糸井 |
店舗数としては、
「一風堂」がいちばん多いわけですよね?
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河原 |
そうですね。
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糸井 |
で、「一風堂」には
新しいニュースはそんなにないけど、
しっかりとお客さんが付いてて、
ラーメンを食べに来てくれてる。
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河原 |
はい、ありがたいことです。
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糸井 |
そういう安定した状態を
ありがたいと思うと同時に、
開発してきたご本人は退屈になるんですか?
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河原 |
あーそうですね、
自分が飽きっぽいのはあるかもしれません。
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糸井 |
会社は飽きたっていわないですもんね。
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河原 |
うーん、でもやっぱり、まだまだ
「一風堂」もできあがってませんので‥‥。
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糸井 |
あ、そう思われているんですか。
でも、あんなに安定しているのに、
すごく変化させることはむずかしいですよね?
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河原 |
そうですね。
「一風堂」のメニューとか、
商品はよく変化させるんですけど。
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糸井 |
よく存じております(笑)。
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河原 |
(笑)
あのー、この対談のいちばん最初に、
ラーメンは情報になってしまったって、
話したじゃないですか。
やっぱり、そうじゃなくて、
あのラーメン屋行こうぜっていって、食べる。
情報じゃなくて、
ちゃんとラーメンを体験してもらえる店を
作りたいんです。
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糸井 |
ちゃんとラーメンを食べる店。
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河原 |
ちゃんと、お客さんの中で
あそこの店のラーメンが食べたいって
決まってるんです。
「なるほど、こんな味か、わかった」っていう
ラーメンの情報を仕入れるだけじゃなくて、
あの店のおばさんの接客を見に行くとか、
この店のおっさんが
相変わらずダサくておもしろいとか。
で、ラーメン食べて、あぁうまかったって帰る。
そういう店を作りたいんです。
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糸井 |
はい、はい。
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河原 |
一次情報ですよね。
誰かの情報を見て、
自分に引き寄せるんじゃなくて、
自分が食べたもの、見たもので判断していく。
そういうものを、俺から出していきたいんですね。
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糸井 |
もう、体ごとですよね。
ライブが流行ってるっていうのは、
そこだと思います。
この間、ぼくが監修して出した
『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』
っていう本があるんですけど、
グレイトフル・デッドっていうバンドは、
ライブを楽しくやれるっていうことを
ずーっと守ってきたんです。
ライブが楽しくできればいいから、
お客さんがそれを録音するの、
オッケーしちゃうんです。
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河原 |
ほおー。
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糸井 |
録音するのにいい場所まで、用意したんですよ。
で、素人が撮った海賊版が
いっぱい世に出たことが
逆にチラシ代わりになって、
ライブのチケットはいつも売り切れ。
この楽しさは体験しなきゃだめだって、
お客さんが思ったんですよね。
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河原 |
すごい人気に。
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糸井 |
うちにレコードがあるからライブはいいやって
なっちゃってたら、グレイトフル・デッドは、
もう商売になんないんですよね。
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河原 |
飲食店舗、ラーメン屋も含めてですが、
食を体験できるようなところが、
やっぱり伸びてるんです。
飲食業でも、
一次情報の発進力で勝ってるところが
流行ってますね。
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糸井 |
いわば、ライブ感のある店ですね。
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河原 |
そうそう、ライブ感のある店。
今の「一風堂」に足りないものは、
ライブ感なんです。
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糸井 |
ラーメン屋のライブ感が足りない。
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河原 |
そうです。
たとえば、スープを店で作るのと、
工場で作ったのを温めてだすのとでは、
ライブ感がぜんぜんちがう。
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糸井 |
違いますね。
「一風堂」のスープは工場で作ってるんですか?
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河原 |
店舗で作ってるところと、
工場のものを使っているところがあります。
最初は店舗で作っていたんですが、
スープを各々の店で作ると、
味にブレができてしまうんです。
なので、ある時期から
工場で一気にスープをとって、
それを店に配送するようにしました。
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糸井 |
味のブレは、気になりますよね。
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河原 |
これも最初はずいぶん試行錯誤して。
工場でもおいしいスープは取れますが、
その場で作っている感じ、
つまり、ライブ感がなくなりますから。
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糸井 |
悩んだでしょうねぇ。
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河原 |
で、今、やっぱりラーメン屋には
ライブ感が必要なんじゃないのって考えていて。
全店でスープをとろうぜって話をしてます。
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糸井 |
うん、やっぱりライブ感は欲しいですよね。
あの、わさわさ揺れた感じっていうか。
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河原 |
まずは、「一風堂」全店にスープ釜を置いて、
もういっぺん、わさわさした感じとか、
がさがさした感じに置き換えていく。
「一風堂」がライブ感を取り戻せれば、
何とかなっていくんじゃないかなと思うんです。
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糸井 |
うん、うん。
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河原 |
だけん、そのエネルギーのもとを作るために、
原点になるようなラーメン屋を
俺に新しく1軒作らせてみないかといってます。
で、俺が作りたかったラーメン屋って
こんなんだよっていうのを
スタッフとか、みんなに見てもらって。
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糸井 |
はあーー。
エネルギーの源になるお店ですか。
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河原 |
俺が考えてる商品は、もうできてるんです。
でも、これを「一風堂」で出したら、
「一風堂」じゃなくなってしまうんです。
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糸井 |
それはだめだ。
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河原 |
やっぱり、ライブ感を出すためには
商品を180度変えないかんけん。
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糸井 |
だから、もう1軒新しい店を作って、
別の照明を当てたいんですね。
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河原 |
そうなんです。
そして、スタッフたちと、
こういうライブ感のある店を作っていくぜ。
それが俺たちのコミュニティだ、みたいなことを
いっていきたいわけですよ。
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糸井 |
なるほどー。
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河原 |
やっぱり現場仕事の立ち上げとか、
やりたいことをする機会が少ないと、いかんね。
自分のエネルギーがどんどんなくなっちゃう。
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糸井 |
プレイヤーとして活躍してなきゃ、だめ。
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河原 |
そう、自信がなくなるのよ。
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糸井 |
え(笑)。
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河原 |
いや、ほんとほんと(笑)。
俺、大丈夫かなって。
国内に店はたくさんあるし、
ニューヨークの店にもいっぱい人は来てます。
でも、俺、なんもしてないもんって感じで。
やっぱり、
プレイヤーとしてグラウンドにいないと
だめなんだな、と思いますね。
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糸井 |
そうかー。
あんなに味には自信があるのに(笑)。
(つづきます) |