安森 | 笑うけどさ、イトイさんだって、当時は 「糸井先生」って呼ばれてたんだから |
糸井 | あははは‥‥調子いいなぁ。 |
安森 | でもさ、オレはね、 「おいしい生活。」ってコピーを見たときは なんなんだこれはと思ったね、悪いけど。 |
糸井 | すいません(笑)。 |
安森 | 当たり前のこといいますけど、 「おいしい」ということばはですよ、 食べものにかかる形容詞です。 |
糸井 | はい。 |
安森 | 「生活」とか「暮らし」を 修飾することばじゃないわけです。 |
糸井 | もっともです。 |
安森 | ‥‥それなのにね、下の娘がね、 |
糸井 | あはは、よかった(笑)。 |
安森 | それで「‥‥かっこいいんだ」と。 |
糸井 | なんだか恐縮です。 |
安森 | それで、こんどは、ぼくがやっていた 筑波西武のコピーを、書いてもらってね。 |
糸井 | ええ。 |
安森 | 「お役に立ちたい。つくばに住みたい」と。 |
糸井 | はい。 |
安森 | 「おいしい生活。」とは、ぜんぜん変わってんの。 |
糸井 | あはははは(笑)。 |
安森 | これはもう‥‥まいったね。オレは(笑)。 |
糸井 | 結局、筑波にはどのくらいいたんですか? |
安森 | 2年間、開店準備で、開店してから2年半。 ですから、4年半ですかね。 |
糸井 | そのあとが‥‥有楽町西武? |
安森 | うん、これがまた魑魅魍魎の世界というかね(笑)。 |
糸井 | 狭い店内に、旅行や保険なんかも いっしょに売ってましたよね。 |
安森 | そう「かたちのないものを売るんだ」とか言って。 で、糸井さんの考えたコピーが、えっと‥‥。 |
糸井 | 「ほどよい狭さの、大世界。」‥‥だっけ? |
安森 | そう! ほどよい「狭さ」って‥‥。 まぁ、店の実態そのものなんだけどさ(笑)。 |
糸井 | 地下が「酒蔵」になってんですよね。 |
安森 | 全国から地酒を集めたんですよね、地下に。 |
糸井 | そうなんですか(笑)。 |
安森 | だって、全国の蔵元さんが 営業用に「どうぞ」って持ってくるんだから。 |
糸井 | なるほど。 |
安森 | 腐らせちゃいけないと思ってさ。 |
糸井 | タイヘンな仕事ですよね(笑)。 |
安森 | そのときにね、日本酒については、 いろいろ勉強できたんだけど、 最後までよくわかんなかったのが、ワインかな。 |
糸井 | ああ‥‥あれは、ぼくなんかからみると、 なんだか「絵画」とかと おんなじような感じがしますけどね。 |
安森 | ‥‥絵画ね。 |
糸井 | 絵画といえば、西武は「アート」もさかんで。 |
安森 | 当時、会長だった堤清二さんにお会いしたときに 「あなたのようにアートに造詣が深い人を このお店に迎えられてうれしい」と 言われたんですよ、ぼく。 |
糸井 | すごいじゃないですか。 深いんですか、造詣? |
安森 | 会長にはたいへん申しわけないんだけれども、 そのへんに飾ってあった絵画のね、 どっちが「天」でどっちが「地」なのかすら、 わたしには、わかりません‥‥と。 |
糸井 | いいなぁ(笑)。 |
安森 | だって「銭勘定」するためにいるんですから。 基本的に、わたしは。 |
糸井 | そうですよね、その役割ですよね。 |
安森 | 絵画の鑑賞するためにいるわけでは‥‥ない。 |
糸井 | 全国の地酒の味は鑑賞するけれども。 |
安森 | まいったな(笑)。 |
<続きます!> | |
2008-08-07-THU |