ただいま製作中!ただいま製作中!

2018/11/28 22:41
akiko.kusaoi

万葉集と
シェイクスピア

ほぼ日の学校
万葉集講座の第1回は、
言語と時代の壁を軽々と乗り越えて、
国文学と英文学が
幸せな出会いをするのを
受講生みんなで目撃しました。
しかも、何度も笑いながら。

冒頭、万葉集研究を専門とする
上野誠さんが、
古語の活用暗記みたいなもので
いかに古文の授業がつまらなくなるか、
古典の本質、あるいは
かたる、はなす、うたうことの
根源的喜びはなにか、
といったことを話してくださいました。

断片的知識を覚えるのではなく、
古くからある言葉を知ることで
眼の前のことを整理して
理解できるようになる。
それが古典を学ぶということ。
という説明のあとで、
文字が確立する前は
「口だて」で伝えられた歌を
耳から味わってみましょう、と、
若き日、上野さん自身が
万葉集のおもしろさに目覚めた歌を
紹介してくださいました。

君が行く
海辺の宿に
霧立たば
我が立ち嘆く
息と知りませ

(あなたが行く海辺の宿で
霧がたったならば、
私が嘆く息が霧として
立ち上っていると思って、
私のことを思い出してください)
新羅(しらぎ)に送られた
遣新羅使の夫か恋人の身を案ずる
女性の歌だそうです。

「意味がわかると、
体に染み渡ってきますね。
『こんな手紙もらってみたい』と
思ったら、古典が身についたと
考えればいいんです」と、上野さん。
柔らかい古典の学び方を
教えていただいた気がします。

そして後半は、
シェイクスピア講座講師、
河合祥一郎さんがゲストとして
加わって、
恋、死、人生というテーマに沿って、
それぞれシェイクスピア作品と
万葉集から選んだ言葉や詩、歌で
掛け合いが繰り広げられました。

上野さんが
「恋の道に狂うでないぞ」という
和歌を紹介すれば、河合さんが
「シェイクスピアはむしろ
『みんな恋に狂おう』と言っている」
と返したり、
今とちがって死が身近だった時代、
死を考えながら生きていた人々の
共通性に納得したり。
洋の東西を超えて、
歌を詠った知性ある人々に
共通する人生哲学が
浮き彫りになって、
あっという間の2時間半でした。