8 みんな永ちゃんズ。
糸井
ぼく、今日の増田さんとの対談は、
「もしかしたら、すごく遠いところに
いる人かもしれない」
と思いながらやってきたんです。
増田
そうですよね。
糸井
だけど、それでもやってきたのは、
自分や「ほぼ日」が、
自分たちがいま想像できる範囲の中で
固まっちゃうのがいやだったんです。
「ほぼ日」の読者の人たちが
増田さんの表現をどう受けとるのかは
わからなかったけど、
まずは最初にこのカフェに来て座ったときの、
「おもしろーい」という感じ。
それでぼく、
「やっぱり勇気を出して、この人に会いたい」
と思ったんです。
そしたら‥‥今日もやっぱりおもしろかった。
増田
光栄です。
最初にこの場所が
糸井さんのアンテナに引っかかってくれたの、
ほんとにうれしいです。
糸井
だってぼく、オープンの日を待ってましたもん。
増田
まず、糸井さんの耳に届いたことに
スタッフがびっくりして、大騒ぎでした。
何を見たんでしょう。
ネットニュースとかですか?
糸井
たぶん、ネットニュースでしょうね。
ただ、オープン初日は常連さんが来ると思って、
恥ずかしいから、数日後に来たんですけど。
増田
すごい、わざと外していただいたんだ。
ありがとうございます。
いや、もう誰よりも早かったです。
オープニングにお呼びしたかたがたは
もちろん来てくださいましたけど、
そうではなく来てくださったかたの
第一号でした。
だからみんなで、
「やっぱりアンテナ鋭いんだ」って。
糸井
とんでもないです。
だけどなんだろう、
「これは、これからの世の中に大きく関係するよ」
というものにはやっぱり、
嵐の兆候みたいなのがあるんですよね。
なんだかそれは、
ぼーっとしてると、届くんですよ。
それは永ちゃんもそうだったし、
デビュー直後のSMAPにも通じるようななにかで。
増田
その仲間に入れていただいていいのか、
わからないですけど。
‥‥ぼく、もっと、がんばらなきゃ。
糸井
いや、いまのままでいいと思います。
あと、おまけのように言えば、
きゃりーぱみゅぱみゅのことについて、
ぼくはよく知らないですから。
「そういう子がいて、おもしろいね」
とは思ってたけど、そのくらい。
ぼくは、アイドルがいい感じで活躍してるときには、
「ふつうの子っておもしろいんだよ」
ってことだとも思ってて、
活躍してるアイドルって、
ふつうの子のよさをみんな持ってる。
だから、きゃりーぱみゅぱみゅについても、
化ける、化けないに関わらず、
「たぶんこの人は、ふつうの子のよさを
ぜんぶ持ってるんだろうな」
という感じでいたんです。
増田
うん、うん。
そうですね。
糸井
「ほぼ日」のお客さんはおそらく、
たぶんこの「カワイイモンスターカフェ」に
まったく縁がない人が多いと思うんですけど、
今日の話をきっかけに、増田さんのことを
おもしろがってもらえたらと思います。
増田
今日のお話から、あんがい興味を
持ってもらえそうなところ、ありそうですね。
糸井
うん、どこかあるんじゃないかな。
いまってgoogleの検索と同じで、
「タグ」でつながる時代だと思うんです。
いろんなものにタグが付いてて、
重なったものは、みんな縁がある。
この対談自体、そういう時代のやりかたですよね。
ぼくが増田さんに興味を持って
「いちばん遠そうだけど、来てみました」
から始まってますから。
でも、遠くなかったじゃないですか。
増田
そうですね。
むしろ、大先輩っていう感じでした。
糸井
‥‥この店に来るお客さんって、
いまはどうですか?
増田
いまはまだ、そこまで多くの人には
知られていないと思います。
糸井
それ、この店、
普通は最初に決めるはずの
「お客さんのターゲットは誰?」
みたいなことを、決めてないじゃないですか。
増田
‥‥あ、ばれてる(笑)。
糸井
そりゃ、ばれてますよ(笑)。
というか、ぼくもよくいろんな仕事を
そうやってはじめてきたんです。
「ターゲットはどこですか?」
とか聞かれても、
「ぜんぶだよ。俺がおもしろいと思うものは
ぜんぶおもしろいんだから」
とか冗談のように言いながら。
たぶん、増田さんもそういうやりかたですよね。
増田
そうですね、
とはいえ、それだけじゃ通らないから、
とにかく作ったものを見てもらうように
したりしています。
常に、一所懸命、
苦し紛れのようにいろんなことをやっていて。
糸井
そっか‥‥でもたぶん、
みんなそういう経験してるんですよ。
永ちゃんズは。
増田
永ちゃんズは(笑)。
糸井
しょっちゅう
「あ、誰も乗ってこないかも」っていう
危機意識を感じながら、
「おっとっと」と苦し紛れでやったことが、
おもしろい次の展開につながっていったりする。
永ちゃんだって、
そういう苦し紛れも通り抜けて、
いろんなことをしてきているから、いまがある。
「このままじゃ古くなる」と危険を感じたら、
あらためて若いバンドを組んで、
全国の小さな会場をまわったりとか。
アメリカに行く前だって
「ほんとにだめかも」ってくらいまで
真剣に考えてますから。
真剣に向かっていって、なんとかする。
それはね、みんな永ちゃんズなの。やっぱり。
増田
今日、ぼくは糸井さんが
もともと予想してた感じでは
なかったです。
糸井
逆だったんじゃない? 
ぼくが、計算や予測がすごく得意で、
「ああしてこうしてこうすれば、
こうなんじゃない?」
みたいな人だと思ってたでしょう。
増田
もしかしたらそうなのかな、と思ってました。
だけど、そうじゃなかった。
じつは「ハート系」というか。
意外と近いところにいらっしゃるんだなって。
糸井
さんまさんからも言われたんです。
「糸井さん、そんなにいつも考えてばっかりで、
苦しくないですか?」って。
でも、もちろん考えてるときもけっこうあるけど、
それだけじゃない。
ハートもすごくだいじ。
だけどそんなに突っ張りじゃないのは、
突っ張ると人に迷惑かけるし、
周りの子や、うちの社員が泣くから。
増田
(笑)
糸井
じゃあ、またぜひ会いましょう。
増田
はい。ありがとうございました。
楽しかったです。
糸井
ぼくもです。ありがとうございました。
(増田セバスチャンさんとの対談は、これでおしまいです。
また「TOBICHI」での展示は
2016年1月23日より開催する予定です。
くわしくはまた「ほぼ日」上でお知らせします。
どうぞ、おたのしみに。)

2015-12-30-WED