糸井 |
スープの作り方などについて
目で見て、食べて覚えていくと
おっしゃいましたが、
ノートなどには記さないんですか?
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河原 |
ノートも、あります。
も、あるんですけども、
やっぱり自分で見て試して、
経験として覚えていることのほうが多いですね。
もう何百種類って作りましたから。
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糸井 |
そうですかー。
ぼくは料理はあまりしないんですけど、
唯一、煮物みたいなものだけ好きで。
ジャムを作ったりするんです。
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河原 |
いいですね。
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糸井 |
で、この間、再現性を高めるために、
レシピをつくったんですよ。
これをこうして、次にああしてっていう、
ジャムをつくる行程を
ひとつずつきちんと洗い出して、
ノートにつけていったんですけど、
いかに、ふだんでたらめに作っているかって
いうことがわかりました(笑)
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河原 |
ははははは。
そうそう、だいたい感覚なんです。
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糸井 |
ただ、考えなしにジャムを作っても、
うまいことはうまいんですよね。
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河原 |
ええ、そうでしょうね。
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糸井 |
レシピ通りに作れば、
確実にうまいジャムはできる。
けれども、
感覚でつくったときのジャムでも、
レシピ通りのジャムと似ているけど違う
おいしいジャムがあると思うんです。
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河原 |
ありますね。
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糸井 |
それって何なんだろうなと思ってて。
不思議でしょうがないんです。
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河原 |
あー、自分の中では、
それは要所要所のポイントだと思っています。
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糸井 |
ほぅ。
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河原 |
「一風堂」のメニューは何十種類もありますが、
その全てにレシピがあります。
でも、レシピには、
こと細かに手順が書いているわけではなくて、
ポイントになることが書かれています。
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糸井 |
じゃあ、「一風堂」の店舗に行ったときとか、
俺が作ったらもっとうまくできるって思います?
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河原 |
あー、いつも思います。
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糸井 |
いつも、思いますか。
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河原 |
いつも、思います。
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糸井 |
おもしろいなー(笑)。
それ、なんなんですかね。
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河原 |
んー、やっぱり、
楽しい環境に人が来るとね、
脳にはエンドルフィン(?)とかが出てくるし、
体も活性しますよね。
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糸井 |
はい。
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河原 |
食べに来た人はもともとお腹が空いてるし、
食べたいっていう欲求が高まってる。
で、お店に入った瞬間に、
その「食べたい」が(パチンと指を鳴らす)、
この空間で食べたらもっとうまいだろうなと
思わせることができたら、いいんですよね。
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糸井 |
なるほど。
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河原 |
質問とは違った答えかもしれないんですけど、
まずそこからですよ。
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糸井 |
まずは、環境を整えることから。
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河原 |
それはとても重要だと思います。
いらっしゃいませっていうことから、
その人とコンタクトが取れてる。
初めてお店に来た人でも、
「あ、このお店の人は、よさげな人ね」
「ここで食べるとおいしそう」って思わせる。
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糸井 |
お店に入ったときから、
食べ始めてるんですね。
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河原 |
そうです、そうです。
糸井さんと河原は、今ここで接点がある。
だから俺はね、糸井さんが望む
おいしいものを作れると思ってる。
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糸井 |
うんうんうん。
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河原 |
でも、これが画面になったら
ちょっと難しいですね。
画面になると、やっばり、
伝えようがないんですよね。
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糸井 |
実際に、いないとだめなんですね。
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河原 |
そう、いないとだめですね。
アナログなんです。
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糸井 |
それはやっぱり、
人は、ただ単純に言葉による情報だけを
やり取りするだけじゃなくて、
その「情報」って呼ばれないものも、
やり取りしてるからですよね。
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河原 |
ええ、そうですね。
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糸井 |
食べ物もそうですね。
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河原 |
もう、まさに。
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糸井 |
そう考えると、
捕虜に与える最初のご飯なんていうのは、
絶対むずかしいですよね。
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河原 |
ほぅ。
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糸井 |
捕虜になった人に、最初にご飯を与えるからって、
捕虜は食えてうれしいとは限らないですよね。
とくに食文化が違うと、むずかしい。
たとえば、
捕虜は中華料理をずっと食べてきていて、
与えられた食事が和食とかだったら、
おいしくないと思うかもしれない。
食材も味付けも違うわけだし。
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河原 |
ほんとですね。
考えたことなかった。
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糸井 |
環境を整えることを
考えてる人と考えてない人じゃ、
お店の雰囲気とか、すごく違うでしょうね。
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河原 |
もう、ぜんぜん違いますね。
ラーメンを食べたい人と対峙したときから、
その人と味の調和みたいなものが始まってる。
その空間の共有が、本当に大切ですね。
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糸井 |
そうですね。
(つづきます) |