「まず、サービスのヒントを出すのが上手なお客様。
手渡されたメニューをたのしそうにみつめながら、
ここぞというタイミングで顔をあげ、
私たちの方をみてニッコリ微笑む。
そのニッコリがほんの少しだけ戸惑いに満ちたものなら、
何か質問をなさりたいから。
そのほほ笑みが自信に満ちた明るいものなら、
ご注文が決まった合図。
料理がひとつ片付いたら、
ナイフとフォークをキレイに揃える。
そして私たちを探してニッコリ。
それが、お皿を下げてくださいませんか‥‥、
と次の料理への準備を促す合図にもなる」
テーブルマナーのさまざまは、すべて
「サービスのヒントを正しく出すための」
キッカケの集大成でもあるんですよネ‥‥、と。
「海外旅行が好きな方が、海外の、
特にアメリカのサービスはすごくいいねぇと
おっしゃるコトがよくあります。
笑顔がとびきりで、フレンドリーでわかりやすい。
はじめて行ったお店でも
まるでおなじみさんであったかのように
もてなしてくれて、
しかも店中の他のお客さんもサービスをたのしんでいる。
『アメリカ人ならではの気質なのかなぁ‥‥』
『それとも、やっぱりチップのある国は
サービスがよくなるのかねぇ‥‥』と、
それに比べて日本のサービスは
地味でわかりづらいというような、
お叱りを頂戴することもございます」
たしかに自分のサービスがチップの多寡によってすぐに、
しかも直接的に評価されると、
いいサービスをしてやろうと一生懸命になれるという、
アメリカのような国のサービスはわかりやすい。
けれど本当に素晴らしいのは、欧米のお客様の
「いいサービスをたのしんでやろう」という参加意識。
サービスは受けるものではなくて、してもらうもの。
私たちのようなプロの知識と経験を、
引き出してやろうとさまざまなキッカケを
作ってくれるところなのです。
「海外に行くとメニューに写真がのっていることは
ほとんどないでしょう?
それぞれの商品がどんなものなのか、
イメージできなければお店の人に聞くしかない。
ニッコリしながら
『このお料理はどんな料理でなのですか?』
と聞いてくだされば、そのお料理がどんなものか
説明すると同時に、どんな料理やワインと合うのか、
あるいはそのお料理に似ている
今日のオススメ料理を伝えることができるのです。
質問はよいサービスへの最高のキッカケ。
なのに日本の方々は、質問するのが面倒なのか、
恥ずかしいのか、写真のメニューを好まれる。
そうして、良いサービスのきっかけを
自らの手で潰してしまう。
勿体無くてしょうがないとは思いませんか?」
いいサービスはお金で買うものじゃない。
いいサービスは待っていればやってくるものでもない。
笑顔と質問、楽しんでやろうという参加意識を持つことで、
勝ち取るものだというのです。
「そして実はもうひとつ。
大切なことがございます‥‥」
続きは来週といたしましょう。
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