僕たちの 花火の連絡、 見えますか。  スコップ団 平了+糸井重里 対談
第5回 イルカがいる。
糸井 スコップ団って、
規則があるわけでもないし、
もともとの知り合いもいるだろうけど
そうじゃない人たちもたくさんいるわけです。
そんなむちゃくちゃさなのに、意外と、
ひとつのグループに見えるのが
すごいですよね。
そうですね。
自分も、はじめての経験ですから
何もわからなかったんですが。
糸井 大勢を束ねようなんていうつもりは
別になかったでしょう?
なかったです。
糸井 もっと、フリーな‥‥
そうです、そうです。
糸井 ほんとうは
「俺、勝手にやりたいから」
という人なのに、
それができちゃうというのは
おもしろいですね。
スコップ団も最初は5、6人でした。
あのころは、よく知ってる人たちばかりで
居心地はよかったけど、つらかったです。

家の片づけをしてほしいと言われて、
気仙沼まで3時間かけて行きました。
全部燃えてて、くすぶってて。
「車がありますけど、まだそのあたりは
 見てないから、気をつけてください」
と言われました。
気をつけてくださいというのは、
「見るなよ」ということです、
まだ人がいるから。
精神的にはほんとうにぎりぎりです。
糸井 参加人数が増えて、らくになった?
いや‥‥人が多くなると、
だんだんピリピリしてきて。
糸井 うん。
人が多いと、情報が伝わらないので、
「捨てんなよ」と言ったものを捨てたり
「騒ぐんじゃねぇぞ」っつったのが騒いだり、
だらだらしたり。
家の人がお子さんを亡くして
落ち込んでるところで
げらげらげらげら笑ってんじゃねぇ、
それで俺に殴られたりする人もいました。

家の人は殴りたいのを
がまんしているんだよ、と。

家の人は来てもらったら
「ありがとう」しか言えない。
ボランティアの人たちが来てムカついても、
ありがとう、しか言っちゃだめなんです。
糸井 うん‥‥そうでしょうね。
「それをお前ら、
 わかってねぇだろう、帰れ!」
そういう時期もありました。
いまだにその気持ちはあるんですが、
逆に、最近は、家の人のほうが
我々を上まわる明るさで。
糸井 ああ。
はい。だから、いまはたのしいです。
糸井 それは気持ちがらくになるね。
平さんがイルカを助けたのも、
そうとう最初の頃でしょう?
はい。震災の1週間後くらいでしょうか。
そのときは犬の保護をしてたんですが、
田んぼにイルカがいると聞きまして。
イルカっつったら、ショーをするような、
バンドウイルカみたいなのしか
僕らは知らないわけです。
糸井 はい、はい。
「助けるっつっても、
 持ってかれんじゃないか、腕?」
「がぶー、っつってね」
「食わないだろうけども」
「無理でしょー」
糸井 (笑)
そのときは車がぜんぜん走ってなかったんで、
イルカがいる場所まで
30分かからずに行きました。
高速道路上でUターンできるほど、
車はありませんでした。
自衛隊と緊急車両だけ。
それでも僕らは
「歌手のイルカだったらどうする?」
「蘇我入鹿かもしらん」
糸井 しょうもないことを言いながら(笑)。
「蘇我入鹿だったら」
「それは暗殺しかねぇよな」
そんなことでも言ってないと、
まわりの景色がほんとうにヤバいので。
糸井 うん。
だけど、イルカはなんとかなる、と
思ってたんだね。
はい。
糸井 それは、よく考えてやったこと?
いつも、結果については
すごく考えます。
糸井 平さんはビジョンを持ってますよね。
まわりの人からしたら、笑っちゃうような
ビジョンかもしれないけど、
いつも必ず持っている。
そして、それに合わせて動いています。
ただ、実現するための方法は
よくわかってないかもしれない。
はい。過程では
みんなに迷惑をかけています(笑)。
糸井 でも、失敗しないから、そこには
何かがあるんだと思います。
「最悪これかな?」
ということを先に考えてるんじゃないでしょうか。
それは、僕もそうなので。
そうです、そうです。
「最悪」はわかってますよ。
糸井 わかってますよね。
僕は「根性の人」じゃないんだけど、
そこはよくわかります。

「できるよ」と言わないと、できないんですよ。
やめてもいいと思いながらやったことは
やっぱり、僕にはないです。
うん、それはないですね。
そして、言った以上は、やっぱりやる。
糸井 コースを変えることは
いくらでもあると思います。
まっすぐ行ってトンネル入って、
トンネルだめだと思ったら迂回もする。
はい。
糸井 だけど、向こう側に行くといったら
行ってみないと次がありませんから。
そうです。
行き方は、そのときに考えればいいと思ってます。
 (つづきます)

対談場所 協力:エフエム仙台
2012-02-14-TUE
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