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東京の緊急事態宣言も解除されました。
約2ヵ月におよぶ、自宅での日々から、
私たちは少しずつ新しい日常へ戻っていきます。
もちろん、焦らず、慎重に、気を配りながら。
スープを飲むみたいに、お粥を食べるみたいに、
だんだんと戻っていく街の様子を、
ここに記録しておきたいと思いました。
いつもの「怒涛の更新!」とはまったく違う、
静かな、地味な、テキスト中継です。
nagata

きっと思い出す、読み返す。

2020/06/12 19:44
6月1日から更新してきた、
この静かなテキスト中継も
今日で一区切りです。

あまりわかりやすいとはいえない
この中継をはじめるにあたり、
ぼくは一緒に参加してもらう予定の、
おもにライティングや編集を担当する
6人のメンバーに何度か訊きました。

「こういう、ただふつうに戻っていくという、
日常の記録を淡々とやってみたいんだけど、
どう? 書けそう? ピンときてる?」と。

そしたら意外にもみんな、
「よくわからないけど、やってみたい。
なにより、誰かがそれを書いていたら
読んでみたい」というふうに言ってくれました。

はじめてみたら、
やっぱり大きなドラマなどなくて、
見事に淡々としていたのですが、
でも、やってよかったなと思うのです。

思うのですが、ぼくらの記憶はとても曖昧です。
最近、固有名詞が出てこないねぇ‥‥
なんていうことだけじゃなく、
じぶんにとってとても大切な場面も
それまるごとはとても憶えていられない。

でも、そこに写真があったり、
その場面をなにかに書き留めていたり、
誰かにしゃべったりするだけで、
そののっぺりとした記憶に
「とっかかり」のようなものがつけられる。

たぶん、この、
3月からの外に出られなかった数ヶ月は、
ぼくらの人生にとって一大事でした。
2011年3月11日になにをしていたか、
ということを度々人と語り合うように、
「あのとき、なにしてた?」ということを
これから折に触れて語ることになるのでしょう。
たぶん、いまよりもずっと
時間が経ってからのほうが、
「いま」を「あのとき」として
語り合うのではないかという予感があります。

そのときに、みんながこうして、
新しい日常に戻りはじめたときのことを
記録しておくことは、
たぶん、「とっかかり」として、
とても役に経つのではないかと思います。

もちろん、まだまだ終わったわけではなく、
ここに記録した12日間は、
「途中経過の簡単な記録」にしか過ぎません。
それでも、こういう些細なことを、
みんなで記録できてよかったです。

さて、今日は天気もよくて、
すこし歩いてお蕎麦屋さんに行きました。
おいしくて、安くて、店員さんが元気なので、
いつも行列ができている大好きなお店です。
久しぶりに来たらやっぱり行列でしたが、
まえよりはすこし短かったかな。
おかげでそんなに待たずに入れました。

冷たいお蕎麦を食べて、
初夏の暑い街へ出る。
それはほんとうにこれまで通りなんですが、
出た瞬間にぼくはマスクをかけて、
会社に戻るとアルコールスプレーを
当たり前のように手にシュッと一吹きする。
たぶん、一時的なことではなく、
こういう日常がもうはじまっている。

静かなテキスト中継におつき合いいただき、
どうもありがとうございました。
いつか、ずいぶんあとに、
自分がこのテキスト中継を
かならず読み返す気がしています。