2018/08/23
19:56
2018/08/23
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なぜ経営の失敗に興味があるんですか。
「ぼくが興味を持っているのは、
うまくいかないところなんです。
なぜ調子のよかったはずの企業が、
どこかで調子を崩して倒産したり。
自分で意思決定するときにも、
決めたはずなのにクヨクヨしたり、
後悔してしまったりするんだろうって。
『行動意思決定論』という分野は、
当時はまだ学問として成り立って
間もない頃だったんですよね。
それでも英語の論文を読んでみたら
おもしろいなと思って、
いつの間にかたどり着いたのが
行動意思決定論だったんです」
うまくいかないことを
分析できる学問なんですね。
「成功者を語るときに気をつけたいのが、
たしかに才能があったねとか、
あの分野で優れていただとか、
後知恵のようにして
いくらでも要因を付け加えられます。
その要因を真似すれば
誰でも成功できるかというと、
まぁ無理に決まっているわけですよ。
『決してくじけなかった』といって
じぶんも『決してくじけない』と
マネをしたところで、
ぼくはビル・ゲイツにはなれません。
成功物語を読むと心が高揚して、
私も見習いたいと思うのですが、
いくらでも付け加えられるんです。
失敗物語は、数こそ少ないけれど、
よっぽど得ることが多いと思います。
企業の経営者の中にも、
たまたま何かで成功したからといって
自分の能力を勘違いして
思い上がってしまう人もいますから」
なにかで成功した人は、
まわりからも才能があるように
見られるんでしょうね。
「人は、いくらでも嘘をつけますから。
『Dr.HOUSE』という
アメリカの人気ドラマが
あるんですけれど、
偏屈な医者が主人公で、
不可解な症状で担ぎ込まれた病人の
病気を推理していくんです。
この主人公は、
自分で患者を診ようともしないで、
部下に指示をして検査をするんです。
なぜ診ないかというと、
『患者は嘘をつくからだ』と言う。
たしかにそれは言えていて、
症状や生活習慣を正直に言おうとしても、
どこかで体裁を繕うとしてしまうんです。
経営者だってあとになってみれば、
本当はそうでもないのに、
『歯を食いしばって頑張りました』
と言えてしまうわけです。
もちろん正直な人もいますけれど、
人間の記憶ほど曖昧で、
融通無碍なものはないんですよね」