ただいま製作中!ただいま製作中!

2021/10/29 21:00
akiko.kusaoi

紙の本という文化

ポートビルではじまった
フェニックスブックスフェア、
初日の本日夕方、
「出版の『文化』を未来に手渡す」
と題して、最初のトークがありました。
登壇くださったのは、橋本治さんの
『人工島戦記』を出版したホーム社の
文芸図書編集部出版統括プロデューサー
増子信一さん。
お互いに編集者として駆け出しの頃から
かれこれ40年来の仲間というを相手に、
出版のこれまでとこれからを
語り合ってくださいました。

スター作家たちが交代で編集長を務めた
「面白半分」や、村上春樹さんも参画した
「ハッピーエンド通信」といった
1970年代から80年代の伝説の雑誌の話から、
「会いたい人に会おう」と大物作家たちに
面会を申し込み、「いい度胸してるな」
と言われた新人編集者の頃の話など、
当時の雑誌の勢いを感じる逸話や、
当時から橋本治さんという才能が
どれほど注目を集めたか、など
興味深いエピソードが次々と
飛び出しました。

感銘を受けたのは、
『人工島戦記』という破格の本を
出版するにあたって、
デジタル技術などまだどこにもなくて、
手書き原稿を手打ちして、
活字を組んできた時代から
本の世界で生きてきた増子さんの
昔ながらの知識と経験が
少なからぬ役割を果たしたこと。

そして今また、加賀乙彦氏の
長編小説全集を紙の形で残したいという
「作家の悲願」を叶えるべく、
作品社から全18巻の全集を刊行中という
増子さんのお話から、
紙の本という「文化」を死守し、
次の世代に伝えていくのだという
強い意思を感じました。

こうしたお話に触れてから
紙の本を見ると、
愛おしさが倍増します。

が書いていたとおり、
明日は3つのトークを予定しています。
ご都合の良いときに
お話を聞きがてら、
ポートビルに遊びに来てください。