「感性の言葉を使わないこと」 は、すごく重要なんです。 感性を、職能にしているからこそ、 感性でないところで 「なぜ、このデザインなのか」と、 言葉を共有していかなければならないのです。 相手に言われたことがわからなければ、 「わからないです」 と、ちゃんとききなおして、 仕事のはじまりには、まずは、おたがいに 話していることを理解しあいますよね。 その次には、 「どれだけ、相手の話をきいてゆくか」 が、重要だと思っています。 単純に言えば、 思ったり考えたりしていることを ぜんぶ伝えていただく。 たとえば、 自分の提案したデザインについて 思うことは、できるだけ、 ぜんぶ吐きだしてもらいたいと思います。 相手が話す "10" のなかで、"9" を、 こちらが誠意を持ってうかがうとします。 そうしたら、相手のかたも、 "1" は、こちらの言うことを、 きいてくださるんです。 「言いたいことなら、 もう、ぜんぶ言いました」 という状態になれば、 ふつうの人なら、気持ちが解放されます。 すると、次は、 きく立場にもなってくれますよね。 こちらの言うことをきいてもらえるのは "1" でも、かまわないんです。 その "1" に、いちばん肝心なところを乗せればいい。 「これは、絶対に、ハズさないほうがいい」 と真剣に思う "1" のことを伝えると、 それを、非常に前向きなかたちで きいてくださることが多い、と実感しています。 いちばん肝心な方向性を、きいてくれるかどうか。 これは重要だと思います。 だから、相手にきく姿勢ができていないうちから 「まだ、言いたいことがあるんだ」 というときに何かを話しても、 相手の心に、はいりません。 相手が悩んだら、 ぼくは、けっこう、いっしょに悩むんです。 「悩んでいるところなんか見せたらダメだ」 と言うクリエイターや、デザイナーや アートディレクターも多いと思うのですが、 ぼくは、そうは考えません。 だって、ほんとにむずかしいことだから、 相手も、悩んでいるんです。 「ほんとにむずかしいですねぇ……」 「どうしましょうかねぇ……」 ポーズでも何でもなく、 ほんとに、一緒に悩んでしまったりする。 でも、一緒に悩むと、安心しますよ。 「相手も、悩んでくれているんだ」と。 それで、その先に、 「じゃあ、どうしましょうか」 という話を一緒にして、 方向を探していくようなところがあります。