ファンタジーでいっぱいの
青森県を経て、東北地方を制覇。
毎週日曜の語りの旅も、
気づけばもうすぐ折り返し地点です。
次にみうらさんが向かったのは
神々のいる、あの県でした。
島根県 源泉との相次ぐ出会い。
みうら 島根県という場所は、
日本のルーツといえばルーツです。
まずは何といっても
出雲大社がありますもんね。
島根県は神様ばかりがおられる県ですから、
当然、神様大会が開かれます。
ほぼ日 ?? 神様大会ですか。
みうら 毎年、お正月に
島根県の日御碕(ひのみさき)のところに
やおよろずの神が来迎されるんです。
「やおよろず」は「八百万」と書きますが、
ま、日本の人口よりは、
少ないですけども‥‥少ないですよね?
ほぼ日 あ、はい、少ないです。
みうら 昔は多かったことでしょう。
ほぼ日 人よりも、神の数が。
みうら ええ。昔は、全てのものに
神が宿ると言われたもんです。
そんなものすごいえらい方々が
正月に神様集会をされる場所、
それが島根県です。
集会ということは、当然、
遅刻魔も出るわけですよ。
ほぼ日 神様なのに遅刻魔とは‥‥。
みうら 神様だって「あちゃ」ってこともあるわけです。
その、遅刻した神様というのは、
和歌山県は丹生神社の、
「笑い祭」の神様です。
正月には、やおよろずの
ものすごい方たちが来られるわけですから、
その集会に遅れるなんて、
落ち込まれたに違いありません。
ま、いまの時代だと、人は
安斎さんのように
遅刻をわざとする始末ですけど、
遅刻するということは、本来
大変なことですよ。
ついでのように言いますが、
ぼくは昔から、糸井さんに
「遅刻だけはすんな」って
厳しく教えていただきました。
それでも、してしまう自分がいます。
ほぼ日 そうなんですか。
みうら ぼくは糸井さんに教えてもらったことを、
てっきり「時間ぴったりに着くのがいい」と
思っていたんです。
ところが先日、糸井さんと何かで
対談させていただいたとき、
糸井さんは、約束の30分ぐらい前に
来られていました。
ほぼ日 なるほど。
みうら 「ぴったり来ました!」と、
褒めてもらえると思っていましたが、
違いました。
「ぴったりより、前から来てればいいじゃない」
この歳になるまでそんなことにも
気がつかなかったくらい
「あちゃちゃ〜」な人生なんですよ、ぼくは。
ほぼ日 いやいや。
みうら 丹生神社の神様も、寝坊してしまい、
島根県の神様大会に行けず
とても落ち込んでおられた。
そんなとき、村人たちが
「笑え」と言ったんです。
笑え〜、笑え〜と言って神様を盛り上げたことが
のちのち、お祭りになったといいます。
ほぼ日 笑うしかない、と。
みうら しょうがなかったんでしょう、村人たちも。
それは、そうとうな
落ち込みようだったと思います。
神様大会は、いまで言うサミットでしょう?
サミットに、遅刻してるわけですよ。
ほぼ日 はあ。
みうら 遅刻についてはみんな
「ごめんごめん」とか
「携帯があるから便利になったね」とか言うけど、
遅刻は重罪であるということを
島根県は教えてくれます。
ほぼ日 はい、よくわかりました。
みうら それから、みんながいちばん興味のある、
「島根県といえば、なにかな?」
という部分について、お話しましょうか。
島根県は、どじょうすくいの発祥地なんですよ。
ほぼ日 そうなんですか。
みうら あ、なんだかドッときてないようですね。
ほぼ日 いや、あのはい、
どじょうすくい。
みうら どじょうすくいって、
みんな、知ってるでしょう?
しかし、どこで見たんですか、
どじょうすくいを。

