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── |
尺玉といえば、
駅にあった三尺玉の模型にはびっくりしました。
一尺が約30.3センチなので、
あれは直径が90センチくらいですよね。 |
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小泉 |
そうですね。 |
── |
三尺玉の重さはどのぐらいなんですか。 |
小泉 |
300キロくらいかな。 |
── |
はあー! それが打ち上がる。 |
小泉 |
はい。 |
── |
ガスの圧力で。 |
小泉 |
三尺玉だと、
600メートルくらい上空まで打ち上がって、
直径も600メートルほどの花火が開きます。 |
── |
‥‥はああーーー。
そのくらいの数字になると、
もう実際に見てみないとわからないです。 |
小泉 |
そうでしょうね。
安全性も考えて、
都市部でその大きさは上げられないです。 |
── |
ここでは、上がる。 |
小泉 |
上がります。 |
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── |
たのしみです。
──こちらでは、そういう大きな花火ばかりを
つくられているわけではないですよね。 |
小泉 |
もちろん。 |
── |
新作花火の開発なんかも。 |
小泉 |
ええ、あまりないことですが。 |
── |
新作をつくったときは、
試し打ちみたいなことをやるのでしょうか? |
小泉 |
場合によっては。 |
── |
それは、このあたりで。 |
小泉 |
そうですね。 |
── |
近所の人たちは、
ちょっと得した気分でしょうね(笑)。 |
小泉 |
どうなんでしょう(笑)。
当然ですが許可をとって、
ご迷惑のかからないようにやっています。 |
── |
そうですか。
──ぼくらは素人なので、
花火の良し悪しというものが
なかなか見わけられなくて、
ぜんぶきれいと思ってしまうんですけど、
職人さんたちは
どういうポイントで「よし」というものを
判断しているのでしょう? |
小泉 |
それはやっぱり、
形、大きさ、色ですね。 |
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── |
なるほど。
外国にも花火はありますけど、
日本の花火とはやっぱり
美しさのポイントがちがいますよね。 |
小泉 |
ちがいます。
とくに欧米とは違いますね。
アメリカはショービジネスの世界ですから。
そういった意味で、
ショーとして魅せるんですね。
花火大会というものは存在しないので。
ショーなんです、ひとつの。 |
── |
演出のひとつ。 |
小泉 |
はい。
全体ですばらしいものつくるので、
玉ひとつひとつの良し悪しじゃないんです。
どこでどういうふうに見せるか。
音楽を使ったら、どういうタイミングで
花火を出すかっていう、構成力ですよね。
日本の花火は、そうではなくて、
玉ひとつひとつが‥‥。 |
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── |
作品、作品ですよね。 |
小泉 |
はい。
花火ひとつでも十分見せられる
というものの提供がやっぱり多いわけです。 |
── |
そのちがいはおもしろいですね。
──あの、すこし花火の種類について
教えていただきたいのですが。 |
小泉 |
はい、たくさんありますが。 |
── |
たとえば、そちらに飾っている写真の、
いちばん左の花火はなんていうのでしょう。
名前がついてたりするんですか? |
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小泉 |
花火にはぜんぶ名前がついています。
玉ひとつひとつに。
あの写真の花火は、
玉の中に星じゃなくて玉が入っているんです。 |
── |
星じゃなくて玉。 |
小泉 |
玉が入ってる。 |
── |
花火玉の中に、ちいさな花火玉がたくさん。 |
小泉 |
そうそう。
で、そういう花火のことを
「千輪(せんりん)」といいます。 |
── |
ああー、いい名前ですねえ。 |
小泉 |
あとは、たとえば、
花火の玉名(ぎょくめい)っていうと‥‥。 |
── |
「玉名」、いいですね、その言葉が。 |
小泉 |
こういう名前があったとしますよね(書く)。
錦先緑銀乱。 |
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小泉 |
そうすると、
実際に開いたときにどう見えるかっていうと、
この読んで字のごとくの順番で
色が表現されるんです。 |
── |
へぇー! |
小泉 |
最初に錦という色が‥‥
錦っていうのは明るいキラキラしたやつを
錦というんですけど、
それが出て、緑が出て、銀色に変化する。 |
── |
最後に、銀が乱れる‥‥。
なるほどぉ、へぇー。 |
小泉 |
菊先紅青紫(書く)。
これもやっぱり、こういう順番なんです。
菊というのは錦と対照的に暗い色です。
いわゆる炭(すみ)の燃えている色。 |
── |
はい。 |
小泉 |
それが出て、
赤い色が出て、青に変化して、紫で終わると。 |
── |
かっこいい‥‥ |
小泉 |
あとは、椰子(ヤシ)かなあ。
椰子は肉眼よりも
写真で見た方が名前の由来がわかりやすいんです。
(資料を開く)
これとか、そうですね。 |
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── |
ほんとだ、火が流れて
椰子の葉っぱみたいに見える。 |
小泉 |
ほかにもまあ、いろいろあるんですが‥‥。 |
── |
そうですね、切りがないですよね。
ではいよいよ本題といいますか、
「フェニックス」のお話を聞かせてください。 |
小泉 |
はい、「フェニックス」。 |
※小泉欽一さんの会社、
「新潟煙火工業株式会社」のHPはこちら。 |