはずだから、
どうするんだろう?
2万発打ち上げるからといって
まさか2万本の筒を用意するわけはないし‥‥。
小泉 いまは遠隔操作で電気点火をしている関係上、
「一筒一発」ですね。
── ‥‥一筒一発?
小泉 いまおっしゃったように、
たとえば100発打ち上げる現場があったら
100本の筒を持っていくわけです。
── え、ええーーー?!
じゃあ、用意するんですか!
2万発なら2万本!
小泉 昔は、100発上げる現場だったら
30本くらいしか持っていかなかったんですけどね。
30本に仕込んでおいて、
打ち上げが始まったら、
空いた筒にまた玉を詰めていくんです。
でも、いまは一筒一発。
── へえーーー。
「一筒一発」‥‥。
で、続けてすみません、幼稚な質問で。
花火が打ち上がる原理は‥‥?
筒の下に火薬が詰まってるんですか?
小泉 そうです。
── そのあたりが、
わかったようなわからないような‥‥。
しかも、玉に点火もしなくては
いけないんですよね。
小泉 もちろん。
── ‥‥どうなってるんですか?(笑)
小泉 こう、花火の筒がありますよね(絵を描く)。
小泉 下に、火薬がこうあるわけです。
その上に花火の玉があって、
花火の玉には必ず導火線がついてるわけです。
今は遠隔操作なので
電気で点火をしてるんですが、
仕組みとしてはだいたいこうです。
下の火薬は袋に入っています、ビニール袋に。
── ビニール袋に。
小泉 で、ビニール袋の中から導火線がこう。
── 導火線が上に。
小泉 この導火線に電気導火線をつなぐんですね。
それが打ち上げ場所から点火場所まで
つながってるわけです。
スイッチを押すと、ここが破裂する。
破裂して導火線にシュッと引火して、
下の火薬が爆発を起こす。
爆発すると大量のガスが発生します。
── ガスが。
小泉 そのガス圧が推進力になって
上に上がっていくわけです。
爆発した力は四方八方に向かいますが、
上以外は密閉されていますから、
力は弱いほうにぜんぶ行きます。
それを利用して真上に上げると。
── そのとき、玉がいっしょに爆発しないんですね。
小泉 しないです。
この玉っていうのは
紙を何重にも貼り合わせて強度をつけています。
ちょっとやそっとじゃ壊れない。
── はあー。
で、この爆発のとき、
花火玉の導火線に火がつくんですか。
小泉 そうです、そうです。
── なるほどー。
そして空中で玉が破裂する。
小泉 さっきの、花火玉の模型、
写真を見せてもらっていいですか。
── これですね。
小泉 この真っ黒い部分、
これぜんぶ火薬なんですね。
ここの部分を「割薬(わりやく)」と言います。
玉を割るための火薬。
── 割薬。
小泉 そしてこの、色のついたいくつかの丸い玉。
これも火薬なんですけど、
われわれの用語で、これを「星」と言います。
── 星。
かっこいいですね。
小泉 この星っていうのは、
みなさんが目にしてる花火の色の部分です。
これが燃えて、色を出します。
色が変化するのは、
この星に薬品を重ねて層になっているからです。
── そういう仕組みだったんだ‥‥。
小泉 で、ドンと上がった花火はどうなるのか。
尺玉だとだいたい6、7秒後に、
上空でドーンと開きます。
その6秒半前後で導火線の火が‥‥。
── ちょうど到達するように。
小泉 ええ、尺玉は300メートルくらいで。
割薬が玉をバーンと。
── なるほどー。
いや、よくわかりました。
小泉 玉が大きいほど、
高いところで玉が割れるんです。

※小泉欽一さんの会社、
 「新潟煙火工業株式会社」のHPはこちら
 

(つづきます)


2010-07-26-MON