なぜあんなにポピュラーになったと思います?
それはつまり、宴会ですよね?
ほぼ日 おっしゃるとおり、宴会です。
みうら 宴会で酔った人が
5円玉を鼻につけて踊る、
あれがどういうことなのか、ちょっと
説明をしたいと思います。
島根県には、どじょうすくいの記念館があり、
どじょうすくいを
伝授していただくことができます。
師範の方に習って、
いいどじょうすくいができたら、
「どじょうすくい1級」的な
賞状がもらえるんですよ。
ほぼ日 どじょうすくい1級のような賞状を。
みうら それは、もらったほうがお得だと思います。
就職を控えておられる方、いるでしょ。
4月から就職するにあたって
たいへんだろうから、申し上げておきましょう。
その記念館でもらう賞状は
いわばどじょうすくいの免許皆伝ですから、
当然、履歴書には書けると思うんです。
履歴書を社長とかも見て、
「君はどじょうすくいの免許を持ってんのか」
ということになります。
そうなると、その人は、
年末の宴会では引く手あまたですよ。
そこで、ピーンと来る社長たちも
いると思います。
ほぼ日 宴会要員として。
みうら 「いまの若いもんなのに、
 どじょうすくいの免許を持ってるなんて!」
「なかなかたいしたやつだな」
そういうことがあると思います。
島根県の、その記念館では、
1万円ほどで、どじょうすくいセットが買えます。
ほぼ日 わりと高額な‥‥
みうら 笠と、鼻につける
輪ゴムつきの寛永通宝風の丸いもの、
あと、魚籠(びく)と、ゴムでできたどじょう。
ほぼ日 はい、はい、はい。
みうら それと、先生の教則ビデオが
セットになっています。
それを見ながら練習します。
ほぼ日 みうらさんは、お買上げになられたわけですね。
みうら セットを買ったのはいいんだけど、
身につけるには照れがありました。
旅館に戻って「ちょっとやってみようか」
「いやだよ」「おまえ着てみろよ」と
友達みんなで押しつけ合いました。
しかし、その後の宴会でいちばん先に酔った人間
──まあ、ぼくだったんですが、
見よう見まねですくってみたら、
「おお!」
「いけてる」
という声があがりました。
それで、全員がなんだか調子に乗っちゃって
「オレに
 やらしてくれよ、
 やらしてくれよ」

って、びくなんかも、もう
みんなで取り合いになって、踊りました。
ああいうものって、血が騒ぐんですよ。
ほぼ日 ああ、そうなんですね。
みうら 実際にどじょうすくいの格好をするのに、
時間がかかりましたが、
勇気を出してやってみると、
血が騒ぐ自分がいることに気がつきました。
最後はゴムでできたどじょうを、
全員でつかみ合いになっちゃって
1匹で団体のどじょうすくい
なっちゃいましたよ。
ほぼ日 ふはははは。
みうら どじょうすくいというのは、それほどまでに、
日本人の心に染みついてる
ダンスなんだ、ということです。
そりゃ、いまはダンスブームだとは聞いています。
レゲエダンスとか、
おしりを振ったりするでしょう。
しかし、それよりも前に、
日本にはあんなにも
おもしろいものがあったんです。
ダンスを目指してる若者は、
たくさんいると思いますけど、
まず免許を取ってからにしてください。
ところで、どじょうすくいをする際に
注意点がひとつあります。
ほぼ日 何でしょう。
みうら 鼻に寛永通宝風の5円玉のようなものを
長いあいだつけて踊っていると、
顔に跡がついてしまい、当分取れません。
ほぼ日 ははは。
みうら 宴会のあとに、旅館内を散策などされる場合、
注意してください。
島根県の旅館業をやってる方なら当然、
「やったな」とわかります。
そこは、気をつけてもらったほうが
いいと思いますわ。
ほぼ日 はい、気をつけます。
みうら 通販もやってますんでね、
ぜひ買ってみてください。
あともうひとつだけ言っておきたいのは、
島根県には、陶器を集めていろんな形をつくる
お祭りがある、ということです。
おちょこを目にしたり
陶器でできたカエルを手にしたりして、
もう、むちゃくちゃなんだけど、
陶器でトランスフォーマーした祭りです。
ほぼ日 一式飾りというお祭りのようですね。
すごそうです。
みうら

すごいですよ。
いろんな陶器を合体させて
F-1の車なんかも、作ってありました。
それはそれはシュールですよ。

ほぼ日 おちょこやお皿のトランスフォーマーなんて、
すごいですね。
みうら ほんとのトランスフォーマーはものすごいんだ。
ガチャガチャ音がするし、割れたりもするし。
そんなことは総指揮のスピルバーグだって、
予想がつきません。
島根県に行かれるときは、
そのトランスフォーマーぶりをぜひ
見ていただきたいです。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

携帯に頼る遅刻魔の人も、
レゲエダンサーの人も、
製作総指揮の人も気づかなかった
いろんなものの源泉が、
島根県ではとっくの昔にありました。
毎回、あらたな発見のあるこのコーナー、
折り返し地点を目前にし、
ちょっとだけお休みをいたします。
(担当の連載スケジュールのカウントミスです、
 すみません)

収録が終わりしだいなるべく早く再開します。
どうぞたのしみにお待ちくださいませ。
2008-01-27-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい島根県ご当地ソング
「恋の安来ブギ」を
どうぞお聞きください。