糸井 |
スコップ団は、思いきりのいい活動です。
おなじようなボランティアの活動でも、
「手伝ってるはずなのに自分が主役になる人」
「もっとお礼を言われるように
気持ちが入る活動」
などが、ずいぶんあると思います。
けれども、スコップ団はほんとうに、
風のようにやってきて風のように去っていく。
自分たちの形跡をなんとか残さずに
活動だけしていく。
気持ちいいです。
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平 |
スコップ団の人たちは、いいも悪いも、
「その中で自分はどう生きていくのか」を
考えることになってしまったと思います。
「自分だけでいいや」と思った人は
やっぱり、いないんじゃないかな。
こう言うとほんとうに、
精神論みたいになって嫌なんだけど、
泥を掘っているうちにわかってくるところが
自分にもありました。
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糸井 |
いいことしてる、というのと
かっこつける、というのって、
違うでしょ?
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平 |
違いますね。
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糸井 |
僕らはやっぱり、
かっこつける側の活動を喜びました。
いいことしてると思いすぎた人たちがどうなるか、
それに対する恐怖があったから。
しかし‥‥平さんは、そのことを
もともとどこで覚えたんだろう?
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平 |
覚えた、というより
決めてからはじめたんですよ。
たまたまテレビでニュースを見まして。
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糸井 |
どんなニュース?
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平 |
物資を運んでったけど
お礼を言われなかったから腹を立てている、
というニュース。
コメントをしてる人を見て、
俺は「危ねぇ!」と。
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糸井 |
うん、危ねぇと(笑)。
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平 |
「こいつ、かっこ悪いな!」
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糸井 |
うん(笑)。
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平 |
「そこが目的じゃなくはじめたくせに、
君、ずいぶん変わってきとるね」
と。
結婚するときに、
愛さえあればいいと言ってたのに
お金がなくなって、だめになったりする、
あれじゃないか(笑)。
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糸井 |
うん、うん(笑)。
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平 |
「最初はそれだけでよかったはずなのに」
というところを忘れる人は、
やっぱりだめになってしまうんだ。
お礼を言われることが
僕らの目的じゃないんだったら、
お礼を言わせないシチュエーションに
してしまえばいい。
それが早い。
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糸井 |
うん。仕組みとしてね。
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平 |
「お礼言ったら、悪いが俺たちは帰る」
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糸井 |
だから、スコップ団は
すぐに去るんだ。
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平 |
はい。僕たちは
かっこつけることにしました。
かっこ悪いのは
かっこつけてないからかっこ悪いんです。
意識してないと人はどんどん
かっこ悪くなってしまう。
つまり、自分のことだけ、家族のことだけを
考えるとかっこ悪い。
考えるキャパシティを
広げていくといいんだろうけども、
その根本にあるのはやっぱり
生きて、人と接していく中で
とにかくかっこつけないといかん、
ということです。
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糸井 |
だめになっちゃう可能性って、
自分の中にも見るわけですよね。
「こんなはずじゃなかったのに」
ということになる可能性があるから、
ピシッとしなきゃ、と思う。
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平 |
うん、そうです。
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糸井 |
その繰り返しなんだよね。
もう少し言うと、
頼まれること全部を
引き受けるのも、だめになります。
「いい顔」はできるんだけど、
その「いい顔」で結局、
嘘つくことになったりするから。
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平 |
はい。
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糸井 |
それをひじょうに恐れますね。
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平 |
いつかは期待に応えられない要望が出ますから、
そんときどうすんの、と。
で、それができないと、今度は一変して
「なーんだ、たいしたことないんだ」
ということになっちゃう。
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糸井 |
うん。とてもよくわかります。
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平 |
みんなだいたい、何かをはじめるときには
希望とか、やりたいこととか、
いいことばかりを考えましょうとか言う。
もちろんそれはいいと思います。
しかし、僕はほんとうに、
自分の人生の中でやりたくないことを
真剣に考えたときがありまして。
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糸井 |
ほう。
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平 |
それは、人殺しと、放火と‥‥
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糸井 |
うん。
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平 |
あと、やりたくないことがいくつか、
やっぱりあったんです。
そうやって、ほんとうにやりたくないことを
真剣に考えたとすると、
それ以外は全部やりたいことになります。
丼ものの中で嫌いな具材があったら、
先に食べてしまえば、あとはもうハッピー(笑)。
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糸井 |
うん、自由が増えますよね。
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平 |
嫌な電話は午前中に終わらせるとか、
そういうこととおなじです。
そうやって詰めて考えた結果、
俺はかっこ悪いのがいちばん嫌なんだ、
とわかりました。
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糸井 |
そういう子になるきっかけがあったのかな。
負けず嫌いだったの?
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平 |
負けず嫌いでしたね。
‥‥うん、負けず嫌いでした。
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糸井 |
でも、
負けず嫌いでも負けるじゃない?
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平 |
勝つまでやればいい。
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糸井 |
勝つまでやめなければいいんだ。
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平 |
だから、ケンカも負けたことないです。
その場で負けても、負けない。
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糸井 |
またやればいいんだもんね。
サドンデスだよね。
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平 |
そうですね、はい。
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糸井 |
いま、平さんがやってることも
似てますね。
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平 |
うん。あきらめなければできる。
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糸井 |
スポーツでもなんでも、
「負け」というのはゲームセットがあるから、
9回裏という区切りがあるからですね。
10回やっていいんだよ、と
自分で決めればいいんだもんね。 |
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