長野県につづき長崎県を引きあて、
みうらさんは各県について語りはじめました。
スタートしたばかりですが、
すでに「長」がつく県は
制覇したことになります。
つまり、もう「長」は出てこない、と
気を大きくしながら、
さて、今日は3県めです。
新潟県 一獲千金を夢見ちゃだめだ。
ほぼ日
さあ、3県目です。
県くじを引いていただけますでしょうか。
みうら
はい。
このくじ引きには、意味があるのかな?
ほぼ日
あります、あります。
みうら
「いきなり」がいいわけですね。
あ、新潟県。新潟ねぇ。
はぁぁああ、ちょっと待ってよ。
ほぼ日
はい。
みうら
新潟県を語るうえで
もっとも大切なことというのは、
佐渡島(さどがしま)に金(きん)が
出ていたという話です。
ほぼ日
みうら
ええ、まず金の話から
はじめないとだめですね。
でもいまはあんまり出ないですよ?
ほぼ日
金が。新潟県で。
みうら
佐渡島には、砂金採りができる
資料館のようなところがあります。
そこの砂金採りコーナーで
ぼくは1回やってみたんですが、
1時間以上やって
鼻クソのちょっと大きいやつ
みたいなの
が出た。
ほぼ日
‥‥。
みうら
それで金持ちになれるとは
とうてい思えませんでした。
その鼻クソの金では、ね?
ほぼ日
はあ。
みうら
ですから、みんなが考えるほど、
そんなには、いまは出てない、
ということだけは
ここで言っておこうと思います。
佐渡島に行っても、
一攫千金は無理です。

ゴールドラッシュ! とか言って
金を掘ってひと儲けしようとしてる人、
若い人のあいだには、いまでもいるんでしょ?
ほぼ日
そうなんですか?
みうら 金は相場がそんなに変わらないからさ。
だけども、佐渡島の砂金採りではちょっと
何年かかるかわからないから、
一攫千金は狙わないほうがいいです。
ほぼ日 ははは。
みうら あとはね、「さど」って聞くと、ふつうは
SMの「サド」か、と思うでしょうけど、
あそこの島はロボット文化がすごいんです。
金山跡にある、掘ってる人たちのロボットが
能のような動きをするんですよ。
ほぼ日 そういう展示スペースなんですか?
みうら はい、金山の穴の中にマネキンが
住んでいるんです。
こういうことですね。


ほぼ日 これは‥‥紙ぶくろですか。
みうら これは新潟県ではなく
大分県のもので、
鯛生(たいお)金山というところの紙ぶくろです。
ここに刷られている写真、
これがロボット文化って言われてるやつです。
このマネキンはおそらく各金山のオリジナルで
それ用に作ってるんだと思うんですが、
ぼくはこれまでいろいろな鉱山や鍾乳洞などに
行ってきましたので、
マネキンとふれあう機会が多いんですよ。
そんなとき、よく見ると、
穴の中にいるマネキンには「なにじん?」と
疑問を抱いてしまうような人たちが
ひそんでいることがあるんですよ。
昔はたぶん、渋谷の西武あたりで、
活躍されてた外国人の方、
ヤングの服を着て、
カーッと口を大きく開けて笑っているような方、
いらっしゃるじゃないですか。
あの、笑ってる方が、流れ流れて巡業で、
新潟県とかに来られて、鉱山跡で、
掘っておられる場合があるんですよ。
ほぼ日 はははは。
みうら そんな彼らは、国籍が
メルティングポットの状態
なっています。
まあ、その中でも特に佐渡島のロボットは、
よくできているんです。
ほぼ日 なるほど。
みうら

佐渡島の金山跡では、
「おかぁー、帰りてーよー」
という言葉が、洞内から響きます。
マネキンの彼らも、長いこと、
旅をしてるんでしょう。
そんな「おかぁー、帰りてーよー」を聞きながら
金山に入っていく寂寥感、これを
たっぷりと受けてもらうのがいいと思います。
あとは、佐渡島で有名なのは、たらい舟ですね。



