社長に学べ!

保険つきのパンツを開発してくれ

安森

でも、有楽町の西武では、
そのほかにも、いろいろ勉強になりましたね。

「これからの時代はモノを売るんじゃない」‥‥。
糸井 「コトを売るんだ」と。
安森 そう。
糸井 一時代を築いた百貨店ですから、
おもしろいですよね、やっぱり。
安森

うん、今から思えば、おもしろいんです。

でも、当時のぼくにしてみたら
「コト」なんか見たこともないんですよ。

「モノ」しか知らないのに、
「キミ、こんどは保険を売りなさい」って。
糸井 ええ、ええ。
安森

だからね‥‥。

「会長、たいへん申しわけないけれども、
 わたくし、モノしか見たことがございません」
 
「つきましては『保険つきのパンツ』を
 開発していただけましたら、
 わたくし、本当に一所懸命がんばって売ります」

‥‥と。
糸井 おもしろいなぁ(笑)。
安森 ‥‥さすがに、当時の会長には
諦められてたかもしれないね、ぼくは(笑)。
糸井 でも、農家へのあいさつまわりをしていた
筑波西武から、
とつぜん、銀座のど真んなかの有楽町西武に
出ていったわけですよね?
安森 うん、でも、お店においでくださる
お客さまって、
どこのお店だろうが、同じですから。
糸井 ‥‥そういう話が聞きたかったんですよ。
安森 え、なんで?
糸井 ロフトの創業社長に聞く、
「筑波と銀座のお客さまが、どう同じなのか」。
興味深いじゃないですか。
安森 おんなじですよ、そりゃ。
糸井 どのように。
安森

だってさ、お客さまのほしいものがお店にあって、
それが適正な価格で
気持ちよいサービスで提供されることの価値って、
場所がどこであれ、変わらないですよ。

それに、気持ちのよいサービスって、
「あなただけ、特別よ」ってことじゃないでしょう。
すべての人に同じサービスが
きっちりなされていることが大切なことであって。
糸井 銀座だろうが、どこだろうが。
安森

ぼくはね、お客さまというのは
われわれのところに
ほしい商品をお求めに来てくださるのであって、
それ以外の何ものでもないと思ってる。

それをね、
小むずかしくマーケティングだのなんだのって、
どうでもいい話なんですよ、ぼくにとっては。
糸井 うん、うん。
安森

大金持ちのお客さまも、そうじゃないお客さまも、
当店にお越しいただいたら、まったく同じ。

それが、いちばん大事なことだと思うんです。

そのうえで、
たとえば「100万円」お買い上げくださった
お客さまには
ちょっぴり多めにサービスして差し上げるとか、
そのくらいはあってもいいとは思うけど、
極端にね、ちがえることない。

そういう考えかたが、基本的なベースとしてある。
糸井 なるほど‥‥。
安森 筑波に限らず、地方に出ていったときにはね、
「地元の人間じゃないからな」って、
まずは、そういう見方をされるわけですよ。
糸井 しかたないですよね、それは。
事実ですし。
安森 でも、わたしたちは、
「お役に立ちたい、筑波に住みたい」と言って
東京からやってきてるわけです。
糸井 ええ。
安森

そうである以上、
「店長さん、ここに骨埋める気か?」と訊かれたら、
「埋めます」と。

「黒字になるまで帰ってくるなと言われてるし、
 片道切符できましたから」と。
糸井

つまり、この人たちは
ここに、どれだけ長くいるのか、いないのか。
信頼に足りるか、足りないか。
約束を守ってくれるか、くれないか‥‥。

そのあたりを、見られているわけですね。
安森 そう、でもね、いったんお客さまと
そういう信頼関係をつくりあげられたなら‥‥、
もう「買いものはぜんぶ西武」になる。
糸井 ‥‥ほう。
安森 そこはもう、簡単には、揺るぎません。
<続きます!>
2008-08-08-FRI
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