増田 |
私たちは今回、
「ピンク・レディー」そのものを
やりたいとは思っていませんでした。
とにかく、ふたりのハーモニーで歌いたい、
それだけです。
ですから、最初は
覆面で歌おうか、なんていう話を
していたくらい。
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糸井 |
ほほぅ、そんなおもしろいことを(笑)。
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増田 |
はい。それぐらい
やりたかったし、考えたかったんです。
ソロで歌うのは、当然気持ちいいですが、
ふたりのハーモニーは、
このふたりじゃないとできないものですから。
覆面で、ちっちゃな小屋でライブしたり
インディーズで新曲出したりしようか、
ということも話しました。
でも、よく考えたら
私たちの声って、覆面であろうが‥‥
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糸井 |
すぐわかっちゃうね。うん。
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増田 |
だったら、ピンク・レディーとして
やるしかないのかな、
というところからはじまって、
3年くらい、考えました。
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糸井 |
考えていた期間が3年あるんですか。
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増田 |
はい。仕事に対する考え方とか、生き方とか、
もちろんそれぞれ違うから、
「きっとぶつかるだろうねぇ」
という話もしました。
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糸井 |
お互いにぶつかることを
わかってるわけね。
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増田 |
わかってます。
いちばん大切な友達だけど、
いちばん気を遣う友達でもあります。
それは、それぞれが
ソロとしても活動しているので
踏み込んではいけない部分もあるから‥‥。
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糸井 |
ずっといっしょにいるわけだからねぇ‥‥。
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増田 |
そうですね、
中学3年からずーっといっしょです。
夫婦みたいなものですよ。
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糸井 |
プライベートのときは
ぜったい会わないとか?
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増田 |
いいえ、食事はよく
いっしょに行きますよ。
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糸井 |
ええ? そうなの。
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増田 |
はい。仕事がないところでは
なかよくいられます。
しかし、仕事となると、
姿勢がそれぞれ違うから
「やっぱり、これはこうがいい」
「いやいや、そうじゃなくて、
こっちのほうがいいんじゃないか」
というぶつかり合いは、当然、出ます。
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糸井 |
うーん‥‥、それをずっと
ふたりで続けられるのが、すごいですね。
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増田 |
そうなんです、ですから、
「それをまた続けよう」と決心するまでに、
もちろん時間がかかりました。
でも、一生は一度しかないし、
後悔したくないし、
どちらかが先に逝ったときに、
「あぁ、やっておけばよかった」と思うのは
いやでした。
一生懸命生き切って、
一生懸命死に切りたい。
だからやっぱりピンク・レディーとして
もう一度やろうと思いました。
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糸井 |
いましかない、というように‥‥。
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増田 |
いましかないです。
いまやってるツアーも、
9月19日で終わっちゃうんですが、
それだって、そこまで、
生きてるかどうかわからない。
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糸井 |
すごいところまで考えましたねぇ。
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増田 |
そう思いませんか?
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糸井 |
いや‥‥ぼくはいま、
ケイちゃんの話を
聞いてるだけだったから、
思いもよらない話に聞こえましたけど‥‥
いやぁ‥‥でも、
事実はそうですね。
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増田 |
うん、そうです。
糸井さん、このまえ大宮の
コンサートに来てくださいました。
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糸井 |
はい。おふたりとも、体当たりでしたよ。
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増田 |
あのコンサートもそうです。
「もしかしたら、このツアーは
今日で終わっちゃうかもしれない」
そういう思いで、毎日います。
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糸井 |
うん。ほんとうに、そのくらいに見えました。
だからあんなことができるんだ、
とも言えますね。
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増田 |
そうですね。たぶん。
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糸井 |
ずっと続けられると思っていたら、
あんなにいろんなものを
ひとつのステージに詰め込まなくても
いいのかもしれない。
だって、あのステージは
2時間以上でしょ?
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増田 |
2時間15分か、20分くらい。
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糸井 |
コンサートの2時間15分のあいだ、
ほとんど休憩になるような時間はありません。
おしゃべりでごまかして休む場面も
ほとんどないし、
着替えのときですら
急いで引っ込んで急いで出てくるでしょう。
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増田 |
着替えはいわゆる「早がわり」です。
3分ぐらいで帰ってこなきゃいけません。
ヘアもかえてもらいながら、
早着がえ、です。
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糸井 |
そうだ。頭もかわってたぞ(笑)。
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増田 |
衣装かえつつブーツ履きつつ、です。
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糸井 |
だから、決して
休んでるわけじゃないんですよ。
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増田 |
そうです。
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糸井 |
そこまで、やるんだ。あのステージは。
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増田 |
はい。 |
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(つづきます) |