秋田県のなまはげ話を終え、
寒さが身にしみてきました。
じつをいうと、この収録時、
みうらさんは風邪気味で
いらっしゃいました。
次はあたたかい県に行きたい気分です。
愛媛県 災難、一団がバスを襲撃。
ほぼ日
じゃ次、お願いします。
みうら
だんだん、ちょっと、
その、微熱もね。
ほぼ日
大丈夫でしょうか。
みうら

いやいや、これは、
あったまってきました、
ということですね。
大丈夫です。

ほぼ日 しかし、次に青森県が出たら、東北制覇です。
みうら
(県くじを引く。手ざわりで)
これは、四国のほうだと思いますよ。
ほぼ日
お、愛媛県です。
瀬戸内海の交通の要所、
みかんで有名ですね。
みうら

みかんですよね?
思い出はたくさんあります。
「坊ちゃん温泉」ですよね?

ほぼ日 はい、道後温泉です。
みうら

ちょっと待ってくださいね。
ポンジュースですもんね?

ほぼ日 はい。
みうら

思い出は、走馬灯のように
たくさん蘇っているんですが、
そうですね、はい、はい、はい、そうですね、
何を教えて
あげましょうかね。

ほぼ日 大丈夫でしょうか。
みうら

まず、松山の駅前には、
ヘンワボックスがあります。
変わった形の電話ボックスが、
電話ボックスならぬ、ヘンワボックスと
言われていることは
もうご存知ですもんね?

ほぼ日 は、はい、もちろん。
みうら

電話ボックスのドアは
7・3あたりで折れるところがありまして、
そこを折って開けます。
知らない人は指を挟むことがあります。
ご存知でしょうか。

ほぼ日 はい、なんとか。
みうら

ぼくが小学生のときは
電話ボックスは、上半身部分だけが透明で
下はクリーム色のタイプのものが
ありました。
下が見えないもんで、
泊まってもいいじゃないか
って人がいましてね。
昔は、電話ボックスをガッと開けたら
泊まってる人が
いきなりそこにいたもんですよ。

ほぼ日 小学生としてはビックリしますね。
みうら

休憩所だと思って入ってしまう方が
たくさんおられたので、
これはいかんということで、
全面が透明になったんです。
カード式が主流になって久しいので
若い方はご存じないかもしれませんけど、
公衆電話というものは、受話器を取ってから
賽銭を入れるんですよね?

ほぼ日 さいせんですか?!
みうら あれは、お賽銭なんですよ。
日本の各地で、
拝みたいとき、お祈りをしたいときに
いちいち神社を探していては
手間がかかってしょうがないという人のために、
簡易的に入ることができ、
賽銭を入れジャランと受話器を振って
神様と交信する、
電話ボックスとはそういうものです。
ほぼ日 はあ。
みうら

そんな電話ボックスも、
松山駅に行きますと
みかんの皮をむいた感じのボックスになります。
それが松山の象徴である、
みかんのヘンワボックスです。
それは、ヘンワボックス界では
押さえておかなければならないものです。

ほぼ日 なるほど。
みうら

四国というと、当然、
イッツオンリーオヘンローラーの話を
しなきゃいけないとは思います。

ほぼ日 はい、ぜひ、お遍路さんの話を
お願いします。
みうら

ちょっと個人的な話なんですけども、
ぼくはNHKの「四国八十八ヶ所」という
テレビ番組のシリーズで
愛媛県のお寺を回ったことがございます。
これからお遍路に行かれる、
ぼくのような形態を取っている方々に
注意事項を語って終わりにしたいと思うんです、
今回の法話は。

ほぼ日 法話ですか。
みうら

その「四国八十八ヶ所」というNHKの番組は
タレントさんなどがひとりずつ
八十八ヶ所のうちの四ヶ寺を回って、
最終的に番組がすべてのお寺を回る、
という構成になっていました。
しかしぼくは、自分の前に誰が寺を回り、
後に誰が回るのかも知らないまま、
四国での撮影に挑みました。

