「これはやらなければ!」 と思うことも すべてメモに書きだすんですが、 書いた瞬間に忘れてしまいます…… だから秘書には 「ぼくを動かせ」と言ってあります。
ぼくはすぐに忘れるプレイヤーになり、 秘書がぼくのマネージャーになるんです。
メモはものすごい量になります。 年度計画も朝のメモで ぜんぶ書くときもあるぐらいですから。 ぼくのメモに書かれたチャートを パワーポイント化する人がいて、 それをぼくに持ってきてくれるんです。
それをぼくが白紙の状態で見て また筆を入れて、 そうやって戦略ができあがったり…… そういうものが、 次から次へと生まれていくんです。
未来は人に伝えにくいけど、 過去は人に伝えやすいじゃない? 過去をシェアすることによって 未来を共有できたりもするんです。
つまりそれはどういうことかというと…… 比較的最近にうちに参加したパートナーに、 いきなりぼくが 戦略的なイメージを伝えたとしても、 ぼくの言うことは飛んでいますから 「なんやこれ? 詐欺師のおっさんちゃう?」 と思いかねないんです。
だけどぼくの過去を知っている人なら 「あいつは言ったらかならずやりよるで」 とわかってくれるわけです。 だからその過去を シェアしておかないといけません。 そうでないと 話を聞いていても動けませんからね。
たとえばTSUTAYAには 千百のお店があるけれども、 直営店は百店舗しかありません。
会社の立ち位置はなにかというと、 店舗パッケージの企画、 品揃えの企画、販売促進の企画、 サービスの企画、システムの企画…… 「こんなキャンペーンをしたほうがいいですよ」 という企画を提供して、 売上に対してロイヤリティをもらう、 というメカニズムができているんです。
簡単に言うと フランチャイズという言葉になりますが、 ぼくはその言葉はあまり好きではありません。 あくまで企画を企業に 買っていただいているのであって、 だから企画を生みだすのが ぼくらの仕事だと思っています。
ではその企画をどう作ればいいのか? たとえば一か月に一店舗で 百万円売りあげがあがる企画を考えたら、 ロイヤリティとして 会社にいくらお金が入るかというと 一か月で五万円です。 これが千百店舗ですから五千五百万円です。 その企画が継続性のあるものだったら、 年間でそのひとつの企画が 六億円のお金に変わるわけです。 印税のような ロイヤリティのメカニズムがありますから。
だけどもしも その企画を生みだしたのが 入社したての若い社員なら、 日本の古い人事制度だと、 「給料は年間二四〇万円で いいじゃないですか」 という話になってきます。 だけど彼女が生んでいるのは六億円なんです。
かたや偉そうなことをいうおっさんが 「納まりがいい」というだけで 何も生まないまま年間二〇〇〇万円や 三〇〇〇万円の給料を取っていると…… これでは企画会社は成りたちません。
ただ、ある時期に それを見あわせたことがありまして…… 企画会社というと、それに憧れてくるから、 けっこう変わったやつが集まるわけ。 そうすると使い勝手が悪いのね。
小売業の経験とかを積ませると 「こんなことじゃなくて、 ぼくらは企画会社をやりたいんですよ」 みたいなことを言う若者がいまして、 ある時期に人事担当が 「社長、もう企画会社という 看板を降ろしてください」と──。