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CM制作のプロデューサーの仕事って、
「予算のないところでどうするか」とか、
そういうことばかりでしょう。 |
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ええ。人に話をするときには、
まず嫌なことから、
つまり、お金の話からしなきゃいけないんだ、
ということを
そのとき痛いほど学びました。 |
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おもに、製薬会社や自動車メーカーの
仕事をしていました。
自動車メーカーの仕事は、CMじゃなくて、
本社1階フロアの展示映像をすべて
やらせていただいたんです。
課長あたりの方が決裁権を持ってて、
「やれ、やれ」「やりたいからやるんだ」
とか、そういう感じがあって、
みっちりと仕事をさせていただきました。 |
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その、「みっちり仕事」は
たのしかったでしょうね。 |
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たのしかったですねぇ。
ものづくりっていいな、と思いました。 |
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そこの方は「うちに来ないか」とまで
言ってくださいました。
だけど、そこで「ものづくり」を経験したことで、
ぼくはメーカーに行きたいと思ったんです。
つくること、そして
それが目の前で消費されていくことがやりたい。
そう考えて、制作会社を辞めて、職を探しました。 |
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無鉄砲なタイプでしたからね。
3か月ぐらい経つと、
お金がなくなってきました。
試験に行く電車賃がなくなり、
ラジカセを質屋に入れて
面接に出かけたりしました。
「あ、どうしよう。やばい。
仕事が見つからない」 |
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そこから、人生がいろいろと転がりまして‥‥
ぼくが転職活動していたのは、
アサヒビールが
「スーパードライ」を出して
2年目にあたる年でした。
「スーパードライ」は、
飛ぶ鳥を落とすような勢いだったんです。
キリン一辺倒だったビール業界が、
そうじゃなくなった時期で。 |
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そこで、
「アサヒビールが、保有不動産を開発する
アサヒレジャー開発という子会社を
作りました」
というような記事が出ていました。
社員も募集していたので、
試験を受けることにしました。
それが話がどこからかコロッと変わりまして、
ぼくはアサヒレジャー開発という会社に
入るつもりだったのに、
いつの間にかアサヒビールの
本社入社になっていたんです。
試験の3回目の段階で、
副社長面接だったんですよ。早い早い。 |
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「スーパードライ」は
本当にすごかったですからね。
‥‥そういえば、アサヒビール会長の樋口さんと
野球場で会ったことがあります。
野球場で、やたら
ビール飲むオヤジがいたんですよ。 |
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球場の客席によく知らない夫婦が座ってて
スーパードライの売り子さんが来たら、
とにかく「おっ!」と言って
うれしそうにいちいち買うんです。 |
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3杯目か4杯目かを買うときに、
「いかがですか」って
ぼくにビールを差し出してくださいました。
それが実は樋口さんだった。
なんて言ったらいいでしょうね、
とにかくあの人は「地面」で仕事されてますね。 |
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そうなんですよねぇ。
ぼくはエレベーターで、
社章をつけてなくて怒られました。
「ちょっと来い!」と言われて、
この人誰だろう?
って思ったら、それが樋口さんだった。
電話も、よく直接掛かってきましたよ。
「樋口だ」
「すいません。どちらの樋口さんですか」
「アホか!」 |
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球場でお会いしたとき、樋口さんは
とてもおやさしそうに見えましたが
怖いときは怖いですか? |
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怖いときは怖かったです。
特に、当時のアサヒビールは
すごく熱があったと思います。 |
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そうですね。
どん底を経験してますから。
なぜぼくが当時、どさくさにまぎれて
入社できたかというと、
アサヒビールに、ぼくの年代の人が
すごく少なかったからです。
ビールが売れず、工場を売却してリストラやって、
新卒採用が8人だけの世代だったんです。
その「8人」も、酒屋さんの息子とか、
アサヒビール入りゃビールがただで飲めるだろう
とかいう、不埒な考えで入ってきてる
連中ばっかりでした(笑)。
その新卒8人が、
働き盛りの30代前になったとき、
人口分布的に「やばいぞ」と
いうことになったんです。
もう、スーパードライも売れるし、
猫の手も借りたい状態。 |
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ぼくは、キリンのほうの仕事をしてたから
スーパードライが出てきて、
みんなが「負けるか」って
思ってたところにいました。
ものすごくおもしろかったですよ。 |
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(つづきます) |