ほぼ日 はい。そうそうたるメンバーが
リレー方式で回られたようですね。
みうら

お寺を巡り、拝んだり、撮影をしました。
そうしたところ、昼休みになりました。

ほぼ日 はあ。
みうら ロケバスに戻り、休憩をしていたところ、
一般のお遍路さんや、観光客のおばさんたちが
たくさん寄ってきて
ロケバスのドアをガーンガーンと叩く、
旭山動物園のような状態
なりまして。
ほぼ日 オリを叩くように、ですか。
みうら ええ、パニック状態になりました。
ガラス窓をドンドンドンドン叩くので、
「なにかな?」と思ったら、
おばさんたちは色紙を手に持って
私のほうに向かってドンドンされていました。
「あ、私のような者でよろしいんでしょうか」
と、弁当を食べていた手を休め、
窓を開けたところ、
「喜多郎さんやな」
という声が聞こえました。
「喜多郎さん」「喜多郎さん」とみなさんが
おっしゃっていて、
なにか絶大な人気を誇っているのかな、と
思いました。
あとでスタッフの方に聞いたところ、
その番組で、私の前にお寺を巡っていたのは
シンセサイザープレイヤーの
喜多郎さんでした。
ほぼ日 なるほど。
みうら シティボーイズのきたろうさんでもなく、
ゲゲゲでもなく、
シンセのほうの喜多郎さんです。
ほぼ日 はい、わかります、わかります。
みうら

ここで私が申し上げたいのは、
八十八ヶ所を巡るロン毛の方は、わりと、
おばさんたちに
喜多郎さんと間違えられる場合が多いので、
髪の毛をくくるなりして
「違うぞ」ということを示されたほうが
誤解が生まれず
時間の無駄がないということです。

ほぼ日 気をつけたいです。
みうら じつは、その3年ほど前にも、
イタリアのレコードフェスティバルという催しに
行ったとき、
ロンドンからレコードを売りにきた
若い兄ちゃんから
背中をポンポンと叩かれ
「ユーアー喜多郎」と言われました。
あまりにも早口の英語だったので、
よくわからんのに
「イエス」と言ってしまいました。
ほぼ日 ああ‥‥。
みうら そうしたところ、
レコードを売りに来た各国の人たちが
段ボールを切った紙を持ち、
「サインプリーズ」と来てしまいまして。
ほぼ日 たいへんなことに。
みうら それで、なりきればよかったんですが、
喜多郎さんの「喜(き)」の字が
思い浮かばなくて、
あまりにも考えてるようでは
偽物だと思われるんじゃないかと焦って、
カタカナでキタローと書き、
キダ・タローみたいなサインが
翌日のレコードフェスティバルの、
いろいろなところにかけてある、
ということを巻き起こしてしまいました。
世界、または
そういうプログレッシブなものが
流行ってるところと、お遍路は、
長髪の方は気をつけて行かれるか、
もしくはさらーっと「喜多郎」という、
あの難しい字を書けるようにしておいたほうが
無難ではないでしょうかという、
ひとつの提案です。
ほぼ日 喜多郎さんの、よくお見かけする公開写真は、
わりと横顔ふうですから、
ちょっとわかりづらいかもしれませんね。
みうら そうですね。
公開されている写真が
坂本龍馬のように2枚ぐらいという
そのイメージが、おばさんたちの
「ロン毛であれば喜多郎さんである」という
イメージを作ってしまうんでしょう。
若い人はそんなことはないかもしれませんが、
もう、どちらかというと、
考えを改めない方にはね、
ほぼ日 はははは。
みうら とても誤解が生じます。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

過去に見た、写真はずっと同じで、
年も取りません。
このコーナーで何度も出てきたことですが、
「旅は他人の気ままに」に従うことが
基礎中の基礎です。
髪の長いみなさんは
ご苦労も多いことだと思いますが、
ここは相手に従って
歩を進めてまいりましょう。
来週は、愛媛からやや近い県に移ります。

2007-11-11-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい愛媛県ご当地ソング
「野球坊ちゃん」を
どうぞお聞きください。