気仙沼のほぼ日便り

音楽家の坂本龍一さんらが発起人となり、
全国楽器協会のプロジェクトとしてスタートした、
こどもの音楽再生基金」。

同プロジェクトは、被災地の幼稚園〜高校に対し、
これまで、被災地域の2,562の楽器を点検、
1,459の楽器の修理を行ってきたそうです。

そして今回、8/5に仙台で行われたコンサート
School Music Revival Live」を皮切りに、
「希望の音を鳴らそう。」を合い言葉とした、
音楽を楽しむための活動をスタートさせました。

気仙沼からは、2つの学校が出演するということで、
私も仙台まで取材に出かけました。

会場は東京エレクトロンホール宮城。
坂本龍一さんの
「戦場のメリークリスマス」の演奏で、
コンサートはスタートしました。
坂本さんが演奏するピアノは、
石巻の高校で被災したものですが、
基金によって修理、補修をされ、
この日、こうして大きなステージの上で、
美しいメロディを響かせていました。

今回の出場は、被災した学校から、
吹奏楽部や軽音楽部、
合唱部やマンドリン部など23組が出場し、
さまざまなジャンルの演奏を披露しました。
学校をいくつか紹介していきたいと思います。

まずは、気仙沼市立津谷中学校吹奏楽部。
仙台の聖和学園高校と一緒に、
「銀河鉄道」というコンクール課題曲を演奏します。
「うまくなりたい、向上したいという気持ちは
誰にもまけない子どもたち」と、
校長先生からの激励のメッセージも紹介され、
ジャケット姿の高校生に混じって、
白いワイシャツの中学生たちが、
素敵な演奏を披露してくれました。

そして、次にご紹介するのは
宮城県気仙沼高等学校軽音楽部です。
バンド名は「かなえっ子U」。
かなえっ子、というバンド名は、
A、B、C……と代々受け継いできたものだそうで、
彼らはU=21代目ということだそうです。
気仙沼ではなぜか、先輩後輩の関係が、
大人になってからも続くことが多いので、
気仙沼らしくて面白いなぁと思いました。

曲はオリジナルで、
震災後に作ったものだそうです。
パワフルでかっこいい演奏を見せてくれました。
若いって、すばらしい!

私が個人的に大好きになってしまったのが、
宮城県白石工業高等学校軽音楽部、
MONGOLIAN DEATH WORMです。
「モンデスって呼んでください!」と、
イントロから「モンデス!」コールをあおります。
演奏曲はAC/DCの「Whole lotta rosie」。

司会のつるの剛士さんに
「AC/DCなんて聴くの?」と聞かれると
はい!と答える彼女たち。
きっかけは顧問の先生に薦められ、
以降、ハードロック好きの先生の影響で、
レッドツェッペリンや、
Rainbowを聴くようになったそう。
ミニスカート、ショートパンツに
光る角のカチューシャをつけた彼女たち。
演奏も上手で、私だけでなく、
会場のお父さん方は
ガッチリ心をつかまれたはずです。

そして、郡山市立安積中学校合唱部は、
「エレミアの哀歌」という
正統派の合唱曲を披露しました。
中学生というのに驚くほど堂々たるものでした。
代表でインタビューを受けた女の子は、
新しい仲間も加わったけれど、
県外に越してしまった友達もいて……
と話したところで、声を詰まらせてしまいました。

「それでも私たちは合唱を愛していて、
今をがんばっているということを
音楽で伝えていきたい」

そう言ってインタビューを終えた彼女。
原発のこと以上には
なかなかスポットがあたらない今、
福島で一生懸命部活を続けて、
音楽を奏でている彼女たちの姿を教えてくれました。

震災によって、
仲間がバラバラになってしまったり、
練習場所が使えなくなってしまったり、
楽器が壊れてしまったり、
いろんなことがあったみんな。
ステージの上で、
本当に楽しそうに演奏していました。
この日の音楽は、どれも素敵でした。