糸井 |
スコップ団って、
規則があるわけでもないし、
もともとの知り合いもいるだろうけど
そうじゃない人たちもたくさんいるわけです。
そんなむちゃくちゃさなのに、意外と、
ひとつのグループに見えるのが
すごいですよね。
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平 |
そうですね。
自分も、はじめての経験ですから
何もわからなかったんですが。
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糸井 |
大勢を束ねようなんていうつもりは
別になかったでしょう?
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平 |
なかったです。
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糸井 |
もっと、フリーな‥‥
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平 |
そうです、そうです。
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糸井 |
ほんとうは
「俺、勝手にやりたいから」
という人なのに、
それができちゃうというのは
おもしろいですね。
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平 |
スコップ団も最初は5、6人でした。
あのころは、よく知ってる人たちばかりで
居心地はよかったけど、つらかったです。
家の片づけをしてほしいと言われて、
気仙沼まで3時間かけて行きました。
全部燃えてて、くすぶってて。
「車がありますけど、まだそのあたりは
見てないから、気をつけてください」
と言われました。
気をつけてくださいというのは、
「見るなよ」ということです、
まだ人がいるから。
精神的にはほんとうにぎりぎりです。
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糸井 |
参加人数が増えて、らくになった?
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平 |
いや‥‥人が多くなると、
だんだんピリピリしてきて。
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糸井 |
うん。
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平 |
人が多いと、情報が伝わらないので、
「捨てんなよ」と言ったものを捨てたり
「騒ぐんじゃねぇぞ」っつったのが騒いだり、
だらだらしたり。
家の人がお子さんを亡くして
落ち込んでるところで
げらげらげらげら笑ってんじゃねぇ、
それで俺に殴られたりする人もいました。
家の人は殴りたいのを
がまんしているんだよ、と。
家の人は来てもらったら
「ありがとう」しか言えない。
ボランティアの人たちが来てムカついても、
ありがとう、しか言っちゃだめなんです。
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糸井 |
うん‥‥そうでしょうね。
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平 |
「それをお前ら、
わかってねぇだろう、帰れ!」
そういう時期もありました。
いまだにその気持ちはあるんですが、
逆に、最近は、家の人のほうが
我々を上まわる明るさで。
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糸井 |
ああ。
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平 |
はい。だから、いまはたのしいです。
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糸井 |
それは気持ちがらくになるね。
平さんがイルカを助けたのも、
そうとう最初の頃でしょう?
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平 |
はい。震災の1週間後くらいでしょうか。
そのときは犬の保護をしてたんですが、
田んぼにイルカがいると聞きまして。
イルカっつったら、ショーをするような、
バンドウイルカみたいなのしか
僕らは知らないわけです。
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糸井 |
はい、はい。
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平 |
「助けるっつっても、
持ってかれんじゃないか、腕?」
「がぶー、っつってね」
「食わないだろうけども」
「無理でしょー」
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糸井 |
(笑)
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平 |
そのときは車がぜんぜん走ってなかったんで、
イルカがいる場所まで
30分かからずに行きました。
高速道路上でUターンできるほど、
車はありませんでした。
自衛隊と緊急車両だけ。
それでも僕らは
「歌手のイルカだったらどうする?」
「蘇我入鹿かもしらん」
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糸井 |
しょうもないことを言いながら(笑)。
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平 |
「蘇我入鹿だったら」
「それは暗殺しかねぇよな」
そんなことでも言ってないと、
まわりの景色がほんとうにヤバいので。
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糸井 |
うん。
だけど、イルカはなんとかなる、と
思ってたんだね。
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平 |
はい。
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糸井 |
それは、よく考えてやったこと?
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平 |
いつも、結果については
すごく考えます。
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糸井 |
平さんはビジョンを持ってますよね。
まわりの人からしたら、笑っちゃうような
ビジョンかもしれないけど、
いつも必ず持っている。
そして、それに合わせて動いています。
ただ、実現するための方法は
よくわかってないかもしれない。
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平 |
はい。過程では
みんなに迷惑をかけています(笑)。
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糸井 |
でも、失敗しないから、そこには
何かがあるんだと思います。
「最悪これかな?」
ということを先に考えてるんじゃないでしょうか。
それは、僕もそうなので。
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平 |
そうです、そうです。
「最悪」はわかってますよ。
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糸井 |
わかってますよね。
僕は「根性の人」じゃないんだけど、
そこはよくわかります。
「できるよ」と言わないと、できないんですよ。
やめてもいいと思いながらやったことは
やっぱり、僕にはないです。
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平 |
うん、それはないですね。
そして、言った以上は、やっぱりやる。
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糸井 |
コースを変えることは
いくらでもあると思います。
まっすぐ行ってトンネル入って、
トンネルだめだと思ったら迂回もする。
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平 |
はい。
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糸井 |
だけど、向こう側に行くといったら
行ってみないと次がありませんから。
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平 |
そうです。
行き方は、そのときに考えればいいと思ってます。 |