糸井 ぼくは、今回のコンサートは
若い子にも見せたかった。
若い人、もっと観ればいいのに。
増田 うん。観てほしい。
糸井 いわゆるニューミュージックの分野の人だと
ケイちゃんやミーちゃんの年代は
大御所になっちゃいます。
観客の年齢もあがりますが、
お父さんお母さんの影響なんかで
若い子も聞くようになって、
ファンの年齢が螺旋状に
重なっていくことがあります。
ピンク・レディーも
そういう資格のあるグループだと思います。
増田 ちょっとずつ重なっているんですが、
それが全体にひろがったらうれしいなぁ。
糸井 今回のツアーでは
おふたりがコーラスグループだということを
改めて思い出すことができました。
思いきりハーモニーで遊んでた曲が
あったでしょ?
うらやましいと思いましたよ。
増田 激しく踊る曲は
どうしても歌がゆれてしまうので、
自分たちの歌唱力を発揮するのは難しい。
ですから、ハーモニーを聴いていただく歌は、
ほんとに「ここぞ」というタイミングで
構成しています。
糸井 ああいう歌も、流行りの歌も
両方捨てないで、よく混ぜたなぁと思いました。
増田 はい。お客さんの要求は
重々わかっているので、もちろんやります。
そして、聴いてほしい音楽も歌いたい。
糸井 要求に応えることを
平気でやっちゃうのって、
実はすごいね。
増田 だって要求に応えるのが、私たちですから。
糸井 きっと、そういう育ち方をしたんですね。
でも「好きなことは違うんです」という
思いがあって、
いまはそれがちゃんと言える。
増田 はい。
やっぱり、
50代になって本音を言えなかったら、
それはもう、すべてが嘘になると思います。
ステージのことも、歌のことも。
だからやっぱり本音で語らなければいけないし、
本気でやらなくてはいけない。
糸井 お金勘定も含めて、
そういうことができるようになってますね。
増田 はい。
糸井 だけどお金のことなんて、別に
しなくても済んだわけでしょ?
私は苦手だといって避けることも
できたはずです。
増田 そうですね。
でも、やる人いないから。
糸井 えらいなぁ。
増田 だって、たとえば、
ミーがすごく倹約してて、
私が湯水のようにお金使ってたら、
それは叱られちゃいますでしょ?
糸井 そのとおりですね。
増田 いまはなんだか、ピンク・レディーを
完結しないといけない
という気になってるんです。
やっぱり、亡くなった先生たちから
何かを託された気がして。
糸井 ‥‥なるほど。
増田 今年の5月21日に初日を迎えて、
お客さんと一緒に
2時間15分を過ごしているうちに、
これが使命なんだと
実感するようになりました。
糸井 いや‥‥それを
本気で言ってるから怖いですよ。
増田 えっ‥‥?
糸井 「最後のステージまでに、
 もしかしたらいなくなってるかもしれない」
ということもおっしゃったけど、
それがどうも、本気で言ってるふうに
ちゃんと聞こえちゃうんで、怖いです。
増田 ‥‥‥はい。
糸井 そういう話は、ふつう
会話としてはできます。
けれども、そういうことを
本気で言うことって、
なかなかありませんよ。
そんなにとんでもないご苦労を
なさってきたとも思えない(笑)。
増田 はい(笑)。
糸井 けれど、そうだなぁ、
ピンク・レディーというプロジェクトは
それだけ、巨大なものだったという
ことなのかもしれません。

比べるものはないのですが、
もしかしたら
あるプロ野球チーム全体の歴史みたいなものに
匹敵するような
ものすごいものだったんだね、と
改めて思います。
増田 ピンク・レディーは
自分たちのものだけではありません。
ピンク・レディーの名前を
汚すことは絶対にできないです。

ですから、いまも
「ピンク・レディーという
 昭和を代表するアイドルがいたよね」
というままでは終わりたくない。
ほんとうにすばらしいものとして
残したいという思いが強くあります。
糸井 いや‥‥、いまでもちょっと
ぼくら、わからないんですよ。
いま現在のピンク・レディーが
できちゃったこと自体、
奇跡に思えるんですよね。
あんなの、見たことないもの。

20歳のころのピンク・レディーを
凌駕するステージを、
失礼ですけど、50を3つ過ぎた方が、
「人はここまでできるんですよ」
というふうに観せてくれる。

自分の年齢がいってるからわかるんですが、
53歳のころって、
若いときにできたはずのことが
だんだんできなくなってくる年齢です。

ですから、ここに至るまでには
とんでもない、何かの力が
働いたように見えるんです。
増田 まず、お客さんの力が、
すごく大きいです。
糸井 ああ、なるほど。
増田 すっごくすごく、大きい。
私たちはステージに立つと決めたら、
ただなつかしいというんじゃ、嫌でした。
もしも、それしかできなかったら
「解散やめ」はしなかった。
糸井 なつかしさに甘えないんだ。
増田 はい。
あそこから継続した、
もっとすごい、新しいものを
つくりあげていきたいと思ってました。
糸井 お客さんは、充分に
なつかしさを抱えてやってきて、
コンサートが終わった後も
なつかしさを語るんだけど。
増田 はい。
糸井 ご本人たちがなつかしさを語ったら、
それは甘えになっちゃうんですね。
増田 そうです。
 
(つづきます)

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2011-09-12-MON