糸井 |
ケイちゃんに
NHKの番組収録でお会いしたのは
ついこの前のことでしたね。
少しお話ししただけなのに、
ぜひ「ほぼ日」で
ピンク・レディーのことを話してください、
とお願いしたんですよ。
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増田 |
はい、そうでした(笑)。
こんなに短期間で対談が実現するなんて。
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糸井 |
あの番組収録のとき、
はじめてお会いしたと思ったんですが、
違いましたね。
前に一度、お目にかかってました。
「ラスト・プリテンダー」という曲の‥‥。
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増田 |
そうそう、歌詞を糸井さんに書いていただいて。
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糸井 |
昨日調べたら、
もう一曲書いてたことがわかりましたよ。
「逆回転のシネマ」という歌。
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増田 |
あ、「AMENIC(アメニック)」だ。
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糸井 |
AMENICは、逆さにするとCINEMA。
映画を逆さから観ると
お別れのシーンからだんだんと
出会いのシーンのハッピーエンドに向かう。
そういう生意気な歌をぼくはつくりました。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
当時の自分としては、
何かアイディアを入れないとダメだと
思ったんでしょうね。
つまり、ピンク・レディーが
お別れのときの歌だったから。
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増田 |
ああ、きっと難しかったでしょうね。
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糸井 |
惜しまれてたし、
ご自分たちもせつなそうな時期だったし‥‥
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増田 |
はい。
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糸井 |
ですから、しあわせな部分をどう入れようかと
ずいぶん考えました。
じつはぼく、「ラストプリテンダー」の
レコーディングスタジオに
おじゃましていたんですよ。
ケイちゃんが電話しにいくところを見ました。
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増田 |
え? そうだったんですか。
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糸井 |
たぶん彼かなんか、いたのかな。
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増田 |
ああぁぁ。
大きなポイントですね、そこ。
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糸井 |
でしょ。
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一同 |
(笑)
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増田 |
‥‥見られましたか。
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糸井 |
見た。
で、すぐに「あれは男だな」と思った。
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増田 |
なんでわかるんでしょう?
醸しだす雰囲気で?
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糸井 |
顔に書いてあるんじゃないでしょうか。
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増田 |
顔に書いてある(笑)。なるほど。
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糸井 |
ケイちゃんもミーちゃんも、
当時はほんとうに疲れ果ててましたよね。
あのスケジュールは、
いま振り返って考えたら、
無理だったでしょう?
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増田 |
無理でした。
まず、「どれだけ大変か」が
わかっている状態では、できないですね。
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糸井 |
うん、そうですよね。
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増田 |
先が見えてないから、できました。
毎日15、16ぐらいある仕事を
精一杯ひとつずつやっていく‥‥。
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糸井 |
15、16。
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増田 |
もしも倒れてしまい、
その日にできない仕事があったとしても
それは消えてなくなりません。
ただ別の日に回っていくだけなので
どんどん体がきつくなります。
だから、とにかく
一日一日を大事にやっていかなくてはならない、
そんな状況でした。
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糸井 |
それが二十歳?
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増田 |
十代後半から二十代前半まで。
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糸井 |
いま、自分は
そんな年の子に「やれ」って言えないですよね?
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増田 |
言えませんね。
でも‥‥すごく価値のある、
誰もがみんなできることじゃない、
そういう青春時代でした。
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糸井 |
いろんなことを、
「よかった悪かった」「悪かったよかった」
と思いながら、
今日まできたわけでしょ?
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増田 |
うーん‥‥「よかった悪かった」じゃなく。
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糸井 |
ないですか。
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増田 |
うん。
「すべてよかった」
です。
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糸井 |
すべてよかったですか。
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増田 |
はい。いまとなっては‥‥。
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糸井 |
それ、本人にしか言えないよ。
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増田 |
はい(笑)。
でも‥‥当時は、正直いって
「いつかは終わる、
このブームがいつかは終わるから」
と願い続けていました。
ずっと続くと思ったら、
がんばれなかった。
ですから、いつも
「早くブームよ去れ」
と思っていました。 |
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(つづきます) |