ほぼ日 そうですね。
みうら さらに佐渡島では
「つぶろさし祭り」というのがあります。
股から出したバットのようなものを
振り踊る祭りです。
これはたぶん、ジェンキンスさんも
びっくりされたと、ぼくは踏んでます。
あ、本島の方に話を向けましょうか?
ほぼ日 お願いします。
みうら うちのオカンが新潟出身であるということが、
意外と知られていない。
ほぼ日 大事なところですね。
みうら 大事なところですよ。
ほかにも、新潟県の思い出は尽きないです。
田中角栄記念館のシアタールームでは
生前の田中角栄さんの元気っぷりが
映し出されているんですが、
ぼくは、その45分くらいあるビデオ、
だいっっぶ、見ましたよ。
ほぼ日 いろいろとたいへんですね。
みうら 田中角栄さんというと、
「まぁ、このー」
というのが、有名でしょ?
そのビデオ、「1(いち)まぁ、このー」も、
出ないんですよ。
このように、「まぁ、このー」が
意外と言われていないということも、
発見することができます。
「よっしゃ、よっしゃ」とかも
そのビデオにはいっさい出ないんですよ?
ほぼ日 ははは。
みうら これは、新潟県で得た意外な発見でした。
いまの世の中、モノマネと現実が
ごっちゃになってるんじゃないでしょうか。
真実を見つめろ、という意味でも
角栄記念館は重要な拠点だと
思います。
ほぼ日 なるほど。ありがとうございます。
ここで、読者のみなさんから届いた
お国自慢をご紹介してよろしいでしょうか。
みうら おお、いいですね。
ほぼ日 NaMaさんからのメールです。
さきほどの「つぶろさし祭り」と
同じようなコンセプトで、もうひとつ、
「ほだれ祭り」というものが
新潟県にはあるようです。
嫁いできたお嫁さんがご神体にまたがり
男衆が担いで、村内を練り歩く‥‥。
みうら ああ、はいはい、わかります。
子孫繁栄、五穀豊穣ですよね。
ほぼ日 このあたりは、全般的にこういったお祭りが
盛んなのでしょうか。
みうら 農業の盛んな場所では、必ずと言っていいほど
五穀豊穣の祭りは存在するわけですが、
これはやはり、
別の土地から嫁いでこられた方にむけての
サプライズフェスティバルということでしょうね。
ほぼ日 はあ。
みうら 現地の人びとは、
幼稚園や小学校の時分から毎年見ていますから、
はじめは「おや?」と思っても
3年めには「おや‥‥おや?」と
麻痺してくるんですよ。
目の前で起こっているおかしなことが
自然の風景に溶け込んでるような気になって
たいしたことないんじゃないか
と思うようになります。
新潟県は、他県から来る人のサプライズが
ふんだんにあるところです。
ほぼ日 サプライズパーティーは、
欧米でも盛んですよね。
もうひとつ、「ほぼ日」に届いたお国自慢を
ご紹介します。
読者の紫雲さんです。
「新潟県では、小学校の授業や
 祖父母の手伝いで、通過儀礼のごとく
 田植えを経験します」
小学校の授業で田植えをするというのは、
重要なステップかと思います。
みうら 佐賀県の干潟では、
ガタリンピックってのがあります。
泥んこの干潟で自転車に乗ったり、
めちゃくちゃになるわけです。
宮崎県でも、水田プロレスっていうのが、
けっこう盛んでねぇ。
ほぼ日 はい。
みうら 土を体内に入れていき、
その土地の土着になっていく、

ということは、つまり儀式ですからね。
最近はあんまり
土って飲まなくなったでしょ?
ほぼ日 飲‥‥?
みうら 昔はよく口の中に
泥とか土が入ったもんですよ。
そういうことを経て、土着になって
その土地に落ち着くことができるんです。
最近は飲料水がしっかりしてきて、
泥とか土が入り込んでいないために、
人が上京したりすることになり、
てんでんばらばらになって、
土着が消えていく、という現象は、ありますね。
土着は「土が着く」って書きますから。
ほぼ日 あ、そうですね‥‥。
昨今薄まりつつある、土を飲むような、
そういうことを大切にされてる新潟県は
すばらしいですね。
みうら そうですね。
「その土地にいれば、土を飲め」
そういう格言は、あると思います。
たぶん、あると思います。
ほぼ日 ありがとうございました。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は、
下の動画でどうぞおたのしみください。

佐渡島を中心に、
たくさんの思い出がつまった
新潟県の回が終了しました。
一獲千金は狙わないほうがいい、
長い旅の果てに響く寂寥感、
真実を見つめろ、
その土地にいれば、土を飲め。
何と教訓の多い県だったことでしょう。
来週日曜、次の県に進みます。
「うちの県、まだ終わってないかも」
というみなさん、
お国自慢のメールをお待ちしています。
2007-08-26-SUN
 
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい新潟県ご当地ソング
「新潟レイニーディ」を
どうぞお聞きください。